月別アーカイブ: 2020年9月

ベルジュエール 10pitch 5.11b


パラパラと小雨が降り出した。レインウェアはいらないレベルだが、敗退すべきか否かを意識しつつ4年ぶりのチムニーに挟まった。

#6はスッカスカでまったく効かない。もちろんそれは4年前に経験済み。しかし今回はそれに加えてところどころ結露している。

ズリズリ上がって黒ずんだリングボルトにクリップする。一息ついて上部に目をやると、記憶より近い気がした。甘い考えが浮かぶがすぐさま打ち消し、ただひたすら無心で前進しようと覚悟を決めた。


天気予報

今秋の予報はいつもに増して難しい。当初は土日を使ってベルジュエールからビバーグを交えて蒼天攀路をプランニングしていた。だが七転八倒する天気予報に愛想を尽かして日帰りにシュリンク。それでも午後は崩れる予報。一方、土曜日は登れたっぽい。我々の土曜を返してくれ。


植樹祭発 (5:15)

そんなわけで前夜泊で瑞牆入り。オープンビバーグで霧に包まれながら時折訪れる晴れ間からオリオン座を見てまどろむ。3時間程度の仮眠時間。明日は午前中にカタを付けなければ雷雨に巻かれるかもな…とか考えると…朝になってた。

まだ暗いうちに植樹祭を発つ。


First Pitch (6:40)

ゆっくり登って準備してClimb On。4年ぶりのベルジュは寒くは無いけどシットリ。

ハング抜け口まで登ってロワーダウン、これをアップとする想定で登攀開始。

ハング抜けはちょっと悪い。前回はここでスリップフォールした記憶。慎重に手を進める。無事に抜けると、そのままイケそうな気がする。可能ならマスターで登りたい。次の手を出す。

上部核心に入る。前回は初見でムーブがわからず、そこそこ時間を使って抜けた気がする。ただ4年も経つとほぼ何も覚えていない。慎重にムーブを探る。ホールディングを調整して手を伸ばす。なんとしても登りたいと思った。核心を抜け、歓声をあげた。


2-3nd pitch (8:00)

続いてスラブトラバース。このルートの二大恐怖核心。だが、サクサクとスズメちゃんが突破。流水でヌルヌルのスラブもなんのその。ただでさえ重いシングルロープを引きずって3pitch目まで。小面岩が綺麗にみえた。



4th Pitch (9:00)

一番フレンドリーなピッチ。今回も美味しくいただきました。ちなみに今回はアナサジピンクですが、アッパーの厚み不足でフットジャムが痛い。


5th Pitch

ハイライトとなる大フレーク。ガスに巻かれて辺り一面まっしろ。予報どおり天気は下り坂で気持ちが焦る。ススズちゃんが高度を上げていくがクラック内部は流水でびちゃびちゃ。大胆にレイバックでグイグイ上がっていく。メンタルどうなってるんですかね。


6th Pitch

そして冒頭のチムニー。前回はここで30-40分は格闘したような気がする。だが今回の天候でそんな時間はかけられない。少しはチムニーも上手くなってると信じて挑む。

リングボルトにクリップして、#6をセットしようとギアラックから#6を外す。と、なぜか#4が脱落して遥か彼方に落ちていってしまった。こんなことが起こるんだろうか。呆然とするが、なかったことにして目の前のタスクに手中する。

#6を開き気味に決めた後は一切上を見上げず無心でプッシュで前進する。壮絶な耐久系クライミングの幕が開けた。と、思っていた。

すると…
.
..

………
あれ?めっちゃ快適なんだが…

クラックが少しずつ狭まってきて進みづらくなる。両手を逆手でPushしながら膝と足裏と背中でずりあがる。

落ちる気が全くしない…なんということでしょう。

不意にメットに何かが当たった。チョックストーンだった。前回はバテバテで必死の思いで返したマントルをこともなげに返して、チムニーの抜け口に立った。

できすぎた展開で我ながら嘘っぽいのでこの画像を貼っておこうと思った。


8th Pitch (11:00)

一時強まった雨脚も小康状態となり、これを抜ければ完登は目前というクラック。屈曲したラインで先の展開が読みにくいルートだが、抜群の読みで手堅くOS。

「ガバっぽかったのでしっかり片手固めて出したら登れた」みたいなコメントだったけどつくづくスゲー。


Last Pitch (12:20)


ついに最終ピッチ。またしてもパラパラと雨が降り始める。出だしの被ったクラックがやや悪い。雲が流れていくのを視界の隅に捉えながら最後のスラブを抜け、岩頭へ。

4年ぶりに十一面から眺める瑞牆はいたるところで霧が沸き立ち、雲の切れ間から富士山がのぞいていた。


東黒沢〜ナルミズ沢

東黒沢〜ナルミズ沢を遡行してきた。

沢泊を伴う山行は4年ぶり2度目、今回はカサEさんと焚き火&天国の詰めを堪能しようぜってことで、このプランを選択。

天気予報は寸前まではっきりしなかったが、ECMWFでは降水量1mm程度だったので血行。金曜の夜中に東京を出て関越を北上。めっちゃ空いてる。あっという間に水上。

6:40に白毛門登山口を発つ。サクサクとハナゲの滝を登って東黒沢の出会いまで。ちなみに今回もラバーソール。アプローチシューズは持たずにそのまま朝日岳〜白毛門を縦走する計画なのだ。



東黒沢に入ると奥多摩ライクな冴えない渓相。もしかしてこの沢…とか思ったのも束の間、次第に川幅が広がりナメやら小滝が出てきてホッとする。カサEさんも同様の表情。そう、我々は開放的な沢を味わいたいのである。

多段ナメ

ひょんぐり滝


開放的ではないが程よく変化のある渓相が続き、水流は稜線近くまで絶えない。

10時ごろに稜線に出る。思ったよりヤブが濃いがトレースを探しつつウツボギ沢の支沢に入る。

宝川


10:50に支沢から本流に合流。ちょっと下れば宝川との出会い。うってかわって視界が広い。

泳ぎを交えつつゴルジュの滝を超えていく。そうそう、これこれ。こういうのがいいんですよ。


12時前には幕営地に着きそうなペースなので竿を出しながら進む。しかし釣りスキルがザコ&魚影なんて全くない、という揃いも揃った条件下で竿だけが虚しく空を切る。

結局釣果ゼロのまま幕営地へ。適地が見当たらなかったので適当な河原を整地してベースを作る。さて、この沢を知ってる人ならこの記述に疑問を覚えるかもしれないが、それは完全に正しい。なんと我々は大石沢出会いを読み間違え5-10分ほど下流で幕営に入ってしまったのである。

草付き見つからなかったけど割と快適な幕営地になったな、みたいな会話を交わしたが、翌日、上流にて超絶快適な幕営地を目の当たりにした我々は…言葉を失った。

そんなことなど露知らず、今日のために厳選したIPAを呑みながらパエリアを仕込み、ラム肉を河原の石で焼いて過ごす。思えば一番幸せな時間だった。

2日目

大石沢出会


さて、翌日。前述したように早朝から打ちひしがれた我々は気をとりなおして遡行を継続。

ゴルジュ

魚留滝

ゴルジュも渇水のため泳ぐことなく突破。魚留めの滝も右壁を快適に抜ける。少しだが青空も覗き、快調に詰めていく。

まだかすかに青空が望める
源頭の雰囲気
上部は霧のかなた



山頂方面は雲に覆われていそうだが、多少なら青空も望めるだろうと期待しつつ奥の二股へ。たおやかな稜線は上部が完全に霧の向こう。下山に備えて給水と装備を整えて天国の詰めを上がる。


霧の中に溶けていきそうなカサEさんの後ろをゆく。天国っつうより彼岸といった方がふさわしいかもしれない。まあこれはこれで嫌いじゃないんだけど。大烏帽子稜線からは膝〜腰くらいの笹薮を漕ぎながらジャンクションピークまで。結構長かった。


朝日岳あたりで青空が見え始める。湿地が広がる稜線が美しい。そして次第に強くなる日差しの中を白毛門まで。この時期もいいけど秋はもっと綺麗なんだろうな。今度は秋シーズンだな、とか思いつつ白毛門の下山を汗だくで下ってると、やっぱ大石沢BCで周回ルート組むのが正解かもな、とか思うのであった。