月別アーカイブ: 2016年8月

笛吹川東沢釜ノ沢東俣

IMG_6099

 

初めて沢に行ったのは4年前、某隊長に誘われてのことだった。今だからこそ明かすが、「え!? 沢っすか? 僕ぁ乾いた壁で…」とか「やー、そんなマイナーっつーか地味なアクティビティする人、実在するんすね」ってな塩梅であった。

んで、「興味は薄いが何かしら得れるものがあるかも知れない」という極めて後ろ向きな姿勢で参加することとなった。

以来、夏とは沢のために神が与えたもうた季節だと確信している。

だが、登攀的な日帰り遡行は行えど、未だ「沢泊」なるものは未体験であった。沢の醍醐味は沢泊にある、とは多くのガイドブックや技術書でも繰り返し述べられている。沢に泊まらずして神からの恩恵を成就したとは言えない。沢に泊まりたい、そして焚き火の横で雑魚寝がしたい。と、いつしか強く思うようになっていた。

 

入渓

IMG_5979
 

お盆に入ったばかりの当日は薄曇り。西沢渓谷を鶏冠谷出会まで歩く。強烈な太陽の下でダイブする気120%だったが、この時点で40%くらいに下方修正。河原で装備を整え入渓する。

 

IMG_5988

 

下流部は左岸の旧登山道を辿るのが一般的だが、そんなことも知らずにザブザブと遡行する。いくつかの小滝を越えたところで泳ぎなしでは突破困難な瀞に行き着く。右岸を探るも悪い。結局左岸の旧登山道まで上がりホラ貝のゴルジュまで。

 

ホラ貝のゴルジュ

IMG_5995

 

最近8G氏が遡行したホラ貝のゴルジュは、外からでは内部の様子が全く分からない。いつかは行ってみたいが今日みたいな薄曇りの日でないことを願う。一服入れたのち、旧登山道から山の神まで。山の神で手を合わせてから行きたかったがそれらしいものを見つけられず。適当に沢に降りる。

 

IMG_6008

 

そのまま開けたゴーロ帯を進むと乙女の滝が見えてくる。冬場はアイスのゲレンデになるらしい。思ったよりも傾斜の寝た滝だった。

 

IMG_6015

 

更に歩くと東のナメ沢がどどーん見えてくる。クライミングシューズで登りたくなる長いスラブ。秋頃にほんちゃんとして訪れてみたい。

 

IMG_6024

 

この辺りから比較的深い瀞が現れはじめる。相変わらず薄曇りのため積極的に濡れる気にはならない。S兄貴と交代しながらロシアンルーレットライクに「深いっすかー?足付きますかー?」と探りながら遡行。

 

IMG_6035

 

幸いなことにドボンだとか転覆とかは免れる。ちなみに手持ちのカメラはタフネス系ではない。何があっても水没させるわけにはいかないのだ。

 

IMG_6042

 

魚留の滝、千畳のナメ

IMG_6057

 

魚留の滝で一服入れる。「あのスラブを水線突破できるだろうか?」とか考えてみるが大人しく左から上がる。落ち口から下を覗いたが、うん、ないね!

 

IMG_6061

 

滝上はシケイン状に屈曲し、抜けるとそこは千畳のナメ。

 

IMG_6067

 

視界の先の更にその先までナメが続いている。最高の癒し系ナメである。

 

IMG_6071

 

上部の多段スラブは水線突破で上がる。やや滑りが強く悪い。

 

IMG_6078

 

両門の滝

IMG_6093

 

そして両門の滝。サラサラと滑らかに水流が流れてくる。一見優しげな雰囲気だか直下に入り込むとそれなりの瀑風を受ける。ひとしきり遊んだ後、今夜の幕営地を求めて先へと進む。

 

IMG_6103

 

幕営

IMG_6139

 

幕営地を求めて高度を上げると立派なカマドを発見。周囲には乾いた流木多数。水辺も不便ではない距離感。これ以上の好物件が他にあるだろうか。いや、ない。さっそく野営準備にとりかかる。

 

IMG_6120

 

まずは本日のホワイトベルグ。

 

IMG_6131

 

タマゴ茸を採取。笠が開き切っているため香りは飛んでしまっていた。

 

IMG_6125

 

パエリアとポトフ。

 

IMG_6143

 

そして夜はふけていく…

 

IMG_6149

 

二日目

IMG_6157

 

夜通し燃えていた焚き火は朝でも安定の火力。朝食を済まし残りの行程を進む。荷物は軽くなっている筈だが久しぶりの山歩きでややヨレを感じる。幕営地以降は倒木が増えてくるが立派な滝も健在。

 

IMG_6168

 

木賊谷と出会うといよいよ遡行終了も目前。最後のナメを登っていく。

 

IMG_6180

 

水流がなくなる直前に雲の間に青空が見え、秋を感じさせる風が吹いていた。ポンプ小屋で登攀装備を解除、甲武信小屋まで詰め下山路を下った。

 

IMG_6184

 

獅子岩マルチピッチ

IMG_5962

 

グンマには獅子岩というイカした名前の岩場があるー。

ということを知ったのはいつのことだったか。たぶん子持山のバリエーションルートを調べていた時だろう。スポートマルチの存在を知ったのは更に後になってから。完全にクライミングに傾倒してからだった。

いつか登りたい。けど技術も装備もない。ま、そのうち機会がやってくるだろう。そう思っていた。たぶん2,3年くらい。

するとフトした拍子でその時はやってきた。よりにもよって真夏に。

 

アプローチ

IMG_5921

 

前夜発で現地入り。落石による通行止めのため3号橋付近に車を留める。当日は薄曇り。真夏にしては条件は良さそう。林道を歩いて屏風岩まで30分前後、獅子岩までは更に50分前後。

登山道を詰めていくと道標にたどり着く。「この先危険」の方向に進むと岩壁基部が少しずつ姿を現す。

 

IMG_5920[左に進む]

 

1,2,3pitch

IMG_5924

 

出だしのピッチは繋げて登るのが一般的だが敢えてピッチを切ってワイフにリードをまかす。ちなみにトップは空身なのでフォローはダブルザックという苦行。なかなかハードなアップである。

3p目は巨大なフレーク。#6があれば決めてみたい。特に意味は無いが。

 

4,5,6pitch

IMG_5947

 

核心(5.8)となる4p目はグレードの割に難しいという話だったが、体が暖まったか荷物に慣れてきたのか、ここまでで最も快適にロープを延ばす。とは言え日が照ってきて暑い。

IMG_5936[核心ピッチ終了点から]

そこから頂上直下のテラスへはピッチを繋げて抜ける。スラブなのでロープが重いことこの上なし。

テラスでしっかり休んで最後の”おまけ”ピッチを登り岩頭へ。景観はいいんだけどとにかく暑い。

 

IMG_5949[獅子岩ピーク]

 

下山

下山路は屏風岩へ続く痩せ尾根ルート。妙義山と何となく似ている。道中でタマゴ茸やらスズメバチの巣など変化に富んだ下山だった。

長い間登りたいと思っていたルートが登れたのは嬉しいことだが、充実したかと問われると首をかしげる。瑞牆山のトラッドマルチを登る前に来ればもっと緊張感や充実感、感動を味わえたかも知れない。課題とは常に一期一会なのかもしんない。

 

IMG_5959[たまご茸]

 

真夏の卒業試験

IMG_5849

 

超絶猛暑到来ですが、果敢にも小川山に行ってきました。

流石に難しいルートは完全スルー、5.10台を中心に日頃お世話になっているINO氏のリードクライミングを全力でサポート。

前日はマラ岩方面と屋根岩方面のどちらが快適なのか、諸先輩方からご意見を伺いマラ岩方面を選択。ちなみに、これまで「屋根岩」のことを「尾根岩」だと自信満々で呼んでいたことは秘密だ。

 

だがシケシケ

そして当日、リバーサイドから妹岩を経由し、姉岩まで高度を上げながらめぼしいルートに取りつく想定でアプローチ開始。ほどなくしてリバーサイドに到着。

だが、そこに待っていたのはシッケシケの壁。あまりの潤いっぷりは沢かと言わんばかり。早々に妹岩に移動。

しかし妹岩も幾分マシとはいえシッケシケ。せっかくなので一本くらいは登ろうとトポに載っていない「見た感じ簡単そうだし、10a/bくらいなんじゃね?」にレッツトライ。するとお約束の如くこいつが激悪。居合わせた方によると「11のどこか」らしい。そりゃあ悪いよね。A0でなんとかトップアウトして回収。

まったくアップにならないままマラ岩へ向かう。混雑状況次第では「レギュラー」あたりを登りたかったが、やはり待ち人多し。634君に挨拶して姉岩へ上がる。

 

センター試験 5.8

姉岩まで上がってくると流石に乾燥した岩肌。やや日差しが強いが許容範囲。まずはスラブを登る。INO氏が果敢にMOS。なんの問題もなさそう。後に続くが乾いているだけあって快適そのもの。

 

卒業試験 5.10b MOS

IMG_5836

 

そして今日の本命、「卒業試験 5.10b」にトライ。中間部のホールドが下からでは全く検討が付かない。現場処理に賭けてスタート、懸念していた中間部はやはり悪い。なんとか突破するがグレードより遥かに悪く感じた。ホールドを見落としたかもしれない。

INO氏も無事FL。核心部で「これボルダーだったら迷うことなく体上げれるホールドなんだけど…」と唸っていたがアッサリ完登だった。

ライン取りも個性的で面白い一本だった。

 

yamashi 5.10b MOS

上部に移動して、短い垂壁を登る。これと卒業試験が同じグレーディングとは思えない。昔の人は緩傾斜が本当に強かったんだなーと我々は姿勢を正すのであった。

 

ゴールドグリッター 5.10a MOS

IMG_5841

 

更に上部に移動して、右端のスラブを登る。ややボルト間隔の遠いがホールドは良さそう。ラインは複数考えられるが最も無難に見えた右カンテラインを選択。すると最後のクリップがやや遠い。スメアが湿気でずるりと滑りヒヤっと。

滑った本人よりビレイしているINO氏のほうがビビっておいでだった。冷静にダイレクトラインに合流して無事完登。終了点からの景色がきれいだった。

 

Ka-Ching! 5.10a FL

IMG_5847

 

スラブはもういいかなってことでポジティブかつダイナミックな印象のルートを選ぶ。INO氏が快適にMOS。続いて完登、実に快適。

 

ハラペーニョウルトラHOT 5.10d MOS

IMG_5852

 

そしてこの壁最長にして最難の一本に取りつく。中間部の灌木は限定がありそうだったが、下部テラスからダイレクトにあがっても容易に手が届いたのでアンダーをガッツリ保持して上部へ抜ける。

上部でヒールフックからのノーハンドレストを気分よくこなすと、最後は大胆なランナウト。こちらも終了点からの景色が良かった。

INO氏も無事にFLするが、二人の意見では「卒業試験のほうが難しいのでは…」という印象。

時期的に緩傾斜は格段に悪くなるし、ハラペーニョには限定があるのかも知れないが、やはり卒業試験は登り応えのあるルートなんだと思う。あ、もちろんハラペーニョも面白かったです。

 

大きな松の木の下で 5.10a MOS

IMG_5856

 

撤収時間が差し迫る中、ワークアウトの一本。出だしがやや悪かったが、その後は特に問題なし。INO氏は終了点の結びかえを無事修了。

蛇足で「入学試験 5.10c」を触ってしまったがフリクションの低さに左ルンゼからトップアウト。これは涼しくなったらやりましょう。

 

所感

IMG_5848

 

この時期の過ごし方として、5.10台のルートを沢山登るというのは良い選択だと思う。とは言え快適に登れるのは垂壁からだろう(可能であれば前傾壁も登りたいが花崗岩で5.10-5.11の前傾壁は多くない)。スラブに執着すると登れないばかりかラバーの摩耗がハンパない。

正直、こんなにもスラブが豹変するとは思っていなかった。改めて気温と湿度がフリクションに及ぼす影響を痛感したのでありました。