劔沢を下降していると稜線がモルゲンロートに照らされ、より一層紅葉が映える。武蔵谷を経て、平蔵谷に至ると源次郎尾根取り付き点の目印となる大岩が目に入った。対岸の草付きには明確なトレースがハイマツ帯へと伸びている。ここから劔岳山頂へと一直線に抜ける源次郎尾根ルートが始まる。
[対岸に明確なトレースが見える]
BASECAMP
前日、剣沢に幕営設置した後は取り付き偵察の予定だったがZK夫妻、僕ともに一歩も動かず。そのまま翌日のアタックとなった。ちなみに劔に来るのはこれが三度目。これまでは別山尾根ルートしか経験が無く、バリエーションでの山行は今回が初となる。剣沢の夜は穏やかで翌日の行程に期待を膨らませた。
[BCから劔を望む]
登攀開始
取り付き直後からハイマツ帯のトンネルを這うように抜けると、すぐにフィックスロープのある岩場に出くわす。若干濡れていて悪いがフィックスを使う事無くフリーで抜ける。その後もバックパックをハイマツに擦りながら高度を稼ぐ。
[濡れている上、少し足が深い]
さらに進むと、先ほどより悪いスラブが出現。お助け紐が下がっているが、今回のパーティは残置無視フリー突破が基本なのでフリーにこだわりトップアウト。
[トップは空身で荷物を引き上げる]
沢の高巻きの様なパートを抜けると少しずつ露岩帯が増える。落ちれば当然助からないがポジティブなホールドと抜群なフリクションに恵まれ快適に前進。今回のシューズは無雪期にしてはオーバースペックなネパールEVOだが、エッジング/スメアリングともに非常に優秀。C4では踏めないフットホールドを見いだしてくれる。
[程よい高度感]
Ⅰ峰で先行パーティに追いつくと偶然にも三笘さんのガイドパーティ。
[ZK夫妻は三苫さんに良く会うらしい]
Ⅰ峰からコルに下降後しⅡ峰への登り返す。
右側のハイマツを辿ると簡単だが、快適なスラブを登らずにはいられない。
絶妙な配置でガバホールドが続く。今回の行程で最も快適なラインとなった。
[右カンテを回り込んだフェースが面白い]
Ⅱ峰懸垂
源次郎尾根のハイライトと言うべきⅡ峰の30m懸垂。セッティグを間違えなければ問題なく下降できる。ロープがスタックする要素も小さい。むしろ核心はその後の詰めかもしれない。浮き石が非常に多く、全般的に岩も脆い。脆弱部を回避するルートファインディングと、落石を起こさない慎重な足運びに神経をすり減らす。忍耐力を試される詰めだ。
[30m懸垂]
登頂
周辺までガスが上がってきているため下界の展望は望めなかったが、山頂はガスに巻かれず気持ちよく記念撮影。別山尾根から剣沢へ下山した。
[おなじみの祠]
三度も山頂を踏んだ山は多くはないが、三度目も劔は素晴らしかった。しかし、まだまだ素晴らしいルートがここには数多く引かれている。八峰やチンネ、北方稜線、そして積雪期。あと何度劔に行くだろうか。
[最終日、剣沢を後にする]