午前9時、我々は稜線に達した。そこは予想通り暴風が吹き荒れる過酷な環境であった。隊員達の表情はゴーグルに隠され読み取れないが、頂上へのアタックに燃えていただろう。だが私は決断せねばならなかった。そう、敗退を。
『涸沢カールはカレー味』より抜粋
つーわけで命からがら赤岳文三郎尾根から敗退してきた次第であります。
当初のプランは地蔵尾根-横岳-硫黄岳-赤岳鉱泉だったが、強風が予想されるので前日に行者-赤岳のピストンに変更。しかしテントを叩く風の音を聞くほどにそれすらも無理っぽい気配に。当日の行動開始時には「稜線までが限界だろう」という諦めにも似た確信を得る。
とりあえず行者までアプローチするが眠い。前日3時間睡眠だもんね、至極当然だ。睡眠スキルが足りないのだ。のび太に見習わねば。
南沢をすぎたあたりの小沢が完全にFreeze。アイゼン装着してプチアイスクライミングしようかと考えるが眠いのでパス。
行者に到着すると阿弥陀、赤岳は当然ガスの彼方。とりあえず写真でもとカメラを取り出すが、「カードがエラーです」と理解に苦しむ返答。結局カメラは美濃戸に戻るまで復活しなかった。何しに来たんだコイツは。
文三郎尾根を進み森林限界を超える前にアイゼン装着。森林限界を出ると風が強まる。こんな天気でも他にも登山者はいてちょっと安心。高度を上げて行くほど風が強まり、視界も100m弱と行ったところ。
本日は愛機「sum’tec」のシェイクダウン。登攀要素は無いが、石突きブッ刺しまくりで快調。
そして遂に稜線に。尋常ではない爆風が吹き付ける。厳冬期の赤城湖以来の風速。MJの『スムースクリミナル」が再現可能なレベルである。地図上では後40分で赤岳山頂だが、多分行けば片道切符間違い無し。とりあえず耐風姿勢の真似などをしてみてそそくさと下山を開始。こうして我々の敗退劇は幕を閉じた。
登頂できなかった事は残念なんだけど、的確な判断を下せたと思う(過酷過ぎて迷う要素皆無)。プランの変更、敗退地点の予測なども妥当だったんじゃないかな。敗退という結果ではあるが、経験値の上げることが出来たのでそれなりに充実。次は何処行くかなー。