バムライフ 5.10d OS

先日末端の末端から見上げた未知のラインにトライしてきた。

結論から書くと我々が「本峰」と呼んでいたのは「文殊岩」で「本峰」に走るクラックは「クレイジーバム」だった。さらに下部ワイドと呼んでいたのは「瑞牆ロケット」といずれも由緒正しい既存ルートだった。

新しい瑞牆本やネットで情報を探せば早々に判明したと思われるが、そこはチームの共通意思としてあえて調べないスタイルを採用。残置無視の情報版みたいな考えになるだろうか。

ま、こんな立派な壁が手付かず…なんてうまい話がそうあるわけないのだが、先行きのわからないルートのことを妄想する時間は至福のひとときでした。

実際に行ってみるとチムニーの先に続くクラックを辿って行き詰まったり、コケむしたスラブ&リングボルトに敗退したり、沢の高巻きのようなルンゼを突破したり、妄想を裏切らない充実の山行…だったよね?

で、その流れからすると「クレイジーバム」を登る流れなのだが、十一面まで抜けるには時間が足りなかったので今回は隣のバムライフを登った。「クレイジーバム」はワンプッシュの時まで大切に取って置こうと思う。

なお、バムライフのクラックが美しかったので浮気心が湧いたんだろう、という指摘は上記の理由からあたらない。

さて、バムライフに取り付いてみると下部がやや立っているがジャミングもプロテクションも良いのでグイグイ手を進める。一旦傾斜が落ちるがすぐに薄被ったクラックに入る。日和らずに手も足も確実にジャミングを決めていけば導かれるように上部パートへ抜ける。

ここまでオブザベーション通りの順調な展開。

ここからは取り付きから見えないパートになるが、ここまで来ればあとはウィニングロード…ではなかった。傾斜は落ちるがクラックはやや細くなり加えて少々湿っぽい。さらに下部での消耗がジワジワ効いてくる。弱気になったら負けると、愚直に手も足もジャミングを決めると次の一手につながっていく最高の展開で終了点へ。

トポを改めてみると4つ星がついているが納得の内容だった。

シルバーフリーウェイ

 

昨年、丸氏と初めてマルチにいった際、彼はすこし伺うように聞いてきた。

「シルバーフリーウェイとか、どうですかね…?」

私はもちろんこう答えた。

「いつ行く?今週?それとも来週?」

それも食い気味に。

シルバーフリーウェイと聞いて行かないという選択肢は存在しない。いつ行くか、それだけである。

瑞牆本で目にして以来、ずっと登りたかった一本である。グレード的に難しいわけでもないしアプローチもそんなに遠くない。ただ中尾さんの名文から伝わる冒険性は否が応でも緊張感を高める。こういうルートはこういうのが好きなパートナーと組みたい。しかも双方初見が望ましい。そうなるとパートナー探しが難しくなるが、まさかの瓢箪から駒、棚からぼたもち。このチャンスを逃す手はない。時期的にシーズンは終わりに差し掛かっており、来シーズンに決行する運びとなった。

 

 

前述の会話から冬をまたぎ、その日はやってきた。少し雲が重いが5月にしては涼しい。ピリっとしたスラブを登るには悪くないコンディション。

取り付きから見上げると想像より傾斜は寝ている。広大なスラブの大海原を、わずかな凹凸を頼りにラインを見極めるつもりで肚を括ってきたが意外にも明瞭。プロテクションを決めるであろうフレークもはっきりと見て取れる。

第一印象は「快適そうなスラブ」だった。いや、正直なところ楽勝だと思った。本気シューズを出さなくてもいけるんじゃない、とナメた口をきいていると丸氏が味のある表情を向けてくるので、黙ってジーニアスを履くことにした。

立ち木にゼロピンをセットし、大海原へ漕ぎ出す。ひとつ目のRCCまであがると、急にホールドが乏しくなる。極端に悪いわけではないがムーブを見誤ると修正は難しいだろう。ナメてかからなくて良かったと安心しつつ慎重に高度を上げていく。フレークに到着するとラスクのような岩質。グラニュー糖のように粒子がポロポロ剥がれる。スリットにカムを多めに決めるが、果たして落下に耐えうるのだろうか。実に興味深い問いである。更にポケットホールドにスリングを通してプロテクションにする。

ふと誰かがスリングを通せる箇所があると嬉しそうに話してた気がする。どうも世の中は物好きが多い。

当初の読み通りスパイスは効きつつも概ね快適にオンサイト。むしろガルバニック腐食を起こしている終了点を整備したほうが良さそうに思えた。

2P目は丸氏リード。ポロポロと岩が欠けて落ちてきたがオンサイト。

3P目はクラックに入るところが濡れていて全体を通してここが一番悪く感じた。

4P目はふかふかの庭園を歩き。

5P目はワイルドなピッチを岩頭まで抜ける。

無事に全ピッチをオンサイトして取り付きへ戻った。

中尾さんに倣ってグレード感を書くとこんなところかと。

1P: 5.10c
2P: 5.10a
3P: 5.10a
4P: 歩き
5P: 5.8

Rがつくかどうかは他のRルートを登ったことがないのでわからない。何にせよ素晴らしいルートを登ることができてよかった。

他でも言及されているがご祝儀岩には他にもいくつかラインが引けそう。かつすでにステンレスアンカーが散見された。また来る機会があれば左のルンゼ〜クラックラインを見に行きたい。

 

足ならし

冬の間は昇仙峡に篭っておりましたがシーズンも終わりが見えてきたので瑞牆マルチへ行ってきました。もちろんゲートはまだ開いていない。

ここ数年、12−3月はボルダーに集中してそれ以外はトラッドとかマルチというパターン。ちなみに今冬は大ハングに5日ほど通ったがまったく繋がるイメージが得られず。シャークティースがなんとか登れたのが救いだった。また来シーズンがんばりましょう。

というわけでマルちゃんと大面岩、左稜線。フリースを着て登り始めるが日が当たるところまで来ると半袖でも快適。ハイライトピッチの出だしで左からボルダーを巻くところをあえて強点をついて直登りする。このラインからだと10cくらいに感じた。ロープを伸ばせるだけ伸ばしてチムニーを抜けるところまで5ピッチ。約3時間で岩頭に抜けた。

下降後、パノラマックスに継続。1p目が5.10aとされてるが左稜線のスラブ最終ピッチの方が間違いなく難しいと思う。5.9が妥当なのでは。

前回一刀の後に2P目のクラックラインをトライしたので今回はRPを目指す。前回ほどヨレていないので核心までは比較的スムーズ。だが核心は手強い。ダブルチキンウイングというかなんと呼べばいいのかわからんムーブで抜ける。再現できるんかコレ、という気分にさせてくれる。

そしてダメ押しの抜け。これ5.11bに収まってないよね! とマルちゃんに同意を求めたが、右のフェイスラインをトライした彼曰く、「フェイスラインは同じようなムーブで上がってくるのでここだけ難しいとは感じなかった。ジャミングの後に出てくるから面喰らうのでは」ともっともらしい説を唱えていた。

足が痛いのでアナサジに履き替えて本日2try目。ダブルチキンウィング的な何かで核心と奮闘する。なんとか耐えてテラスに抜ける。先ほどのマル理論を信じて最後の抜けムーブをこなし岩頭に抜けた。

パノラマックスとしてはあと2pほどあるが、すでに大面岩にピークは踏んでいるのでここで終了。よい足ならしとなりました。

一刀

 

フリークライミングをしてきた。

瑞牆山は小面岩のマルチピッチ、それは「一刀」。

壁中に一切の残置物を残さず、取り付きから岩頭まで花崗岩のクラックに導かれトップアウトする、最高にかっこいいライン。

このラインを初めてトライしたのは5年ほど前。その時から「安易にトップアウトはしたくない」と考え、各ピッチ完登して次に進むことにした。おあつらえむきに最終ピッチはランナウトするという。A0でトップアウトするネタバレクライミングは相応しくない。最後まで未知の領域を残して登ろうと思った。

妥協した点があるとするとハングドックとヨーヨースタイルを許容したあたり。それも当時のパートナーとよく話し合って決めた。

そんなわけで5年まえは3Pを抜けることも叶わず敗退。なにもかも足りてなかったが心意気は買っていただきたい。

そして今年の春、パートナーは山ちゃん。我々が組むと晴天率が著しく悪い。びしょびしょの1Pを沢登りのように抜ける。2Pのクラックもシケシケ、ここは前回ピンクポイントしてるので3Pのハンドクラックに注力する。2日間のトライの末、2PのRPに成功、山ちゃんは3Pも成功していた。

 


 

満を持して秋、岩はパリパリ。1Pに至っては快適すぎて#5,6の出番なし。2Pを山ちゃん。クラックに枯葉が詰まっていたが堅実に登り切る。フォローも落ちることなく続き、3Pに取り掛かる。

 

1P
1P 5.9

 

岩の状態は控えめに言って最高。やや風が冷たい。ハングのムーブを忘れていて少し消耗する。数手進み足が切れるが耐えてレイバックで切り抜ける。前回悪く感じたワイドハンドは抜群のフリクション、気がつけばフィンガークラックが目の前。チョックストーン下で十分にレスト、集中してマントルを返した。

2Pと合わせて一刀でRPグレードを更新できたことになる。地味に嬉しい。

 

3P
3P 5.11b

 

ここからが念願の初見のピッチとなる。歩きを交えチムニーピッチを抜ける。

 


5p 5.7

 

そして最終ピッチは噂のランナウト。出だしは左上したクラックでグリーンスピリットのように見えなくもない。快適に左上クラックをぬけマントルを返す。なるほどプロテクションは取れない。だが本日のフリクションにおきましては何の心配もございませんとばかりに、サラリとOS。あれ、もしかしてトラッドのOSグレード更新では…

冷たい秋風が吹き抜ける岩頭に抜け、小ヤスリのクライマーと談笑した。

取り付きを発ったのが9時半、岩頭に12時半。終わってみれば3時間程度のフリークライミング。壁には思い出だけを残してきました。

 

 


岩頭

月の黒兎

「有頂天」を登ったあと、「月の黒兎」なるラインを登った。

岩の場所はエリア内でもアプローチ最短、多分車から3分とかからない。遊歩道が右に流れ始めるところを左下方に降りて行く。不法投棄が残念だが岩からは見えない。(焼石に水とわかりつつちょっとずつゴミを拾っている。なにもしないよりはマシかな…)

そこにエリア最大クラスのスラブと120~130°のハングがある。

カサEさんとスラブのラインを2本登ったあとにハングに取り付く。顕著なカチから中間部のクレーターを経由してリップに出るラインを妄想するが、初手からなんもできない。取り先は高いアンダーホールドだ。加えて130°。果てしなくクレーターが遠い。

しれっとクレータースタートに切り替えるが、高いアンダーホールドでスタートするのも楽な話ではない。さらに腰が下がった状態でリップに…出れない。微妙に足位置を調整すること小一時間、ようやくリップが止まる。スタートで楽な足を選ぶと初手が出せなくなるパターンであった。危うくどハマりするところだったが万事解決、これで完登目前と2手目を出すが遠い&痛い。なんとか止めるが今度は足が上がらない。カサEさんがふと「直上できるのかなあ」などと言い出すが、あのクソ遠いスローパーに何を夢見てるんだと臍で茶を沸かして無事敗退となった。

だが後日、驚きの事実が知らされる。

いやはや、試しもしないで無理と決めつけた己の不明を恥じるばかりである。

数週間後、娘氏に付き添ってもらって直上ラインをトライ。心なしか前回より近く感じる。とりあえず地ジャンでリップにぶら下がり飛ぶ。…意外に距離は出る。スローパーもインカット部分があり保持感はよい。そうか、これは可能なラインだったのかと改めて納得。

数トライの末、無事スローパーを止めて完登。なんでもやってみることが大事。とてもよい勉強になりました。ちなみにカチからクレーターに繋げるラインとカチから直上するラインは継続案件なのでセッション熱望中です。

有頂天

 

1年ほど前、娘氏とハイキング(という名の岩探し)でとある岩場にたどり着いた。GoogleEarthとネット上の断片的な情報から、ソコソコの岩がありそうだと予想していたが、ソコソコどころか立派なボルダーが鎮座していた。ローカルクライマーの足跡を感じながらチョーク跡のあるラインをいくつか登ったあと、スローピーなリップラインが目に入った。苔の状態とチョーク跡の無さから未登の可能性を感じつつ、ホールドの乏しさから簡単ではないことが伺えた。

その後、@gniyama 氏から情報を共有してもらい、SDスタートからマントルを返す既存ライン「雁ヶ腹摺(がんがはらすり)」が存在しているが上部に抜けるラインは未登らしいと判った。

トライはスローパーってこともありコンディションを待って12月から開始。2日目にはあと一手に迫まり、こいつぁ年内に完成させて気持ちよく正月を過ごしてやるぜとほくそ笑んでいた。今にして思えば典型的なフラグである。

しかし3日目、止めるだけと思ってた最後の一手はとうとう止まらなかった。よりにもよってクリスマス、家族はどーしたんだという批判は甘んじて受けよう。サンタはいい子のところにしか来ないってのはガチなんだな。サンタの代わりに@gniyama氏がいたけど。

とはいえ収穫がなかったわけではない。微妙なホールディングの調整でムーブが劇的に良くなり、終盤に多少なりとも余裕が生まれた。そういえば、こういう細かい最適化って好きだったよな。ムーブが洗練されたことも嬉しいが、初心というか大切な何かを再確認した気がする。

そして年明け登り初め。最後の一手をもう一度観察。すると今まで見落としていたホールディングに気がつく。どうやら最後の一手ではなく二手だったのだが、まあそんなもんだ。しかし繋げてみるまでは正直よくわからない。入念にアップしてトライを開始した。岩はパリパリだが気温が低すぎてシューズが弾かれる。一度足が抜けるが最終局面まで来る。比較的順調だがやはりヨレを感じる。さっき作ったばかりのムーブをこなす。なんとか止まった。あと一手。けっこうヨレてる。ひよったら終わると手を出す。ヒールがぬけて振られる。落ちなかった。

登れてみると思った以上に嬉しかった。ホッとしたとかじゃなく単純に嬉しかった。それがまたよかった。

 

 

課題名は同じ岩にある「怒髪天」からインスパイアを受けて「有頂天」と命名。例によって完登前から名前は決めており、「怒髪天」と対になる名前を思いついた時は相当なドヤ顔だったと思われる。とはいえ「怒髪天」と双璧をなす課題が出来たと自負している。グレードは初段から二段のどこかになると思うが再登者の意見を待ちしております。

最後に、@gniyama氏をはじめ、このエリアを守り育てている全てのクライマーに心からお礼申し上げます。

空木岳ボルダー

森林限界を超えたところでボルダーがしたくなって中央アルプスは空木岳へ行ってきた。

当初は一泊二日で縦走にボルダーを交える予定が天気と予定が噛みあわず、前夜から歩き始める弾丸ツアーへ変更。

午後22時半、空木岳登山口からスタート。木々の隙間からわずかに月が見えるが暗い。ソロで初見の山域を夜間行動するのは控えめに言って怖い。ルートファインディング的な話もあるけど、まあなんだ、お化けなんていないんだぜ。日中だと全く気にならない枝が折れる音や遠くで鳴く鹿の声にいちいちビクビクする。熊よけも兼ねてポッドキャストを再生しながら歩みを進める。正直ポッドキャストなかったら心折れてたかもしれない…

午前3時半、ようやく森林限界を抜け一気に視界が広がる。


背後には下界と雲海、南アルプスの稜線。これこれ、こういうのが見たかったんですよ。到着したら秒で寝るつもりだったが絶景を前に写真を撮ったりはしゃいでたら午前四時半。駒石上でオープンビバーグ。

ようやく寝入った頃、風が強くなってきて目が覚める。シュラフから外を見ると南アルプスの稜線が赤く燃えている。寝てる場合じゃねえ。さっそく朝活を開始する。たぶん1時間も寝てない。

まずは駒石の正面クラック。

初見ではジャミングで登ろうとしたが高所の花崗岩は風化が激しく足が決まらない。結局レイバックでサクッと登る。他にもいくつか登って、完全に日が登り切った頃ようやく朝食。フリーズドライにお湯を入れすぎてお粥となったおこわを食す。

その後、発熱トラバースを数手やってみるがメンタル不足で敗退。快適なハンドクラックだと思うが状況的に肚をくくれなかった。

頂上に向かって歩き出す。綺麗なダブルカンテをSDで登る。

駒石同様こちらも岩肌が脆いが許容範囲。周辺にはハングやワイドもあったのので他にもラインはありそう。

さらに上がっていくと被ったクラックに遭遇。これはすごい。

下地も高さも申し分ない。何よりもこの傾斜、120−130度はあるだろう。クラックは強烈に利きそうなハンドサイズ。早速トライする。予想通りの快適ハンドで足を切っても問題なし。リップ付近のガバを捉えると少し脆い。やや左からトップアウト。間違いなく三つ星課題だが、すこし気になるのが板状のチョックストーン。ジャミングには耐えてくれそうだがガバを強引に引くと脱落するかもしれない。というわけで四つ星課題としておく。ぜひ多くの方に登っていただきたい。

頂上まで上がってランチ&仮眠タイム。頂上周辺にもボルダーはあるが思ったより高さのある課題はなかった。もうすこしゆっくり探せばいいのが見つかるかもしれない。岩小屋ルーフもあったがホールドは乏しく、次世代に委ねようと思う。

昼前に下山開始。同じルートで降りる。真っ暗闇をビビりながら降ったルートはとても気持ち良く紅葉も美しかった。

ストロンブレイカー ノーグレーディング

 

ゴールデンウィークはいろいろと登った。

リハビリと称して「正面壁右岩稜線」のマルチピッチから、カサメリの「はるな」、「ストロンブレイカー」、「瑞牆大橋下ルーフクラック」など。

あらためて書き出すと4課題にすぎないが、それぞれ特色があって印象深い。

なかでも「ストロンブレイカー」は強く印象に残ってる。「はるな」を登ったあと軽い気持ちでカサE氏と取りついたのだが、「こんなところにクラック課題なかったはず」という先入観からロクに調べもせずにトライを開始する。(なお、トポにはバッチリ記載されている。山ちゃん教えてくれてありがとう)

まあ結果的にそれはよかった。自分で判断せざるを得ないし、「5.11c」とあればトライしなかった可能性は高い。

ちなみに我々の当初の読みでは5.10aから5.10cであった。

 

で、登ってみると読み通りフィンガーからハンドサイズ。右上ラインなので右足の置き場所に困る。核心のジャミングやプロテクションで試行錯誤しつつトップアウト。カムは0.4が比較的多かった。

しっかり休んでレッドポイントを狙うが核心のプロテクションで力尽きる。まあ前日マルチ登ってるし致し方なしとこの日は撤収。グレードについては疲労もあり、加えてクラック経験が足りなさすぎてなんともだが、当初の読みは大きくずれていないように思えた。

 

 

数日後、今度は家族でカサメリ。この間、ストロンブレイカーをどう登るかを考えていた。
選択肢は3つ、

  • 普通にリードする
  • ロープソロでリードする
  • ボルダーとして登る

結果的にボルダーを選択したのだが、その理由はざっと以下

  • ビレイヤーの確保が難しい
  • ロープソロは未経験
  • 斜面沿いなので山側に飛べば落差を減らせる
    • もっとも谷側にふっ飛ぶと落差は増える
  • すでにプロテクションありで全貌を知ってしまってるので冒険性をもとめるとボルダーしかない
  • フレッシュな状態なら不確実性のあるムーブはほぼない
  • ボルダーとしてギリ許容できる数少ないチャンス

他にもあった気もするが、ボルダーとして登るのがもっともクリエイティブだと思えた。

 

家族をモツランドに残してオランジュへ。クラックの状態を確かめるために中間部まで上がる。めちゃくちゃ快適。クラックの状態云々より、体の状態がよい。前回はどんだけ疲れていたのだろう。

一度クライムダウンして今度は核心直下まで。核心はやはり少々緊張する。山側に飛べば…とか言ってたけど濡れた露岩に苔が生えているのでできれば飛びたくない。着地で盛大に滑って肘をぶつけて滑落するイメージが浮かんでくる。

地上に降りて「本当にやるのか」とあらためて問い直すが、リスク的にもムーブ強度的にもできない理由は乏しい。何よりロープもカムも持たずにムーブを起こすことが思っていた以上に楽しく、この選択は間違っていないと思えた。

短いレストの後、再び取りつく。

中間部のハンドまでサクサク上がる。やはり快適。フィンガーを交え核心まで。少し甘いシンハンドを決め意を決して足を上げる。するとシンハンドがバチ効き。前回はチョークアップする余裕など皆無だったが、今は違う。余裕のチョークアップからビクトリージャムへ。ルンゼを詰めて取りつきへ戻った

とても良い課題だった。
この場を借りて初登者に敬意を表したい。

 

おそらくボルダーとしては登られていないと思うが、高さや内容を踏まえると「ノーグレーディング」とするのが良いと思っている。

 

ヒヨッコの集い

 

イノ+ミケと登りに行った。このメンツで登りに行くのはいつぶりだろう。ほんの数年前までは毎週のように岩に行ってた気がするが、思えば全員30代だった。今ではミケちゃん以外は四十を迎え、色々と変化に晒されながらもそれぞれにクライミングを続けている。

とはいえ周りを見渡せば、自分より長く登ってる強々オヤジクライマーはゴマンといる。

妙な感傷に浸ってしまったが我々など未だヒヨッコに等しい。

 

ヒヨッコ

本日、ヒヨッコどもはSSKにあった。便所横の◯臭シリーズが狙いである。朝イチで現場入りするとまあ寒い。極悪そうな左上クラックを眺めてヒヨッコにはまだ早えーなと早々に移動する。

とりあえずアップだということでお寺裏に上がる。シャーク〜夕影〜朔風〜刻一刻と岩巡り。この谷筋だけでも魅力的な岩は多い。パワフルなハングラインが見えたので今度やりたい。

 

夕影

一通り岩を愛でること小一時間、 シャーク上部のボルダーに取り付く。これぞSSKと言わんばかりのバリバリの粒子が手に刺さる。後から来たローカルさんに「夕影 初段」という課題を教えてもらったのでトライしてみる。

ハンドジャムが効きそうなのでクラックグローブをはめて取りついてみる。うむ、どうもしっくりこない。まあいつものことさ…と思ってるとなんということでしょう。

核心でバチ効きである。

イノ+ミケにもジャミンググローブを貸した上でジャミングの優位性を熱弁するが、いまいち賛同を得られず。

曰く、
「グローブがずれる」
「効いてるのかよくわからん」
「っていうかエイドですよね?」
などなど。

ちなみに私はクラックグローブはもとより、チョークやクライミングシューズもエイドギアだという論を支持しているが、その話はまた今度。

とりあえずムーブはわかったのでRPトライするが指皮の消耗激しく変なところで落ちまくり。全容がわかってしまうとどうも雑になってしまう。「わかったからもういいかな」と思わんでもなかったが、ちょっと休憩してトライ。完登することができた。

グレードは初段が妥当だと思うがジャミングしないと難しくなりそう。

ちなみに、ついでに触った「がんばれひろしくん」(ひろしじゃなかったかも)は3級とは思えぬ悪さだった。

 

 

 

朔風快晴

その後上部に移動してスラブ・カンテを登る。

すでに指皮の消耗激しく粒子を握り込んでると手汗が滲んでくる。風が吹いてるタイミングを狙って右カンテを完登。後で調べたが「朔風快晴 初段」らしい。上部でカンテに身をかわしたがフェイス側だけでもトップアウトできそうではある。その場合はワングレード上がりそう。

吉田さんのブログを読んでも上部のラインははっきりわからないが、まあこういうのは自分が見えたラインでいいと思う。

その後「韋駄天 1級」を地ジャンで登ろうとイノさんとセッションしたが止まらず。しれっとスタティックで登る。その後もイノ氏は果敢に飛び続けていた。初心貫徹の漢である。

 

 

両者ともラインが不明瞭だったりフリクション良すぎたりで正確な比較は難しいが、提唱されてるグレードよりやや簡単に感じる。そういえば「歳時機」とかも2級くらいに感じたもんな。個人的には吉田さんのスラブグレードは甘めだと感じている。

もっとも初段のマントル課題「なまはげ」に7年かかった奴が言っても説得力はないか。

最後に刻一刻に上がるが指皮が終わってて何もできなかった。また今度取り組んでみたい。

バイソンと苔

とある岩場でハイク&クライムしてきた。

 

岩質は安山岩で比較的しっかりしている。いわゆる里山って感じで日当たり良好、広葉樹の森の中からは富士山がドーンと望める好立地。地元ではハイカー、クライマーともによく知られた場所でトレイルは歩きやすく、4歳娘とゆっくり歩いて2時間くらいで周回できた。

 

そこで登った一押しの課題、「バイソン」について記しておきたい。

アプローチは駐車場から山腹コースを辿って登山道ボルダー群を抜け、頂上の手前まで登る。登山道から右手下に斜面から突き出したボルダーが現れる。(ちなみに下部にはさらにボルダーが存在する)

4m弱くらいのサイズだが下部にスペースがあり、ぱっと見で面白ムーブ間違いなしの雰囲気。前に回ってみると突進してくる牛に見える。上部の苔が毛むくじゃらにしか見えないつーことで登るまえからバイソンと呼ぶ。

課題は二つ。鼻先からスタートする「ノーズ」とSDスタートの「バイソン」。ここでいうSDとはもちろんスリープスタートのことである。シットなどヌルいことを言ってはいけない。地面に寝そべってバイソンの顎下を眺めていただきたい。(後日LD(lie down)スタートなるものがあると@senkatzさんから教わりました)

「ノーズ」に関しては既に登られている可能性は高いと思う。一方、「バイソン」に関してはひょっとすると初登かもしれない。信頼できる筋にも当たってみたが立派な苔から察するに登られてないんじゃない?というご意見だった。情報をお持ちの方がいらっしゃれば是非!

ちなみに後日改めて見ると牛より恐竜、いやヨッ○ーなんじゃね?という気がしてきたがあえて「バイソン」のままとしたい。

こだわる理由は上部の苔にある。個人的には下地や苔も含めて可能な限り手を加えないで登りたいという思いがある。だが現実には苔を落とさず登れる岩は少なく、多くの場合苔を落として登られる。

しかし、この課題に関してはそうした掃除は必要なく登れる。そういった意味からも稀有なボルダーだろう。

この先も、訪れたクライマーに立派な毛むくじゃらを愛でられる「バイソン」であってほしい。そう願っている。