月別アーカイブ: 2015年12月

裏同心ルンゼ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[photo by Taro Inomata]

 

超絶快晴の八ヶ岳で、裏同心ルンゼ〜硫黄岳周回ルートを登ってきたよ!

パートナーはクライミングギアの新たな地平を“ブッチギリ”で切り拓く、マイスター・タロー。クラック登攀はないので名器タローカムの出番がないのが残念。

足慣らしには最適の定番ルートで快適なアルパインアイスを堪能しました。

 

シーズンイン

img[冬支度]

 
秋のリード・ボルダーシーズンでは「アイス?そういやそんなアクティビティもあったね」的な態度を示しておりましたが、岩が冷たくなってくるとアイゼンを履きたくなるのが人情というもの。

早速タローくんに連絡して予定を詰める。登攀要素のない雪陵ハイクあたりでお茶を濁すつもりだったが、アルパインアイスを提案されるや秒速で鞍替え。

ちなみに某氏から「今シーズンはアイス消極的とか言ってなかったっけ」と突っ込まれたが、もちろん「そんな昔のことは忘れたよ」と即答しておきました。

 

積雪は少なめ

IMG_3796[大同心が奥にそびえる]

当日朝はこの冬一番の冷え込み。とはいえ雪は少ない。美濃戸ー赤岳山荘までのダートも凍結箇所なし。

赤岳鉱泉までは凍結箇所多数だが夏時間と同程度で鉱泉に到着。荷物をデポして裏同心へ向かう。

 

裏同心ルンゼ

IMG_3804[F1 しっかり氷結している]

F1に着くと既に2-3パーティ。大混雑を予想していたが、それほどではなかった。順番を待って登攀開始、タローくんのリードでスタートする。氷柱はしっかりしているが硬すぎず、アックスは打ち込みやすい。

 

IMG_3805[F2 並んでます]

F2はやや渋滞気味。気長に待ってリード交代。1段目は低いのでノープロテクション。2段目のナメ滝に今季初のスクリューを打ち込む。

3段目も一気に抜けたかったが渋滞。ビレイポイント作ってピッチを切る。

流水のしたたるラインは「濡れてるの、大好きなんで(キリッ」と前置きしてタローくんが水線突破。そういえば「アイスクライミングは沢登りの延長線にある」と誰かが言ってたのを思い出す。

 

IMG_3812[F5直下 視界が開けてくる]

F3−F4は同時登攀でF5直下まで一気に抜ける。F3−F4は小振りだったりナメだったりでよくわからんうちに通過。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[F5 photo by Taro Inomata]

F5でリード交代。スクリュー二本で抜ける。BDとグリベルのスクリューを交互に打ったが、個人的にはBDが刺さりやすくて好きかな。

 

IMG_3816[大同心直下]

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[草付きを直登 photo by Taro Inomata]

F5上部から左岸草付きをダイレクトに大同心基部まで詰める。ここでロープを収納。

 

IMG_3828[雪が少ないので浮き石が厄介]

大同心稜へのトレースは積雪量が少なく浮き石が厄介。アイゼンの摩耗が気になる…

 

大同心ルンゼ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[高度感がいい photo by Taro Inomata]

当初の予定では大同心稜から下降だったが、僕の無言の圧力を感じたか「想定より早いんで、稜線まで抜けましょうか」とタローくん。待ってましたとばかりに大同心ルンゼへ突入。

 

IMG_3842[左手に大同心]

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[FIXロープもある photo by Taro Inomata]

岩場主体のルンゼ内はFIXロープもあり快適に高度を稼ぐ。徐々に風が強まるが日差しが強くて熱い。

 

IMG_3853[大同心のピーク]

IMG_3855[上部を詰める]

大きく視界が開けてくるが、もうひと踏ん張りで稜線へ抜ける。風がますます強まる。

 
IMG_3864[遠くに北アルプス]

IMG_3861[富士山タロー]

稜線上は最高の展望、北アルプスがきれいに見渡せる。富士山も安定のクオリティ。ところでサムズアップをバッチリ決めているタローくんだが、彼の親指がガムテープで補修されているのは内緒だ。

 

硫黄岳

IMG_3868[無心で登る]

IMG_3869[横岳-赤岳-阿弥陀岳]

黙々と登り返して硫黄岳へ上がり振り向くと、横岳-赤岳-阿弥陀岳。爆風吹き荒れるイメージの硫黄岳頂上だがこの日は比較的穏やかだった。小休止を入れて長〜い赤岳山荘までの下山へ備えるのであった。

 

Stats

IMG_3875[火口タロー]

というわけでシーズン一発目から会心の山行となりました。久しぶりにアックスを振ったせいか右手が腱鞘炎になってしまったけどすぐに治るでしょう!タローくん、本当にありがとう。

今年はフリーも沢もアルパインも、やりたいクライミングはほぼやり切れた感があります。お世話になった皆様、心からお礼申し上げます。

 
コースタイム

  • 赤岳山荘 06:30
  • 赤岳鉱泉 08:00
  • – 大休止(30分)
  • 裏同心ルンゼF1 08:50
  • 大同心稜合流 11:55
  • – 中休止(20分)
  • 横岳稜線 12:40
  • – 小休止(5分)
  • 硫黄岳 13:30
  • – 小休止(5分)
  • 赤岩の頭 13:50
  • 赤岳山荘 15:50

 

 

ドロンパ☆看板娘

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甲信方面のクライミングシーズンが終わりますれば、伊豆方面の御開帳。

「そうだ、伊豆(城山、城ヶ崎に限る)に行こう!」は我々の業界に於いて常套句にして風物詩。つっても城ヶ崎は一回しか行った事ないんだけどな。

ツヨポン氏と訪れた二間バンドは9月のカサメリのように暖かく、サンサンと陽光に満ちあふれていた。

 

ドロンパ 5.12a RP

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前日までは「かさぶた 5.12c」を触る予定だったが、なんとなく「ドロンパ 5.12a」に魅かれオブザベーション開始。カンテ挟み込み系のボルダリーな感じ。ボルトは5-6本だが全長は短い。なんとなく得意系に思え、「これ2撃できそうすねえ…」と強気の発言が飛び出す。

そしてMOSトライ。カンテ一本目のドローが遠いが気合いでセット。右下のテラスを踏んでガバポッケを取り、完全にカンテに体を移す。カンテを挟み込んで前進していく。下から見ると全てガバに見えていたが、実際は甘いポッケという定番の展開にも怯まず進んでいく。

こいつぁMOSもありえるんじゃねえかとスケベ心がチラついた頃、待ってましたとばかりにバランスの悪いクリップ&核心が出現。良く覚えてないけどその辺でフォール。

軽くムーブを探ってトップアウト。グラウンドアップに拘りたい気持ちもあったが、ひとまずムーブを固めすぎない方向で妥協。

ツヨポン氏の「かさぶた」ビレイ後、2try目に挑む。

 

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と、ここでHIANGLE woman を投入。最近とんと出番がなかった看板娘ですが、そろそろ本腰を入れて育てなければならない。カンテ右側の連続ヒールフックとも相性よさげ。

すると抜群のヒールで順調にカンテ上部に到達。ところが最後の一手が出せずフォール。やはり感覚でこなしたムーブは定着が悪い。「さっきどうやったんだっけ」状態でもう一度確認。グラウンドアップとはなんだったのか。

もう一度「かさぶた」ビレイに戻った後、三度目の正直。

ムーブに体が慣れてしまいクリップを飛ばしそうになるが、修正して核心へ。さすがにヨレているので気を吐きながらテラスに抜ける。無事RP。

ちなみに、右下テラスを使う範囲はクライマーの判断に委ねられるだろう。個人的にはカンテ二本目クリップ直下までが自然な流れだった。

 

かさぶた 5.12c 敗退

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最後に「かさぶた」を触ってみる。12aを3tryした後にやるもんじゃないが、ツヨポンムーブを見てると自分も出来そうな気がする不思議。

すると2,3手も進んだあたりで、「え、甘っ…つーか遠っ!!」と面喰らう。 なんとか突破するが、その後も遠い、悪い、キツイ(傾斜が)の三重苦。見るとやるでは全然違いますな。核心手前で敗退。

 

長いヤツ

ドロンパをワンデイ出来たのは嬉しいが、レストポイントもない短いルートだったのでルートを登った感が少ない。というわけで今度は「イエスタデイワンスモア」とか長〜いヤツを登りたい。もちろんグラウンドアップでな。

んで、今シーズンこそは南壁のマルチピッチを…求むパートナー!

阿修羅

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シーズン最後の瑞牆は最低気温マイナス5度/最高気温6度。最後を飾るに相応しい冷え込みっぷり。

車内ではR&Sに掲載された「千日の瑠璃」と倉上氏のことでINO氏と盛り上がる。互いに「おれも男泣きするようなクライミングがしたい!」と熱量を溜め、寒さ対策とした。

 

アップ核心

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しかし皇帝岩に着くとまだ日陰。日向を求めて花畑エリアまで下る。

一向にクライミングシューズに履き替える気にならないが、この程度の寒さで萎えてるようでは男泣きはできない。意を決して履き替える。

すると面白いほどスメアが効きスラブが楽しい。「花畑」向かいのスラブを数本登り「ラフレシア」を冷やかす。以前中腰スタートしかできなかったスタートだが、ヒールからトウに変更すると完全SDが可能となった。とは言え皇帝が目当ての我々は早々に移動。

皇帝を打つが二手目の感触がイマイチ。ムーブが短いので体が冷えるのも早い。しばらく打って阿修羅へ移動。

 

阿修羅 初段 RP

正直に告白すると前回マントルで落ちて以来、あまり前向きではなく塩漬け確定かと思っていた。だが、そんなヘタレを再び奮い立たせてくれたのが前述した「男泣き」である。そこには「マントル返せばいいだけだから今更…」などとのたまうヘタレマントル野郎はいなかった。

上部のポッケにゴミが詰まってないことを確認して早速1try目。足上げまで順調に進むが上手くフットホールドを踏めずフォール。

 

そして、短いレストを挟んで2try目。

初手がやたらと伸びる。こんなに近かっただろうかと思っていると、マッチの右手がクラック上部に届きそうになる。あわてて手順を修正、足上げからアンダーポッケへ繋げる。

さて、ここからが本題。気合をいれて体幹を締める。そっと荷重を移動させ上部へ伸び上がり、ほぼ何もないスローパーを中継。ジワっと上部ポッケに到達した。

一気に緊張感が高まる中、手を進めてマントルに入る。前回はここで落ちた。実際には落ちずに木に挟まったわけだが、集中力を切らすまいと渾身のマントルを返し、登りきった。

完登できた嬉しさはもちろん、マントル落ちした課題に対し積極性を取り戻せたことがなによりだった。男泣きできるほどのカタルシスは訪れなかったけど、そいつはいつかきっとやってくるだろう。

 

背骨岩

その後、背骨岩の「背伸び運動 3Q」「スケルトン 5Q」を股関節の柔軟性全開で完登。簡単だが高さのある上部も楽しい。

皇帝岩

4時頃に皇帝岩に戻り、日が暮れるまで皇帝。二手目を足で立ち上がり取りに行くがあまり良い感触がない。結局、ランジで完全に引きつけるのが正解に近そう。ただし、ランジの溜めでは壁に入りすぎないほうが吉。

ジェラ&1000氏と合流して、すっかり日の早くなった瑞牆を後にした。

 

所感

IMG_3770[ラフレシアをご一緒させていただいたワンちゃん]

 
つーわけで、最後にご褒美をいただいた締めの瑞牆。涼しくなるのが早かったこともあり、9月の中頃から12月上旬までガッツリ登れたことにも感謝したいと思います。

看板課題にして室井氏最高傑作といわれる「阿修羅」がシーズンラストってのは出来過ぎな気もしますが、今後のクライミングスタイルを考える上で非常に示唆的に思えました。

春に戻ってくるときは「生命力」を触ろう。そして、「スラッシュフェイス」と2年越しの決着を。