月別アーカイブ: 2015年1月

生と死の分岐点

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その仰々しい名前のを聞いたのは去年の暮れだったか。「スパイダーマン 5.12a」に何もできず敗退し、江戸川橋の二階で居並ぶ13クライマーにボヤイてた時だ。

「あんな細いホールド、持つところも立つところもない」「普段のクライミングとカルチャーが違いすぎる」「ムーブとかあるんですか?(どーせ地味ムーブだろ!)」「無駄に怖いっす」

今思い出しても糞ヘタレクライマー発言だったと記憶している。しかし寛大な彼らは、僕が登るべき一本として「生と死の分岐点」を推してくれた。城山はチューブロックの看板ルートだ。凝灰岩特有の程よいフリクションと明確なホールドに導かれ、薄かぶり断崖を登る。左手には「白壁の微瑕」を末端に大きな空が広がり、眼下には大仁の街。行った事のない城山だったが、「これしかない」と思った。

 
 

ムーブ探り

 
年が明けて、ドラパイセンと早速「分岐点」へ行った。UEちゃん、ノブたん、ワイフも一緒だ。初めての城山は、ストレッチスペースがなかったり、落石に神経を使ったり、難点もあるが魅力的な課題に圧倒された。

とりあえず「イスタンブール」「椿の森の中で」「ワイルドX」でアップをこなし、いよいよ「分岐点」へ。先行トライしていたクライマーのドローをお借りしてスタート。もちろんOS狙いである(真顔)。

 
IMG_0902[ドローありがとうございました]

 
スタートとなる大穴ポッケから、アンダーを取って足上げ。ドローが目の前にあるがクリップなんて無理。テキトーに周辺のポッケを掴むがやはり厳しい。早々に行き詰まる。辺り構わずホールドを探した挙句、何も見つからないままパンプによりA0。あっけなくOSトライは幕を閉じた。

すぐさまムーヴ探りに移行するが、遅々として解析が進まない。それもそのはず、アンダーからクリップを含む数手がこのルートの核心だからだ。ホールドはどれもこれも悪い。左奥のガバポッケは12bで登る場合は限定と聞いていたので迷ったが、結局キャッチ。これで12aとなった。しかし已然として厳しい。

その後、A0クリップを連発しトップアウト。ロワーダウンしながらムーブをさらに解析するが「ホントに繋るの、これ?」感はMAX。まったく繋がるイメージを持てずにドラパイセンに「これ、もう1便出しますよね(や、なんつーか、他のに浮気するのも選択肢としてアリじゃないすかね、あ、もちろんモチベーションはバッチリっすよ!自分、全然折れてないっすから)」と伺うと、パイセンはきっぱりと言った「もちろん!」

というわけで長レストを挟んでの2トライ目。「2トライ目はなぜかスムーズになる」の法則に従い、比較的スムーズに核心を抜けようとするが、クリップでもたつき、足置きが雑になりテンション。再度トップアウトしてムーブを固めていく。

他のクライマーのトライを眺めながらムーブを錬りつつ、太陽が傾き始めた頃に3トライ目。まだムーブが固まっていないが体は限界。行けるとこまで〜と思っていたら案の定ヨレヨレ。それでもなんとか核心を抜けてクリップまで進む。しかしもう何も残っておらずテンション。いつまでたってもパンプが回復しなかった。

一方、ドラパイセンは圧倒的完成度で核心を抜け、「あ、これRPするな」と思ったところで惜しくもフォール。さすがに4便目は無理と撤収。核心のパワーとバランスを要求するムーブが想像以上に体幹を削るようだ。帰りはUEちゃんが提案した「クライマーしりとり」に興じているとあっという間に東京。

 
 

生と死の分岐点 RP

 
二週間後、再び城山。今回はUE、ノブに変わりましてMサカ氏。前回同様「ワイルドX」に加え「クロスロード」でアップ。前回より風が少なく暖かい。天候まで味方につけ不安要素は皆無、と浮かれていた。この時までは。

そして気合いの1便目。「一応、ムーブ確認便なんですが、調子が良ければそのまま….」とドラパイセンに言おうとすると「皆まで言うな」という視線に促され、スタート。

アンダーから、危なげなくクリップをこなし、スムーズに核心を抜ける。これはいけるんじゃないかと次のクリップへ。だが決まらない。まごつきながらもなんとかクリップをこなし、手を進める。しかし、パンプした腕が回復せずフォール。

トップアウトして再度ムーブ確認。すると、フォールしたパートが「あれ、こんな悪かったかしら」と豹変。一瞬、気が動転するが心を落ち着けて確認する。やはり悪い。典型的な「気に留めてなかったムーブが後々になって自己主張してくるパターン」だ。だが今回は頼れる兄貴、ドラパイセンが居る。兄貴の的確なアドバイスによって劇的に解決。

ロワーダウンしてドラパイセンとバトンタッチ。相変わらずの安定感で核心を抜け、足が切れるも耐えて繋げる。「あ、これRPするな」と思ったところで惜しくもフォール。奇しくも的確なアドバイスを頂戴したそのパートでだ。とは言え、お互いにムーブは固まっているので二人して長レスト。

ところが昼を過ぎた頃から風が吹き始める。更に太陽が雲に隠れて極寒タイムに突入。しかもこんな日に限ってダウンは洗濯中。

ようやく風が収まってきた頃、ドラパイセンの2トライ目。抜群の安定感で核心を抜け「あ、先越されたな」と思ったところで驚愕のフォール。デジャヴの様な展開に周囲も動揺を隠せない。

そして風が再び強まる中、運命の2トライ目。「寒いんで声出しまくりでいきます」の宣言通りシャウトしながら核心を抜ける。クリップをこなし上部へ、ガバポッケを捉える。しかしまだ気は抜けない。限界近くまでパンプした前腕と、たたらを踏む膝を繊細にマネジメントし、慎重に立ちこんでゆく。最後の核心である右手ポッケへのデッドにさしかかるが、パンプの度合いからデッドは不可能と判断。左手で薄カチをだましながら、細心のバランシームーブで捉える。最後まで集中力をキープしつつ、リップへ。シャウトする必要はないんだけど、とりあえず叫んでおいた。

ダイナミックさと繊細さのバランスが程よく、特に後半のパンプに耐えてスタティックに高度を稼いでいくパートは充実する。おもしろかった。グレードに関しては厳密には5.12aってことになるのかな。ようやく12クライマーを名乗る事ができましたよっと。

 
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[ぼくのシャウトは大仁の町まで響いただろうか]

 
 

グレイシー 5.11c OS

 
Mサカ氏の「ストーンフリー 5.10c」OSを見届けた後、隣の「グレイシー 5.11c」にトライ。ボルト2本の見るからに紐付きボルダーといった印象。ひょっとしてOSできるんじゃね?と取り付いてみるとあっさりOS。気持ちよいスローパーと安心感抜群のガバによるボルダールートでした。正直な所、「ワイルドX 5.10a」や「クロスロード 5.10a」より簡単に感じてしまった。

こいつは間違いなくMサカ氏にはオススメ度ナンバーワンだと猛プッシュ。すると案の定RP。外リード二回目だそうですが流石としか言いようがない。

 
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[二度目とは思えない安定感でストーンフリーを登るMサカ氏]

 
最後にドラパイセンの3トライ目を見守るが、やはりヨレが顕著。残念ながら宿題となった。夕方になると風が止み、昼間より暖かい日差しの中撤収。次は「白壁の微瑕」をやるかな。

Rip And Cheat

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本日も湯河原幕岩。本当は笠間に行きたかったが、雨の影響を鑑みてリスク回避の傾向。

幕山公園でミケちゃんとストレッチをしながら、634君が細Eさんを駅まで迎えにいくのを待機。いい感じにほぐれたところで合流。みんなで正面壁エリアへアプローチ。634君は「スパイダーキッド」を狙いにいったので、ボルダー組(ミケ、1,000、細E、アンジェラ、ぼく)は亀岩でアップ。

 

 

ヒールマン 1級

 
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湯河原には珍しいスッキリした大きなボルダー。リップラインが美しい。左から右へリップを抜けるラインが「ヒールマン 1Q」である。しかし、「あー、またリップトラバースですかー。ちょっと食傷気味」とか言ってるとミケちゃんから「最近わがままばっかじゃないすか!」と痛烈な批判が。猛省したいと存じます。

ミケちゃんと細Eさんが、のっけからヒールマンをばらしにかかるのを横目に、7Qとか8Qとか9Qで遊ぶ。気がつくとヒールマン組が核心まで手を進めているのでシレっと合流。ムーブドロボーとは私の事でございます。しかしみんなが苦戦している核心はどうやら恐怖核心。甘いリップに「怖えー」といって降りてくる展開だ。ここは一つ肝の据わった登りってやつを見せてやるかとファーストコンタクト。

 

 
快適にリップを辿り、いざ核心へ。

 
……

……

……確かに甘い。

 
しかも落ちそうな場所には大岩。

 

 
いや、やってやれない事はないんだけど、このまま一撃してしまってはミケ、細Eの両氏に申し訳が立たない。そう、大人の配慮ってやつだ。ゆったりとマットに降り立つと「うむ、進展があれば呼んでくれたまえよ」と言い残し2Qに転戦。

ほどなくして遂にミケちゃんがRP。どうやら、甘いリップをヒール寄せて固めるのが正解らしい。ハイエナのように再び「ヒールマン」に戻ると、おもむろにスタート。快適にリップを進め、核心の甘いホールドをヒールを寄せてしっかり保持。めでたくRP。

 
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再び2Qに戻り、お次は1,000氏のムーブをハイエナする。1,000氏はサクっとRPしたが、スメアが効く靴じゃないとSDが厳しそう。スカベンジャーは諦めて細Eのガンバ係にチェンジ。苦手な恐怖核心に果敢に挑む細Eさんであったが、時間切れでサンセットへ移動。

 
 

サンセットダディ 1級

 
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あいかわらず不案内なトポに翻弄されつつ、ルートミスしながらなんとかサンセットへ到達。

トポには「正面壁左端からフィックスロープをたどってニューエリアへ」とか書いてあるんだけど、正面壁下部の左端からはニューエリアへは行けないのだ。初めて行く場合は、正面壁にいるクライマーにニューエリアへの踏み跡を尋ねる事を強くおすすめします。ちなみにアプローチはフィックスロープでルンゼを詰める楽しいハイクです。

 
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到着すると、目を奪われたのはサンセットボルダーではなくてイノキ岩のスラブ。非常に美しい。近いうちに必ず登ろうと心に決めて「ファンタジスタ 二段」を記念受験。

しかし当然ファンタ仲間だと思っていたミケちゃん、1,000さんがよもやのダディ宣言。一人寂しくファンタジスタを触る事に。いや、そもそも孤高の存在なのだよ、ファンタジスタとは。

だが、プアなホールドにハードなムーブ。加えてデンジャーなランディングと三重苦に早くも意気消沈。対照的に隣のダディ組は和気あいあいとセッション。それでも何となくムーブがわかってきた頃、ミケちゃんが「サンセットダディ 1Q」をRP。

ミケちゃんをファンタジスタに取り込み、ムーブ解析を進めてると今度は1,000さんがRP。「この流れ、次は俺だな」という<ファンタジスタ的>閃きに導かれ、またしてもシレっと転戦。

初手がやや悪く、いくつかのムーブがありそう。探ってみると、地ジャンでサイファーが超絶気持ちよい事を発見。「このムーブこそあるべき姿ではないか」と力説するがミケちゃんに「ちゃんとスタートしてください」と至極真っ当な意見を頂戴した結果、しっかりスタートを固めてサイファーっぽく初手どり。特に気持ちよくないが、二手目からはポジティブなホールドに導かれそのままRP。

 

 
セッション効果っていうかムーブドロボー甚だしいが、そんな日もあっていいだろう。細Eさんもムーブは固まり後一歩だったがヨレでRPならず。惜しくも宿題となった。しかしこのアプローチをこなして再びトライするかどうか、ダディ愛が問われるところだ。

結構良い時間になったので、貝殻岩に移動して634君と合流。日没までWプロジェクト時々サブウェイで今日のワークアウトは終了。WPは「ゔぉっく病」が確定しました。

Beauty / Beast

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登り初めは湯河原。なんと一年ぶりの湯河原ボルダー。お相手はミケちゃん、マキさん。

8:55に湯河原駅に着くや否や、バス停へとダッシュ。そう、バスの発車時刻は9:00なのだ。ちなみに電車で湯河原行ったの初めてだったけど、時間帯的にクラッシュパッド持って高校生に混じるとか高度な羞恥プレイでした。本当にありがとうございました。

んで、当初は「サブウェイ」でもやるかなーって案配だったけど、ミケちゃんの「Wプロジェクト」へのモチベーションの高さに感化され合流。一年前は離陸もままならなかったスタートは、ミケちゃんをして「野獣にならないとれない」と言わしめるハードムーブ。「ま、去年よりは腰浮くんじゃないの?」という達観したアティチュードでスタートポジションへ。

 

 

すると、なんということでしょう。フワリとRI☆RI☆KUであります。

 

 

ハードだと思っていたアンダー保持と足のツッパリが、いつのまにか「まあ〜これくらいの強度なら」に変貌。とは言えいざ左手で初手のポッケを取りにいこうとするとミートせずフォール。やはり初手取りが核心だ。ビースト・ミケも雄叫びをあげつつ初手を取りにいくがどうも止まらない。

そこで初手取りは一旦リスケして、二手目以降を探る。だが三手目のスローパーも良くない。やや遠く、足が切れる。こりゃあ先が長そうだなーと思っているとビースト・ミケが上部パートのお手本を披露。や、もうね、ビューティー・ミケですよ、ホント。圧倒的完成度の上部パートをみて「そっか、足が残らないなら切ればいいじゃない」と開き直るとあっさり上部が完成。あとは初手を止めるだけとなった。

合間合間に「サブウェイ」のバラしを進めたり、「十朗」を触ったりしながら、延々と初手トライ。しかし止まらない。そういえば瑞牆でミケちゃんと敗退した「ゔぉっく」もこんな展開だった気がする。あの日も、よく晴れた日だった。

幾度のトライの末、止まりそうで止まらない初手に対して「これいける課題な気がするんだよなー」と言った僕に、ミケちゃんはポツリと呟いた。
「それ、ゔぉっく病じゃないすかね」

同病を患う我々は、マキさんのマントルトライに見当違いなアドバイスをひとしきり放言したあと、16時のバスに遅れまいとダッシュしたのでした。

Happy New Year 2015

明けましておめでとうございます。昨年は「大きな怪我なく過ごす」という目標通り、ほぼ平穏にクライミングライフを謳歌することができました。

一方で当初の予定では最大限ボルダー/リードに打ち込むつもりが、沢と山に全力で心を奪われた挙句、秋シーズンにうまく入っていけず、悶々とした日々を過ごす事になりました。

グレードに関しては「二段を登る」という目標はクリアしたけど、「5.12を登る」は達成できず。「二段」に関しても2,3課題は登ってやろうと鼻息荒かったのに最終的には「百足」の一本だけ。数字としては至って地味でしょう。

しかし、海沢のトポにない直瀑の突破やキャンパトラバース、百足との濃密な時間は、クライマー冥利に尽きる最高に充実した登攀でした。広く浅くではなく、狭く深く登ったんじゃないでしょうか。

今年の抱負

登りたい課題は色々あるんだけど、そのためにより計画的に準備しないとヤバいです。ジムでセッションもいいけど、外岩とのタイミングを考えて温存したり、課題ばっかり打たずにキャンパをきっちりこなしたり。幸いジム課題に対して以前より執着心が薄れているので、その辺はうまく行くかも。

また、年末に受講したファンクショナルトレーニングはすごく勉強になったので、各種近代的トレーニングはいろいろと学びたい。文章を読むだけでは理解の限界を如実に感じるのでトレーナーにちゃんと教わろうと思う。

これまでの場当たり対応のままだと四段どころか三段も夢物語なので、問題点を掘り下げて仮説を設定して検証してきます。んで試したトレーニングも感覚値でもいいので評価してフィードバックしていかないとやりっ放しじゃあ、ね。つまり、そのPDCAサイクルをですね、きっちり回していこうかと。ええ、スピード感を持って。

というわけで今年登りたい課題

ボルダー

瑞牆山

  • スラッシュフェイス 二段
  • 癋見 二段
  • 青い日 二段
  • ゔぉっく 初段

湯河原幕岩

  • Wプロジェクト 二段
  • サブウェイ 二段

小川山

  • 忘却の河 二段
  • 大いなる河の流れ 二段

裏御岳

  • 飛雄馬 二段

リード

聖人岩

  • ウェーブ 5.12a

城山

  • 生と死の分岐点 5.12b

山行

  • 奥多摩 海沢谷 枠木滝突破
  • 東ゼン

去年の成果

一応去年のリザルト

ボルダー

瑞牆山

  • 日々の暮らし 1級
  • 普通の日 初段
  • 倶利伽藍 初段
  • 指人形 初段
  • 黒い森 初段
  • フリークエントフライヤーズ 初段
  • 桜餅 2級

湯河原幕岩

  • パイプライン 初段

小川山

  • エイハブ船長 1級

御岳

  • ジュリエット 1級
  • ファットアタッカー 初段
  • 素登り 初段

塩原

  • 後悔カンテ 2級
  • エロンチョ 4級
  • Dライン 3級

聖人岩

  • 百足 二段

リード

聖人岩

  • モモンガキッド 5.11b

瑞牆山

  • ワニワニワニ 5.11b

甲府幕岩

  • サイコモーター 5.11a/b MOS
  • 岳でキョン 5.11c

天王岩

  • ノーリージョイ 5.11b

山行

  • 奥多摩 海沢谷
  • 剱岳 源次郎尾根