月別アーカイブ: 2015年11月

癋見

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ヒールをスタートに置いた瞬間、これまでとは違う圧倒的な”何か”を感じた。

フリクションだけでここまで感触が良くなるのだろうか。相変わらず遠い初手だが、止まらないとはもう思えなかった。全てのホールドとシークエンスが密結合しているような、最高に”繋がっている感”が伝わってくる。

突き上げてくるムーブへの欲求を鎮め、やや間を置く。そして、迷いなく放った初手は、乾いた音を立てて止まった。

すかさずフットジャムをねじ込んで左手を送る。右手がややズレたが修正しないままドロップニーからサイドカチへ。そしてヒールフック。あまりに効きが良かったのか、ふくらはぎが軽く攣る。しかし呼吸を整えそのままシークエンスを繋ぐ。リップ直下のカチを気を吐きながら捉え、前回出せなかった一手をリップへ送った。

一瞬シェイクを挟んだあと、冷静にマントルを返し、スラブを小躍りしながら駆け上がった。

 

 

 

四度目の正直

 
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2014年の瑞牆ラストシーズンに偵察して以来、一年に渉って最重要課題であった「べしみ 二段」はシーズン終了間際、拍子抜けするくらいスムースにRPすることができた。

春に一度、秋に二度、着実にムーブの完成度を上げていった結果、最大の鬼門であった初手もほぼ完璧に決まり、11月初旬にリップ直下へ迫る。あいにくヨレ落ちを喫するが完登が近いことを確信する。

しかしその後、三週間に渡って天候と体調が整わず、ナーバスな日々を過ごした。

そして管理棟も営業を終了した11月末、四度目の週末に挑んだ。一段と冷え込みを増した瑞牆は抜けるような青空の下、最高のコンディションにあった。霜柱を踏みしめながらアプローチを上がると、ひとけのない大面岩下は凛として佇んでいた。

最高のコンディションの中で、このレベルの課題を完登できたことは感無量だった。おつきあいいただきました皆様、本当にありがとうございます。

そして限界を突破させてくれた課題と初登者に心から感謝と敬意を示したいと思います。

 

 

二段の壁

 
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首尾よくベシミを完登した後は「消費者 二段」「皇帝 二段」をセッション。どちらもハードな二段だが、「皇帝」のほうが可能性を感じた。二手目のムーブをもう少し洗練させたら振られを耐えられる可能性が高い。

年内は後一回行けるか行けないかだが、二段というグレードは着実に近づいてきている。それは超えられない壁ではなく、十分に楽しめる対象だ。

強くなることが全てではないが、より素晴らしい課題を登るために強くなりたい。そんな思いに対してご褒美を貰ったかのような、そんな日だった。

倶利伽羅竜王

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シャープなランジプロブレム、倶利伽羅岩の「竜王 一級」を登った。

パワー全開と決めつけていたスタートは実はテクニカルで、届くと思えなかったリップは絶妙の距離感と形状を擁していた。まさに、隠れた名課題ってやつだった。

「カラクリ 初段」から「倶利伽羅 初段」、そして「竜王 一級」を経て倶利伽羅岩の三課題はここにコンプリート。気がつけばカラクリの完登から2年が経っていた。

とまあ、さも狙いにいったような書きっぷりですが、実際には本命「ベシミ 二段」に全力で弾かれた上にエンクラな二日目に降って湧いた完登。いやー安定のマントルヘタレでした。

 

耐寒キャンプ

今回の主題は晩秋の瑞牆で鍋キャンプ。

メンバーはスラビスタとイズミとマイファミリー(チョーナンは合宿)。子連れで行くには過酷じゃないかと心配されるが、きりたんぽ鍋であったまればいいよ!と言い切る。

だが、きりたんぽはどこにも売っていなかった。自家製も考えたが、比内地鶏も手に入らないので鶏塩鍋に変更。前日は仕込み祭り。

 

胃痛と失意の敗退

当日はゆっくり現場入り。山腹にガスが漂いなんとなくモイスチャー。山形エリアの童子岩で遊んで大面岩下へ上がる。

到着すると見知った強強クライマーが大挙。潤沢なマットを前に宿願のベシミと相対するが、謎の胃痛が発生。ナベさんの完登をガンバしつつ小一時間ほど横になるが一向に収まらず。痛みに耐えながらトライするが胃液が逆流する。挙句にガスが降りてきてフリクションも下がる一方。まったくいいところなく下山。

 

銘酒・谷川岳

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凹んでもしょうがないので、鍋の準備を進める。炭火で焼き味噌きりたんぽを焼く予定だったが、フランスパンを焼いてチーズと一緒に喰らう。なにも登れてないのに旨えー。

そして、鶏鍋。サミットで仕入れたフツーの国産モモ肉がこれまたプリプリ。鍋もうまいが炭火焼も絶品、先日頂戴した純米大吟醸谷川岳との相性も抜群。

 

 
呑んで喰って、あれよあれよと酒と食材が尽き果て〆はラーメン。予想より暖かく無風だったため、ゆったり焚き火を楽しんでコーヒー飲んで就寝。

 

DAY.2

翌日もどんより。こりゃー今日もフリクションは悪いだろうなーと思って「スーパークーロワール 7Q」をやってみると、スメアがすっぽ抜けそう。イズミ君のクーロワールトライを眺めつつ「夜をまちながら 2Q」をだらだら打つ。

ホールドが痛い上にフリクションも悪く、どーにも高度が稼げないでいると「光合成」に弾かれたスラビスタがサクッと再登。「今日はなんか悪いね」的なことを言っちゃあいるが何ら不安要素のない登りっぷり。負けてらんねえと意地で上部のカチまで到達するがそっからカンテを使ってトップアウト。プスー。

今日は(も)ダメだーと思いながら移動し始めるとINOさん登場。我らの宿願、ベシミを完登しての凱旋である。チキショー羨ましい!とは言え、おめでとうございます。

 

竜王 一級 RP

イズミ君に大黒岩を見せて「え、アレ登るの?おちたら死ねるよ?馬鹿なの?」という定番のリアクションを頂戴して倶利伽藍岩に上がる。

スラビスタが「カラクリ 初段」打つ裏側で「竜王 一級」にトライ。相変わらずスタートが辛い。右手首に悪いなーと思ってるとINOさんが遅れて合流。

「これ、コツものって噂ですよ」
「こういうのなんでもコツで済ますの止めようよ」

とか言ってるとなんだか腰が浮き始める。

「やっぱ壁に入らないとね!」
「なんども言うように人は壁に入れないから」

と定番のやり取りをする頃にはほぼスタートは解決。壁に入ってから上に向かう、二段階右折的なムーブ(謎)が有効なようです。

ところが、そこからリップへのランジもこれまた悪い。フットホールドの向きが悪く、距離は足りているが一向に止まらない。それでも試行錯誤を重ねつつ飛んでいると遂に止まる。この瞬間は二日間でもっとも歓喜にあふれた瞬間だった。

思いもよらず射程圏内に入った上玉をINOさんと共に喜ぶ。するとINO氏、いきなり次のトライで完登。えっと、そんなドSな人でしたっけ?

こうなっては登らないわけにはいかない。気合いを入れていざトライ。スルっとスタートしてビシッとランジを止める、完璧である。あとはマントルを返すだけ、少しヒールがズレたがそのまま返そうと手首を返すと、あら?ヒールが抜けてフォール。先日の阿修羅に続き下手すぎるマントルが露呈。

その後、指皮が熱を持ち始めリップが止まらなくなる。大事なトライをフイにしてしまったことを悔いながら指皮が冷えるのを待った。しかし時間は残り僅か、指皮はまだ熱かったが少しでも冷まそうと上裸になる。更にハイアングルのヒールがまだ馴染んでいないと判断してネクソに履き替える。

そしてスタート。リップで指皮がダレるのを感じたが何とか止めてマントルへ。深くヒールを決めて突入。すると今度は深すぎて最後まで返ってくれない。心が折れそうになるが意地で返して遂に完登。いやー落ちなくてホントによかった。

 

 
というわけで、意外な上玉をゲット出来たのは望外の成果でしたが、ベシミを登れなかったは非常に痛かった。

天候不良で二回連続延期となったのをきっかけにコンディションを崩してしまったのが最大の敗因。ちょっとくらい外岩に行けなくてもフィジカル、メンタル共にキープし続けるスキルを磨こうと、安易に呑みに逃げるなと、そう痛感した二日間でした。

 
え?谷川岳?まだまだあるよ!一升瓶だからね!(呑むとは言ってない

 

コンディショニング 2015 秋

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シーズンも佳境ですね。

秋口はIPAがサイコーに美味かったですが、秋が深まるにつれヴァイツェンが美味くなってきた気がします。とはいえ”Far Yeast First Ascent IPA“をまだ呑んでないので、早急にゲットせねばと焦っております。

つーわけで今日はコンディショニングをメモ。

 

スペック

170cm 60.0±0.5kg

身長はともかく、体重もここ数年変動なし。クライミングのパフォーマンスに関係なく60.0kgを行ったり来たり。食っても食わなくても痩せも太りもしない。そんな感じ。

秋シーズン途中経過(9−10月)は初段 x 3本、5.12a x 4本という結果。表記上は同一グレードだけど、自分的難易度は異なるので以下に所感。

初段

  • とても易しい x1
  • 易しいけど怖い x1
  • やや易しい x1

5.12a

  • やや易しいけど解析難x1
  • 易しいx1
  • ほとんどボルダーx1
  • やや難しいx1

蛇足ですがリーチがかかっている「難しめ初段」及び「スタンダードな二段」があります。

 

普段の食事

腹八分目、時々ガチ喰い。昼は野菜がっつり。間食はしない。二日に一回くらいビール。350mlx2本くらい。揚げ物が重くなった(トシってやつですかね)。

 

岩場の食事

チョコとかクッキーで間食。血糖値をキープして集中力持続。コンビニのレトルト惣菜が旨い。ラーメンとかは眠くなるからあんまりやらない。おにぎりよりサンドイッチ派(潰さずに運ぶのが核心)

 

睡眠

ムーブのことやら運転のことを考え出すと眠れないタイプだったが、最近は安眠傾向。すぐに眠れる呼吸法的(テキトーにググればいいと思うよ)なやつを試してから変わった。

しかし、この手の睡眠導入ハックは普段から行わないと効果がないと思う。外岩に行かない日も、ルーチンとして呼吸法を用いることで睡眠のスイッチを入れやすくなったんじゃないかな。

従って呼吸法にかぎらず、ルーチンとして繰り返せば効果を得られ可能性は高い。それこそ「羊を数える」でも十分かもね。

実は今季最大の収穫と思っている。

 

怪我

GW明けから左足ハムストリング周辺が固まっていたのは秋頃に解消。長かった。その後、特に問題はなし。

 

ジムトレ

ジムは週1回。

スタティックストレッチ、アクティブストレッチ、強度の低い課題で大きな動きを意識してクライミング。という順番でアップ。

150度で得意ムーブな課題を強度上げて数本。遠い系より、悪い体勢、足残し、固めるムーブが中心。

キャンパはダブルダイノ、3本指で遠いラダー。最後に4−5分の長モノ。リードはあんまりやってない。1−2日インターバルで体幹トレ。

 

岩場

ジムと同じルーチンでストレッチ。岩でも木でもいいからぶら下がって大きな動きを意識してアップ。

夏の間は外岩から遠ざかっていたので比較的簡単な課題から自信を付けていこうと計画。計画通り調子は上がってきたが、お買い得ハンターっぽくなってきたので襟を正す。

 

年末に向けて

年内最大の目標は、リーチのかかっている二段、および初段を完登すること。余力があれば5.12bを登ってグレード更新を狙いにいこうっと。

以上、634くんからのリクエストに答えてコンディショニングメモでした。後は分かるな?

金のわらじを履いてでも…

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今期、最も登りたかった一本をついに登った。

2年前にカサメリを訪れて以来、常に目標でありつづけた「金のわらじ 5.12a」は、魅力的なラインが故か、安易に取り付いてはならない気がしていた。

本年2月、初の5.12aとなる「生と死の分岐点」を皮切りに、カサメリで一本、有笠で一本、北川で一本づつ5.12aを登った。そして9月中頃、長期決戦を覚悟した上でトライを開始した。

意外にも1,2tryで核心突破、トップアウトと十分な可能性を得るが、しかし、そう簡単に登らせてくれる代物ではなかった。

10月に入り、ボルダーとの両立に苦心しながらカサメリを二度訪れた。非常に惜しいトライもあったが、いずれも自分と岩のコンディションが整わなかった。

 

ベストコンディション

その日、「このホールド悪いねー」と言いつつレストするのが定番プレイのSATO6兄貴に便乗してカサメリへ向かった。シーズンも終盤にして最高のコンディションを求めて中央道を快走する、兄貴の愛車はMT車。(運転できなくてサーセン)

不動沢への林道はスーパードライ、いつものヌカルミは完全に干上がり、砂塵すら舞う。姉御岩は落葉の林の中、11月の陽光を浴びてほのかに暖かかった。

早々にアップでドローセット。フリクションは予想どおり申し分ない。だが、足が冷たくてうまく乗れない。1tryで完登するつもりが、前回同様の核心越えてのフォール。1tenでトップアウト。

堪えきれず鳴きの1tryを嘆願。「そこで止めるとか言いだしたらブチ切れるよ?」と兄貴の快諾を得て核心ムーブを再チェック。

核心ムーブを丹念にチェックしていくと、ロープの流れが重要であることが判明。ロープとの関係上、ホールドの持ち直しを行っていた部分を省略するムーブを作る。さらに核心に入る際の足位置も微調整を入れる。若干だが負荷を軽減させる。

そして、姉御岩と対照的に凍てつくコロッセオで「神の手」のビレイ。レストを入れながらムーブを反芻した。

 
kaminote[神の手をトライするアニキ]

 

金のわらじ 5.12a RP

午後過ぎ、酷寒のコロッセオから南国の姉御岩へ移動。2try目を出す。

気温上昇のおかげで安定して足を置いていく。ハング下で軽くレスト、リズムを切ることなくトラバースを開始。クロスムーブからマッチに修正した手順もスムース。

核心手前のクリップを冷静にこなし、核心突入。前トライで見つけた足位置からハイステップ、ロープを躱してアンダーマッチ。そして甘いカンテを中継して遠いカチを取った。

最もハードな部分は抜けたが、まだ核心は終わらない。だが、ロープ干渉を回避したことが功を奏し、スムーズな足を運びでハング上部へ。呼吸に意識しながらホールドを繋ぎ、クリップ。

パンプが迫ってくるが無心でヒール、間髪入れず上部ホールドを捉える。そしてお気に入りの水平フラッギングからマッチ、乗り込み、一気に核心を抜ける。荒い息を整えながらレストポイントに到達した。

その後、兄貴のコールに後押しされながら、遂にトップアウト。2年越しの目標を達成することができた。

 

 
「結局、マメな男がもてるんだよ(意訳)」とSATO6兄貴が言ったように、突破したパートを強引に繋ぐのではなく、解決済みのムーブこそ、さらに研究を重ねる愚直な姿勢が完登へ導くのだと、改めて胸に刻むこととなった。

年上の女房は上玉であった。

 
IMG_6575[完登後のアクティブストレッチ(*注*妻子持ち)photo by satoshi hirayama]