まず現状を整理しよう。9月に「黒い森 初段」と「フリークエントフライヤーズ 初段」を登って以来、初段は愚か1級も登れていない。この間、「ゔぉっく」「算術」「エクリプス」「スラッシュフェイス」をトライしてもまったく手が進まず、「スラッシュフェイス」に至っては後退を疑うほどだった。
年内に二段を登ると息巻いたものの、全く不甲斐ない出来がつづいた。このエントリーはそんな長いトンネルを克服したよ!という内容ではなく(そうならいいのにね)、年末のクソ寒い雨が降る土曜日に吐き出す、季節外れな暑苦しい決意だ。
百足 二段
本当は登れた時まで取っておくつもりだったが「百足 二段」の事を書きたい。
140度に及ぶ強傾斜を、石灰岩特有の多彩なホールドを辿り、テクニカルかつダイナミックなムーブを駆使して登る格好良すぎる課題だ。
聖人岩というマイナーな岩場で、僅か4,5本の課題があるだけの小さなボルダーを訪れる人はほとんどいない。しかしそれは、たった一人で課題と向き合うにはこれ以上無い条件だった。
正直に告白すると、「年内二段」への焦燥感から近場の岩場なら何でもよかった。しかし、「二段を登りたい」から「百足を登りたい」に意識が変化するのに時間はかからなかった。それほどまでに百足は濃厚な課題だった。
一日目に「Thulala 初段」のムーブを解決し、二日目に百足のSDスタートからThulalaへのリンクまでを解決した。そして三日目、つなげトライに至るが最後のリップポッケにミートせず敗退。ポッケの確度が低く、より奥のリップに可能性を見いだすが、最後にランジというハードムーブに迷いが残った。だが、ジムで右手中指をパキり、幸か不幸かランジ一択となった。そして四日目、満を持して挑んだ1トライ目はギリギリのランジでリップを叩いた。しかし右手は止まる事無く滑り落ちた。あと2cm、いや1cmだろうか。悔しさのあまり、叫ばずにはいられなかった。その後、30分レストを挟みながらインターバルトライを続けるが、なぜかこれまで悪くなかったカンテの感触が定まらず、四日目の敗退が決定した。
さらっと四日目とか言ってるが、そう四日間「百足」だけを打っているのだ。割と異常かもしれない。初日〜二日目まではムーブの進展も著しく、完登に至らずとも大きな期待感を得て帰路につく事が出来る。しかしその後は、最適化が進んだとは言え、強度の強いムーブを繋げるのは1日に5トライが限界だ。近所とは言え片道二時間を費やし、魂を削る5トライを、なけなしの5トライを、振り絞るため五日目に挑むのか、挑めるのか、帰りのバスの中でテーピングをはがしながら思いが去来した。
しかし、たったひとつの課題を黙々と打ち続けるのが自分にとってクライミングの原点であり、僕は原点回帰を必要としていた。時間が経つにつれ百足のムーブを反芻する事が多くなり、気がつけば越生の天気予報ばかり眺めている。そして違和感を感じたカンテの原因を究明すべくPhotoShopで穴が開くほどホールディングを見直した。するとどうだ、安定感のあったトライではホールディングが浅く、セミアーケだった。親指を添えアーケで深くホールディングすればするほど、安定感を失っていた。
このあまりにも繊細なソリューションが、五日目の福音足り得るか、それは分からない。しかしひとつ確かな事は、僕は五日目もなけなしの5トライを握りしめて百足に会いに行くだろう。五日目で足りなければ、六日目に望みを託すだけだ。六日目が駄目なら七日目。
変態?本当にありがとうございました。