月別アーカイブ: 2014年12月

登納め 二〇一四

登納めは三年連続の北山公園。
本当は関西の某未公開エリアに行く予定だったんだけど雨のため中止。

そんな時は乾きも良く暖かい北山が定番。そろそろ北山一級くらい登っておかないとシメシが付かない(誰にだ)ってことで登り納めに行ってきました。

 

寝坊からの将棋

目覚めと同時にケータイに目をやると7:40。電車に乗る時間だ。とりあえず冷静にFBで現状を報告し、ヨーグルトとコーヒをぶち込んで実家を飛び出る。ヨーグルト&コーヒの効果はハンパなく、阪急梅田駅で真剣に電車を見送ろうかと考えたが我慢。ま、あやうく河原町行きに乗りそうになりトイレに行く暇すらなかったんだが。

そして一年ぶりの将棋岩の前でみんなと合流。おなじみの関西メンバーに加えて、たまたま日程が被った江戸川橋メイトとセッション。

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アップもなしに将棋ノーマルをさわるが、一回だけスタートして記念撮影。完全に登る気なし。

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[1,000氏は将棋ノーマルを見事RPしたそうです]

 

銅鑼の音

「ま、一級じゃなくて二級でもいいかな、なにせ北山はカラいし」と言い訳しながらヒゲさんオススメ課題「銅鑼の音 二級」に移動。抱え込み系のパワー&バランス課題だ。K村氏、ヒゲさんと共にムーブを探りつつ、気持ちいいムーブが出来上がってきたが、他の課題も触りたくなってきて移動。実に尻が軽い。

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鉄人

「やっぱ、二級じゃなくて三級かな。(北山)四級クライマーだし」と現実路線にシフトした結果、ジムっぽいと噂の「鉄人 三級」に向かう。当然Flash狙いでワントライ目。マントル体制まで持って行くが、やはりここは北山。恐ろしいマントルにこらえきれず下りる。3,4トライの末、またもや敗退。

林トラバース

「皆が言うほどジムっぽくないので、もっとジムっぽい課題があればなー」という糞ジムダラー発言に震える拳を押さえながらヒゲ氏が「林トラバース 三級」を推挙。「飛竜 一級」と同じスタートから右にガバをつなぐトラバース課題。移動すると1,000氏が飛竜を打っている所だった。

ホールドを確認してムーブをバラす。リップへのデッドがやや狭いのでサイファーを提案するが、周囲から理解を得られない。一般的にはヒールフックを寄せてリップを取るようだ。「サイファーはないやろ」と諭されるが、ここは変態クライマーとして譲れないと初志貫徹。しかし残り時間はあと僅か、ワンチャンス&ワントライとなった。

オゾンQCからNEXXOに履き替えてスタートポジションへ。ヒールフックから右へ抜ける。そしてリップへ。全力の絶叫デッドポイントを放つ。リップを完全に捉えると、入念に練った甘いマントルを返して完登。ようやく北山グレードを三級とすることができました。

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帰りは甲陽園駅前の焼き肉。快くマット三枚をおかせていただきました。もちろんお肉も絶品。腹一杯、ビール飲みまくりで大満足。ご一緒させていた皆様、本当にありがとうございます。

それでは良いお年を。

百足 二段

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最後の核心を叫びながら止めた時、それは勝利の雄叫びとなり山間に響き渡った。

我々は勝ったのだ。

「我々」とは、私と百足に他ならない。そこには共に戦った者への歓喜が確かに存在した。

王様の耳はトマの耳』より抜粋

 

つーわけでですね、自己最高最難課題を自己最長トライの末、ゲットした次第であります。

前回の粘着質な情熱的エントリーで述べたように、四日間のトライの末敗退、その後五日目、更に六日目を経て遂に悲願達成。ま、とりあえず五日目から話させてください。

 

五日目、ムーブは向こうからやってきた

 
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その日は時間的制約から昼過ぎには下山の予定。滞在時間は4時間程度を見込んだ(往復の時間も4時間なんだぜ)。しかし迷うことなく百足へ。ええ、変態ですから。

ところが第一核心のピンチが取れない。止まるとシビレるほどの「結合感」が得られるムーブがサッパリ決まらない。前回セミアーケで保持すると結論づけたカンテの感触が悪いのだ。

長期戦になると一旦固まったムーブに迷いや疑念が生じることはママある。しかし放置しては先に進めない、気持ちを切り替えて再度探る。

すると画期的な「途中トライ方法」を発見。四日目までの自分が見たらチートと罵りたくなるレベルのショートカットを見つけてしまった。

そして件のセミアーケに関しては

  • 重心を下げてトウフックを活用する事が本質
  • 重心を下げると腕が伸びる
  • 結果的にセミアーケだった

ことが判明。

典型的な原因と結果の逆転である。初歩的なミスに笑うしかないが、ロジックの再構築を経て、より強固なロジックとなったはず。たぶん。

その後、ショートカットをフル活用してピンチ以降のムーブを最適化。しかしそこで予想だにしなかった新ムーブに遭遇。諦めていたリップポッケがスタティックに取れるようになった。最後はダイノでと思う気持ちもあったが、どの道リップへは足切れ必須な上、このムーブもテクニカルな事は間違いないと採用。

こうして全てのピースが揃ったが、時間だけが足りなかった。2回目のトライでリップポッケを止めるも、ヨレで無駄に刻んだ挙句、最後の一手が出ずフォール。

珍しく居合わせたクライマー兄貴に「次は絶対いけるね!」と励まされるが帰らねばならない事を伝えると言葉を失っていた。完登を目前にして昼過ぎに帰る変態を彼はきっと忘れないはずだ。

しかし帰りのバスの中、新たな発見と収穫に胸は高鳴っていた。もう無いと思っていたムーブがひょんなことから現れる。いやーあるもんですなームーブって。

 

六日目、ムーブの余韻

 
そして六日目。今度も時間的に余裕はなかったが、もう焦りはなかった。後は如何にしてイメージどおりにムーブを繋げるかが重要だった。練りに練ったムーブを完全な形で出したい、言いかえるなら「美しく」登りたかった。前日に受講したチバトレのアップをこなし、各ムーブを確認した後、時を待った。

14時、木漏れ日がまばらに百足を照らしていた。スタートポジションに座ってホールドを確認すると、集中力も緊張感も無く、だた漠然と登れる予感とムーブへの意欲が湧き上がってきた。

一手目。軽く息を吐き、足を拾う。丁寧に下部のトラバースを繋げ、直登パートへ。ここからは一瞬たりとも気の抜けないハードムーブが連続する。最初にして最大の核心である、バランシーなトウフックからデッドポイントを気合とともに止める。さらにスリッピーな左足を残しながら、五日目に見つけた右足をセット。過去最高の完成度でムーブが繋がる。淀みないリズムを保つように、最後の核心であるリップポッケへ渾身のデッドポイント。最高潮に達する。しかしまだ気は抜けない。両手とも限界近くまでパンプしているが最後の気力を振り絞り、リップへ飛んだ。マントルを返し岩の上に立つと、ムーブの余韻のようなものが体に残った。

 

 
丁寧にブラッシングしながら、安堵と少しの寂しさを感じた。

 

Push the Limit

 
こうして「百足 二段」は六日間の死闘の末、レッドポイントする事が出来た。

繰り返すが勝ったのは僕と百足だ。僕は普段、「課題を落とす」という表現はあまりしない。その理由を深く考えることもなかったが、百足を登ることで何となく解ったような気がする。

来年も、素晴らしい課題と出会うだろう。その時はまた、課題とともに己の限界に挑もう。

 

Load Of The Centipede

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まず現状を整理しよう。9月に「黒い森 初段」と「フリークエントフライヤーズ 初段」を登って以来、初段は愚か1級も登れていない。この間、「ゔぉっく」「算術」「エクリプス」「スラッシュフェイス」をトライしてもまったく手が進まず、「スラッシュフェイス」に至っては後退を疑うほどだった。

年内に二段を登ると息巻いたものの、全く不甲斐ない出来がつづいた。このエントリーはそんな長いトンネルを克服したよ!という内容ではなく(そうならいいのにね)、年末のクソ寒い雨が降る土曜日に吐き出す、季節外れな暑苦しい決意だ。

 

百足 二段

 

本当は登れた時まで取っておくつもりだったが「百足 二段」の事を書きたい。

140度に及ぶ強傾斜を、石灰岩特有の多彩なホールドを辿り、テクニカルかつダイナミックなムーブを駆使して登る格好良すぎる課題だ。

 

聖人岩というマイナーな岩場で、僅か4,5本の課題があるだけの小さなボルダーを訪れる人はほとんどいない。しかしそれは、たった一人で課題と向き合うにはこれ以上無い条件だった。

正直に告白すると、「年内二段」への焦燥感から近場の岩場なら何でもよかった。しかし、「二段を登りたい」から「百足を登りたい」に意識が変化するのに時間はかからなかった。それほどまでに百足は濃厚な課題だった。

一日目に「Thulala 初段」のムーブを解決し、二日目に百足のSDスタートからThulalaへのリンクまでを解決した。そして三日目、つなげトライに至るが最後のリップポッケにミートせず敗退。ポッケの確度が低く、より奥のリップに可能性を見いだすが、最後にランジというハードムーブに迷いが残った。だが、ジムで右手中指をパキり、幸か不幸かランジ一択となった。そして四日目、満を持して挑んだ1トライ目はギリギリのランジでリップを叩いた。しかし右手は止まる事無く滑り落ちた。あと2cm、いや1cmだろうか。悔しさのあまり、叫ばずにはいられなかった。その後、30分レストを挟みながらインターバルトライを続けるが、なぜかこれまで悪くなかったカンテの感触が定まらず、四日目の敗退が決定した。

 

rip

 

さらっと四日目とか言ってるが、そう四日間「百足」だけを打っているのだ。割と異常かもしれない。初日〜二日目まではムーブの進展も著しく、完登に至らずとも大きな期待感を得て帰路につく事が出来る。しかしその後は、最適化が進んだとは言え、強度の強いムーブを繋げるのは1日に5トライが限界だ。近所とは言え片道二時間を費やし、魂を削る5トライを、なけなしの5トライを、振り絞るため五日目に挑むのか、挑めるのか、帰りのバスの中でテーピングをはがしながら思いが去来した。

しかし、たったひとつの課題を黙々と打ち続けるのが自分にとってクライミングの原点であり、僕は原点回帰を必要としていた。時間が経つにつれ百足のムーブを反芻する事が多くなり、気がつけば越生の天気予報ばかり眺めている。そして違和感を感じたカンテの原因を究明すべくPhotoShopで穴が開くほどホールディングを見直した。するとどうだ、安定感のあったトライではホールディングが浅く、セミアーケだった。親指を添えアーケで深くホールディングすればするほど、安定感を失っていた。

 

photoshop

 

このあまりにも繊細なソリューションが、五日目の福音足り得るか、それは分からない。しかしひとつ確かな事は、僕は五日目もなけなしの5トライを握りしめて百足に会いに行くだろう。五日目で足りなければ、六日目に望みを託すだけだ。六日目が駄目なら七日目。

変態?本当にありがとうございました。