癋見

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ヒールをスタートに置いた瞬間、これまでとは違う圧倒的な”何か”を感じた。

フリクションだけでここまで感触が良くなるのだろうか。相変わらず遠い初手だが、止まらないとはもう思えなかった。全てのホールドとシークエンスが密結合しているような、最高に”繋がっている感”が伝わってくる。

突き上げてくるムーブへの欲求を鎮め、やや間を置く。そして、迷いなく放った初手は、乾いた音を立てて止まった。

すかさずフットジャムをねじ込んで左手を送る。右手がややズレたが修正しないままドロップニーからサイドカチへ。そしてヒールフック。あまりに効きが良かったのか、ふくらはぎが軽く攣る。しかし呼吸を整えそのままシークエンスを繋ぐ。リップ直下のカチを気を吐きながら捉え、前回出せなかった一手をリップへ送った。

一瞬シェイクを挟んだあと、冷静にマントルを返し、スラブを小躍りしながら駆け上がった。

 

 

 

四度目の正直

 
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2014年の瑞牆ラストシーズンに偵察して以来、一年に渉って最重要課題であった「べしみ 二段」はシーズン終了間際、拍子抜けするくらいスムースにRPすることができた。

春に一度、秋に二度、着実にムーブの完成度を上げていった結果、最大の鬼門であった初手もほぼ完璧に決まり、11月初旬にリップ直下へ迫る。あいにくヨレ落ちを喫するが完登が近いことを確信する。

しかしその後、三週間に渡って天候と体調が整わず、ナーバスな日々を過ごした。

そして管理棟も営業を終了した11月末、四度目の週末に挑んだ。一段と冷え込みを増した瑞牆は抜けるような青空の下、最高のコンディションにあった。霜柱を踏みしめながらアプローチを上がると、ひとけのない大面岩下は凛として佇んでいた。

最高のコンディションの中で、このレベルの課題を完登できたことは感無量だった。おつきあいいただきました皆様、本当にありがとうございます。

そして限界を突破させてくれた課題と初登者に心から感謝と敬意を示したいと思います。

 

 

二段の壁

 
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首尾よくベシミを完登した後は「消費者 二段」「皇帝 二段」をセッション。どちらもハードな二段だが、「皇帝」のほうが可能性を感じた。二手目のムーブをもう少し洗練させたら振られを耐えられる可能性が高い。

年内は後一回行けるか行けないかだが、二段というグレードは着実に近づいてきている。それは超えられない壁ではなく、十分に楽しめる対象だ。

強くなることが全てではないが、より素晴らしい課題を登るために強くなりたい。そんな思いに対してご褒美を貰ったかのような、そんな日だった。


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