今期、最も登りたかった一本をついに登った。
2年前にカサメリを訪れて以来、常に目標でありつづけた「金のわらじ 5.12a」は、魅力的なラインが故か、安易に取り付いてはならない気がしていた。
本年2月、初の5.12aとなる「生と死の分岐点」を皮切りに、カサメリで一本、有笠で一本、北川で一本づつ5.12aを登った。そして9月中頃、長期決戦を覚悟した上でトライを開始した。
意外にも1,2tryで核心突破、トップアウトと十分な可能性を得るが、しかし、そう簡単に登らせてくれる代物ではなかった。
10月に入り、ボルダーとの両立に苦心しながらカサメリを二度訪れた。非常に惜しいトライもあったが、いずれも自分と岩のコンディションが整わなかった。
ベストコンディション
その日、「このホールド悪いねー」と言いつつレストするのが定番プレイのSATO6兄貴に便乗してカサメリへ向かった。シーズンも終盤にして最高のコンディションを求めて中央道を快走する、兄貴の愛車はMT車。(運転できなくてサーセン)
不動沢への林道はスーパードライ、いつものヌカルミは完全に干上がり、砂塵すら舞う。姉御岩は落葉の林の中、11月の陽光を浴びてほのかに暖かかった。
早々にアップでドローセット。フリクションは予想どおり申し分ない。だが、足が冷たくてうまく乗れない。1tryで完登するつもりが、前回同様の核心越えてのフォール。1tenでトップアウト。
堪えきれず鳴きの1tryを嘆願。「そこで止めるとか言いだしたらブチ切れるよ?」と兄貴の快諾を得て核心ムーブを再チェック。
核心ムーブを丹念にチェックしていくと、ロープの流れが重要であることが判明。ロープとの関係上、ホールドの持ち直しを行っていた部分を省略するムーブを作る。さらに核心に入る際の足位置も微調整を入れる。若干だが負荷を軽減させる。
そして、姉御岩と対照的に凍てつくコロッセオで「神の手」のビレイ。レストを入れながらムーブを反芻した。
金のわらじ 5.12a RP
午後過ぎ、酷寒のコロッセオから南国の姉御岩へ移動。2try目を出す。
気温上昇のおかげで安定して足を置いていく。ハング下で軽くレスト、リズムを切ることなくトラバースを開始。クロスムーブからマッチに修正した手順もスムース。
核心手前のクリップを冷静にこなし、核心突入。前トライで見つけた足位置からハイステップ、ロープを躱してアンダーマッチ。そして甘いカンテを中継して遠いカチを取った。
最もハードな部分は抜けたが、まだ核心は終わらない。だが、ロープ干渉を回避したことが功を奏し、スムーズな足を運びでハング上部へ。呼吸に意識しながらホールドを繋ぎ、クリップ。
パンプが迫ってくるが無心でヒール、間髪入れず上部ホールドを捉える。そしてお気に入りの水平フラッギングからマッチ、乗り込み、一気に核心を抜ける。荒い息を整えながらレストポイントに到達した。
その後、兄貴のコールに後押しされながら、遂にトップアウト。2年越しの目標を達成することができた。
「結局、マメな男がもてるんだよ(意訳)」とSATO6兄貴が言ったように、突破したパートを強引に繋ぐのではなく、解決済みのムーブこそ、さらに研究を重ねる愚直な姿勢が完登へ導くのだと、改めて胸に刻むこととなった。
年上の女房は上玉であった。
[完登後のアクティブストレッチ(*注*妻子持ち)photo by satoshi hirayama]