カテゴリー別アーカイブ: トラッド

海金剛

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上部城塞基部で残りの2ピッチを見上げながらカサE氏が言った。

「まあ上まで抜けれないんならここで降りてもいいかな」
「あとちょっとなのに…”メルー”とおなじ展開や…」M坂氏が続ける。
「え…僕まだ観てないんですが…」まさかのネタバレに絶句する俺氏。

すこし強まった風の中、我々は撤退を決断した。

 

小春日和

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というわけで「海金剛 スーパーレイン 7ピッチ 5.10a」に行ってきました。メンバーは上記三名に加えてスズメちゃん。

とにかく風がハンパないとの噂だったがこの日はほぼ無風。青空もひろがりポカポカ陽気、駿河湾を挟んで富士山を望みつつ雲見キャンプ場入り。なんだよ春じゃねーか。

はやる気持ちを抑えつつアプローチを行くが早くもM坂氏がドーパミン全開。よくわかんないけど解放されちゃったようです。何からだよ。

海岸線へ懸垂で降り少し岩稜を登るとドカーンと大岩壁。周囲には巨大なボルダーがゴロゴロ。興奮を抑えきれずうっかりルートファインディングミス。ちょっとだけ彷徨った後、明瞭な踏み跡を発見。

 

First Pitch 5.7

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カサE氏 撮影

 
すでに10時を回ろうという時間帯、てっきり先行パーティは遥か上部と思いきや最後の一組がリード中。この時点で後の展開が予想されたが装備を整えてスズメ&僕ペアが先行。

久しぶりのカムセットを確かめながら凹角を抜ける。グラつくチョックストーンとか灌木へのランナーセットが懐かしい感じだ。先行パーティに追いついてしまったので一段下の灌木でピッチを切る。

 

2nd Pitch 5.8

緊張を強いられるトラバースをスズメちゃんが安定の突破。凹角にナッツとやらをセットしていたがナッツ童貞の俺氏、一瞬戸惑う。冷静を装いつつ回収するが今度はトラバースが怖い。スズメちゃんはダイレクトに突破していたが上部のガバから巻いて抜ける。

 

3rd Pitch 5.10a

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前座が終わっていよいよ本番。暑くなってきたので半袖で登攀開始。

左上気味に上がると露出感のあるアンダークラック。#0.3と#0.4を決めて足を上げていく。クラックが終わるとガバがお出迎え。ワンポイントかもしんないけど痺れた。だが楽しい。

先行パーティからビレイポイントを一本拝借して灌木と組み合わせて支点構築。間隔を空けるためフォローはしばし待ってもらう。半袖に風がちょっと寒い。先行パーティのお姉さんと雑談しながら待機。初めてのマルチだと仰ってたが中々チャレンジングである。(リスキーと言い換えるべきか迷う)

 

4th Pitch 5.10a

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続いて見た目最高のワイドクラック。スズメちゃんの目が完全にワイドに見入っている。ワイド直下のアンダーフレークがやや悪そうだがここでも安定したムーブ選択で突破。

カサE氏が上がってきたので一緒にワイドに突入するスズメちゃんを観察。ビレイポイントからだとプロテクション状況がよくわからずランナウトしてるようにも見えたがしっかりとカムは取られていた。

フォローでもアンダーフレークはちょっと悪い。またしてもナッツが出現したが経験者たる余裕をみせて(回収だけ)、慌てることなく回収。ワイドも簡単ではなく改めてスズメちゃんの実力を思い知った。

 

5th Pitch 5.10a

多段ハングとでも言うべきラインは3-5ピッチの中で最もフェイス的に感じた。乗っこす前にカムを多めに決め、乗っこした後にバッククリーンという戦術をとる。カムの節約になるしロープの流れも良くなる。もちろん乗っこし後に信頼出来るプロテクションを取れた場合に限る。

ついでにナッツでも決めてやるぜってことでいざパッシブプロテクション。バチ効きであります。もうナッツなんて怖くないぜ。

上部城塞基部に出ると下降パーティと先行パーティがいて大にぎわい。ビレイポイントは堆積している岩にメインロープで構築。風が強まる中フォローを迎える。

 

6th Pitch 5.7

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そして冒頭のやり取りに至る。トップアウトは諦めていたが、1ピッチだけロープを伸ばし最終ピッチを写真に納め下降開始。カサE&M坂ペアは城塞基部から先行して下降。

エーデルリッドのダブルロープはしなやかすぎるので何度も絡まったが、スズメちゃんおすすめの左右振り分けスリング固定方式にすると一気に解決。やっぱロープワークの基礎は面倒でも丁寧にやるのが肝要ですね。

キャンプ場への帰着時間が迫っていたのでカサE&M坂ペアに先に戻ってもらい後に続く。夕焼けで赤く染まる太平洋を背に海金剛を後にした。

 

所感

脆くて怖くて風が強い、とばかり思ってた海金剛ですが結果的には程よくスパイシーって印象でした。

天気に関しては非常に運が良かったし、年明けに行われた開拓者による整備の恩恵抜きには語れないが、しっかりと気持ちの準備が出来たことが充実の登攀を支えたと思っています。

登攀のイメージやアイデア、状況のシュミレーションや選択肢の整理など、「自分で判断して登るための準備」を実践できたと思ってます。(登山や沢では当たり前に意識していた筈なんだけど)

これからも自分の判断とかアイデアを大切にして登っていきたいな、と。つーわけで今回最大の判断ポイントとなった「敗退」に関しては「戦略的撤退」と呼ばせていただきます。んで、次こそはピークを踏んでやるぜ。

秋のマルチピッチ

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瑞牆の名作マルチピッチ「ベルジュエール 5.11b 10p」に行ってきた。

「行ってきた」という言葉から察せられる通り、オンサイトやレッドポイントではなくあくまでもトップアウトである。瑞牆の厳しさを全身で味わってきたんだぜ。

 

最低気温零度

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当初は10月頭を予定していたがずれ込んで10月も3週目。すると天気予報では最低気温0度、午前8時でも4度とかいきなりの冬模様。厳しい登攀になることを予想しながら備えた。

蓋を開けてみるとさすがに0度ってことはなく、5-6度だったが依然として寒いことに変わりはない。アプローチで暖まった体も登攀準備を整えているとすぐに冷えてくる。1ピッチ目の出だしを往復してとりあえずのアップとする。

そして1ピッチ目5.11bに取りつく。果敢にもオンサイト狙いである。気合い十分だったが中間部でしょうもないスリップをやらかしてフォール。寒さでフットホールドを捉えきれなかった。そのままフリーで抜けるが核心部と思われる部分でさらにフォール。結局2テンションでトップアウト。

 

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トラッドスタート

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2ピッチ目5.10aからトラッドが始まる。とはいえショボくれたピトンを頼りにスラブを進む痺れるピッチ。気温はまだ低く肝を冷やしながらS兄貴が抜ける。続いて3ピッチ目は潅木の生えた歩き混じりの5.7。

 

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そして4ピッチ目5.9は最後にスッパリと綺麗なクラック。一見簡単そうに見えるが若干斜めに進むクラックと最後のシンハンドに苦戦。落ちるかと思ったがなんとかオンサイトに成功。

 

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白クマのコルを挟んで5ピッチ目5.10a、大フレークをS兄貴が大胆なランナウトで抜けていく。フォローは回収が厄介。

そして悪名高い5.8チムニー。この数ヶ月、このピッチが放つ圧迫感を常に感じながら過ごした。「やばいと思ったら早めに諦めます」と告げ#6を持ってチムニーへ向かう。下から見上げるがチョックストーンでよく分からず、中間部にあるというリングボルトも見えない。

意を決してチョックストーンへ上がると意外にも快適、リングボルトも見つけることができた。だがもちろん錆びている。黒ずんだリングボルトにクリップしずり上がる。

チムニーは少しづつ狭くなり身動きが取れなくなっていく。ロープの流れが悪くなるがチムニー奥に#6を決めてT字スタックやらチキンウィングやら、本で読んだだけのジャミングを試す。もちろん全く効いてこない。

すでに疲労困憊、荒い呼吸をなんとか整え分速数センチで這いずりあがる。メットが引っかかって首を回すのも一苦労。脱水で足が攣りそうになるのを必死で誤魔化す。もっとチムニーの練習をしておくんだったと心の底から反省した頃にようやく上部チョックストーンに到達。ガバだが激しい疲労感から必死でマントル。いやー奮闘した。

 

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完全に出し切ったがまだ終わらない。ブッシュ帯を経て8ピッチ目5.10bは先行きが見えない左上クラック。脱水気味の体にザックが重くのしかかるが見上げると青空がどこまでも高い。最後は岩稜歩きを経て5.8をバテバテで超える。

 

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終了点から眺める大ヤスリ岩がなんつーかH.R.ギーガーのクリーチャーみたいだった。

 

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簡単には登らせてくれないとわかってはいたが予想を上回るハードワークで、植樹祭を6時に出発して帰着は17時。クライミングで11時間行動なんて記憶にない。

さて、次はもちろんレッドポイントを狙いに行くのだが色々と改善点も見えた。装備に関してはもう少しギアを減らそう。クイックドローとマイクロカムは減らせるはず。反対に水は一人750mあったほうがいい。終了点は把握できたので以外と時間のかかったピッチ間の連携は短縮出来るだろう。今回は花崗岩からやや離れていた(最後に瑞牆に来たのが一ヶ月以上前)ので、次回はもう少しこまめに花崗岩を登ってから挑みたい。とはいえその辺は冷え込み同様、お天気次第なんだよな。

いつかサラリとレッドポイントできるように励みたいと思います。

藐姑射岩

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夏の間はクラック修行に全力で勤しむ予定だったが気がつけば9月も半ば。最後にクラックに行ったのはいつだったか…思えば短い夏だった。

もっともこれからがベストシーズンってやつで、岩の状態も身体の状態も上向いてきている。去年は良い入り方ができたので今年もそうありたい。

 

森林浴 5.8 MOS

そんなわけで2ヶ月ぶりに小川山でクラッククライミング。藐姑射岩というオシャレな響きの岩場にやってきた。パーティー内にリピーターが居るかと思いきや全員初見。四人仲良く百岩片手にルートを探す。

上部、下部を一通り偵察した後、「冬のいざない 5.10b」がある下部にベースを固める。取り合えずアップで「森林浴 5.8」を登る。久しぶりのNPルートだがホールドが良いので安定してプロテクションを取っていく。印象的なフレークはやや期待ハズレだったが、快適に完登。M坂氏と交代。

 

冬のいざない 1ピッチ目 5.9 MOS

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続いて左隣りの5.9に取りつく。下部のダブルクラックをオブザベーション通りにカムを決め抜ける。上部がやや被り気味でムーブも意外性があって面白い。少々複雑なクラックラインがいい味を出している。

右へトラバースして上部を見上げると美しいクラックが目に飛び込む。スズメちゃん、カサE氏がトライしている2ピッチ目、5.10bである。これは早急に合流せねばと心に決める。

 

img_6351[かっちょいいライン]

 

大和なでしこ5.8 MOS

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中段テラスに上がり順番を待つあいだに凹角ルートを登る。下部でまごついたがよく見れば側壁にガバを発見。クラックとなるとクラックにばかりホールドを求めてしまう。もうちょっと肩の力を抜いて登りたい。上部にやや脆い部分もあるが概ね快適。M坂氏もリード。
 
 

img_6354[扇岩の裏]

 

冬のいざない 2ピッチ目 5.10b 敗退

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そして件の「冬のいざない」核心ピッチ。先行トライを見ているので不要なギアを減らしてスタート。ハングまではスムーズ。このまま行けるんじゃないのとスケベ心が顔をのぞかせる。#0.75をタイトフィットさせ十分にレストを入れる。

そして肚をくくって核心へ。するとあま〜いフレアハンド。実に激甘。たまらず引き返す。もう一度確認して再度クラックへ手を伸ばす。しかし極まらない。周辺をまさぐるがどうにも極らない。もう一度引き返し再度アタック、まったく同じ展開。

行っては戻りを4,5回繰り返し、このままじゃあラチがあかないと覚悟を決める。今一度カムを確認、#0.75は申し分なく効いている。30cm下には#2もしっかり効いている。カムが外れることはほぼないだろう。墜落距離も長くない。しかし腰下にカムがある状態での落下は未経験、緊張感が高まる。

しばし呼吸を整えフレアーハンドにジャミング、やはり甘い。そのままフットジャムをねじ込みさらに両足でフットジャム。すると今までにない安定感が生まれ、ついに右手を送ることに成功。しかし次のホールドが絶望的に遠い。苦し紛れで突っ込んだフィストは何の解決にもならずフォール。結局カムエイドでトップアウト。

今にして思えば、両足フットジャムから立ち込むのが正解だったかもしれない。「もっとハンドジャムが上手くならなければ」としきりに言ってたけど足をしっかり極めれば手も極るんじゃないかな。試してないけどそんな気がする(そうであってくれ!)。

 

img_6357[ヘキセンを決めたくてしょうがない人]

 

冬景色 5.7 MOS

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ここからはワークアウトモードでM坂氏とバチ効きハンドを堪能。

 

発熱の街角 5.10b TO

さらに「もう一本だけ」と日が暮れかける中、スラブに取りつく。しかしガスが降りてきたこともあり痛恨のスリップ、OSを逃す。そのまま上部のレイバックを抜けトップアウト。コンディションは悪いけど楽しい。

そしてM坂氏と交代するとなんと雨。お互いにあせらず細心の注意を払って回収。ヘッデン下山となった。

所感

5.9以下のクラックで一日遊んだが色々と気付くことがあった。

まずは落ち着いてカムセットが出来るようになったこと。アイスクライミングのスクリューセットより落ち着いて作業できる。

そして、フットジャム。やっぱ足と腰ですね。コイツが極らないと手も極らない。こういうのを巷では基礎と呼ぶのだろう。

最後にシューズ。前回、足の痛みでカサブランカに敗退したことから、痛くないシューズを求めてやまなかった。そして今回、モカシムでのフットジャムを試したところ全く痛くないことを確認。やはり攻めた靴でフットジャムはよくないんだよ(今更)。まさに目から鱗が…

というわけで朧げながらクラックに必要な要素が分かってきた気がする。次は不動沢に行きたいなー。

 

img_6346[アプローチで見つけた分岐岩]

ジャミングドラゴンへの道

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小川山にクラッククライミングに行った。

昨年5月以来、1年2ヶ月ぶり。この間、城ヶ崎クラックや瑞牆マルチ、その他トラッドルートをコツコツと登りそれなりに手応えを感じていた。ここらでひとつ、現在の実力を測ってみるのも悪くない。あの時とは違う圧倒的に成長した姿をカサブランカに見せつけてやるぜ、そう思って妹岩を訪れた。

 

愛情物語 5.8 MOS

とりあえずアップで最も簡単なNPルートを登る。ジャミング要素は皆無。快適にカムセットを確認して完登。

 

龍の子太郎 5.9 RP

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続いて昨年トップロープで登っているタツノコにトライ。前回はハンドジャム初挑戦につきかなり強引な登りになった記憶がある。最後のマントルも無理やりなムーブだった。

まずは出だしに#1を決めて乗り込んでいく。クラック内はやや湿っているがジャムの効きはよい。冷静にプロテクションをとって高度を上げる。テラス手前でレイバックへ移行し乗っ越す。灌木をつないで終了点まで。

NP特有の緊張感こそあれどあっさり完登。ひとまず成長を実感する。

 

カサブランカ TO

続いて今日の大ボス「カサブランカ 5.10a」にトライする。こちらも昨年トップロープで登っている。核心部の「バチ効きのハンドジャム」とやらがまったく効かず、激痛のフットジャムに泣かされズタボロになったのはいい思い出である。

下部でのグラウンドフォールに注意と何かで呼んだので気合いを入れて取りつく。

最下部のやや甘いクラックを慎重に抜けバンド手前で#3を決め乗っ越す。既に足の疲労感を感じるが無視。カムをセットして十分に休み、次のバンドを目指してジャムを決める。不安定な体勢でカムを選ぼうとするが何かに引っかかってギアラックが回らない。なんとかセットをするが今度はロープがフットジャムに噛み込んでクリップに難渋。

半端なく消耗したところで核心直下のバンドに到達、#4を決めてマントルを返す。見上げると視線の先にはフレアしたクラック以外にホールドは皆無。じっくり休みたいところだが消耗が激しく十分な回復は見込めない。意を決してフットジャムをねじ込み気合いで立ち込む。しかし激しく足が痛い。数手進めたところで不安定な体勢からカムをセットするがメンタル、フィジカルともに限界となりテンション。

その後、A0混じりでセットしながらとりあえず上まで抜け、ロワーダウン後にトップロープでムーブのおさらい。昼寝を挟んでラストトライに挑む。核心まではスムースに進んだが核心でフットジャムをねじ込んだ瞬間に自分の体が終わってることを実感、数手進めてフォール。

まだまだ修行が足りなかった。

 

届け手のひら TO

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完全にヨレているがここからのスラブが面白いところ。定番の駄目押しスラブとして「届け手のひら 5.10c」に取り付く。

もちろんOS狙いで虎視眈々とムーブを読んで高度を上げていく。しかし中間部の大穴でムーブを間違えフォール。そのままムーブを探って核心へ。ここでも狙ったホールドが甘くあっさりフォール。最後は指力マックスから立ち込んでデッド。そういえば笠間の石器人スラブも同じようなムーブで登った気がする。もうちょっとスラブらしく足技で登りたい。

ま、次回いつになるんでしょうな…

 

フットジャム修行

というわけでタツノコには通用したがカサブランカには見事に跳ね返された。

この一年あまり、プロテクションとハンドジャムはそれなりの数をこなしてたきたがフットジャムに関してはほぼゼロだった。前者の成長を垣間見れた一方で後者の未熟さを痛感することになったのは、つまりそういうことだろう。

S兄貴曰く「俺はカサブランカよりタツノコのほうが登りにくいよ」とのことだが、個人的には「ワングレードの差とは到底思えない!」って感じだ。

何が辛いってフットジャムの痛さ。技術的な未熟さは当然だが、シューズも見直したほうがよさそう。今回使ったシューズはフェイス用サイズ感なので指の曲がりが深い。フットジャムをねじ込むと親の仇のごとく足指の第一関節が圧迫される。

アナサジレースの値段とにらめっこしながら、まだまだドラゴンは夢のまた夢、タツノコが精一杯だと痛感するのだった。

大面岩 左稜線

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梅雨にはいっちまった。毎年のことだが実にアンニュイ。

当初の予定では「ベルジュエール 5.11b」のトライを目論んでいたが、天気予報を何度もチェックした結果「大面岩 左稜線 5.10c」へと変更することとなった。

とは言え、内心ほっとしたんですが…

ベルジュをガッツリ楽しむにはもうちょっと場数を踏みたいって思いもありまして。

 

謎のボルトラダー

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午前5時、植樹祭から瑞牆山を見上げると上部は完全にガスの中。この期に及んで燻っていたベルジュへの未練は完全に鎮火し、粛々とアプローチを開始。通い慣れたパノラマコースを辿る。

「ベシミ」を打ち込んだ昨シーズン、カンマンボロンの大ハングを見上げなが「いつか必ずあの大岩壁を登ろう」と強く思った。

もちろん今日の目的は大面岩である。だが、意外な展開からカンマンボロン登攀のチャンスは巡ってきた。ま、俗にいうアプローチミスってヤツですがね。

大面岩基部に到着してもガスは晴れず、視界は一時50m以下。岩壁の全体像は把握しづらく、カンマンボロンと大面岩は予想よりも隣接していた。そして接続部にはチョックストーンが挟まり、これをトポに記載されているチョックストーンと誤認。結果、カンマンボロン右稜線を大面岩左稜線と誤認することとなる。

 
IMG_3607[接続部のチョックストーン]

 
勘違いしたままカンマンボロン右稜線に乗り上げると古びたボルトが上部へ続いている。相変わらずガスが濃く位置関係を把握出来ない。とりあえず登攀を開始するが、人気ルートにしては風化が激しい。何よりもプロテクションがクッソ錆びていてフリーで抜けるにはリスクが高すぎる。A0で抜け灌木でピッチを切り作戦会議。

取りつきに失敗したのは間違いないってことで、ガスの切れ間から本来のラインっぽいのを探す。そして下降を決断。

 
IMG_3609[風化しまくり]

 

スラブ 5.8

IMG_3618[左稜線2P目取付]

 
仕切りなおして目星を付けたラインを探しに行く。フィックスロープやトレースをトポと照らし合わせながら程なく2P目5.8の取りつきを発見。一同胸を撫で下ろす。

9:40頃にS兄貴リードで「大面岩 左稜線 5.10c」の登攀が始まる。スラブを抜けるとルンゼ状3級、ここでリード交代。いつの間にやらガスは晴れていた。

 
IMG_3622[2P目出だしから上部を望む]

 

スラブ 5.10a

出だしが分かりにくかったがトポと照らし合わせて木登りからテラスへ這い上がる。基本的にほぼ歩き。ズルズルとロープを引きずりながら前進。とにかく流れが悪い。最後に5mほどの個性的なトラバースをこなしてピッチを切る。残置ハーケンにプロテクションを取ったら一段と流れが悪化。ロープの引き上げが過去最大級に大変になる。

 

カンテ 5.10c

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そして数字上の核心パート。S兄貴が「バランス悪いけど面白いなー」といいつつ抜けて行く。カンテから入ってスラブへ左上する面白いピッチ。岩も硬く純粋にフリークライミングが楽しめる。そのまま次も繋げられそうだが「独り占めするわけにはいかないからね」と交代。あざーす!

 

カンテ 5.10b

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んで本日のハイライト。出だしにボルダーを乗っ越して露出感抜群のカンテを登る。難しくはないが丁寧にホールドを探して高度を上げていく。前ピッチ同様、岩が硬く快適なフリークライミング。

 

スラブ 5.10a

つづいてトラバースから直上。トポ通り出だしのトラバースが恐ろしい。上部はデリケートなスラブ。灌木帯でピッチを切り、最終ピッチとなるチムニー〜OWへと歩く。

 

OW 5.10a

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順当に考えてS兄貴パートなのだが「やってみてもいいんじゃね?」と仰るので何を血迷ったか俺氏突撃。

チムニー内はジットリと湿っぽい。頭上には小さな空。まるで幽閉されたかのよう。

遥か頭上の空を目指してズリズリと這い上がる。バック&フットで高度を上げていくと次第に幅が狭くなりチムニーからOWへ。ヒール&トウ、チキンウイングなど聞きかじったムーブでは太刀打ちできない。全身全霊を込めて次のリングボルト(もちろん錆びてる)まで前進してドローをセット、力尽きてテンション。

その後、心折れそうになるも兄貴のアドバイスでヨレヨレになりつつ何とかフリーで突破。水分不足と疲労困憊で終了点作業中に何度も右手が攣った。

 

完登

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OW以降は簡単な岩稜歩きで頂上台座まで。ピーク左手のボルダーから乗っ越して下降地点へ。この日は空いていたのか他のパーティは二組だけ。先行パーティの下降をのんびり待ちながら絶景を堪能した。

コルから取りつきへ戻る道中にもカッコいい岩壁やらボルダーが無数にあって大興奮。瑞牆山のポテンシャルは底知れないなーと再確認した。

 
IMG_3672[佐久間の塔下部の洞窟]

 

恋するスラブ

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この世には二種類の人間がいる。

スラブを愛する者と、スラブから愛される者だ。

この日、黒岩を訪れたのは低傾斜界の重鎮 – UEchang aka Srabista -。いうまでもなく後者に分類される人物である。彼を案内するのは「キメイラ 5.12a」。天高くそびえるスラブは天国へ続く階段のようだ。

 

梅雨目前の転戦

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当初の予定は甲府幕岩だった。榛名黒岩はすでにシーズンオフだと思っていたのだ。しかし前日に山梨方面の予報は雨へと崩れる。反対に群馬方面の予報は好転。偶然とは思えない展開に翻弄されつつ、最終的に榛名黒岩を選択。

翌朝、小雨が舞う関越道を不安げに北上し高崎で高速を降りる。すると乾いたアスファルトに雲の切れ間からは太陽。この男、どんだけスラブに愛されてるんだよ。

しかし、思わぬアクシデントが発生。落石防止工事で林道が一部通行止め。40分程歩くこととなった。なんすか?ツンデレってやつですか?

 

無名 5.10d FL

予定外のハイキングをこなして9時頃現場に到着。東壁の「無名 5.10d」でアップ開始。リード慣れしていないUEchangが果敢にマスタートライ。ホールドを探すのに苦労しながら高度を上げて行く。終盤は黒山名物の埃まみれホールドに面喰らいながらも無事MOS。続いてFL、回収する。

 

ボランティア 5.11a MOS

交代して隣りのラインを登る。出だしのクラックにフィンガージャムがバチ効きでテラスまで快適に上がる。じっくりとムーブを錬り、ダイレクトラインで抜ける。

そしてUEchangと交代、こちらもテラス以降のムーブをじっくりと錬るがホールドの見当が違ったかフォール。体力温存の為に回収する。

 

舞姫 5.11b 2RP

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そしてもう一本イレブン前半をトライ。オブザベーションでは上部核心と予想したが実際には下部核心。序盤の外傾カチを保持しながらも足がスリップしてフォール。ムーブを探ろうかと考えたがロワーダウンしてグラウンドアップに拘ってみる。

ほぼレストなしで再トライ。外傾カチを保持して手を進めるがまたしても悪い。更に進めて何とか突破。上部は予想外に素直だった。安定して5.11bをMOSできるようになるにはもう少しだけ経験値と集中力を高める必要がありそう。

 

キメイラ逢瀬

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そしてお待ちかねスラビスタ on キメイラ。

生い茂った木の葉に岩頭が隠され、春先より高く遠く感じる。「うわっ!? こんなに!? 高くない!?」と興奮を隠せないスラビスタ。面喰らったような物言いとは裏腹に、当然のようにノーヒントでマスタートライを始める。

やや高い1ピン目を丁寧に掛けて順調に2ピン目へ。そして核心へ入って行く。しかし安山岩が不慣れなためかホールドがなかなか見つからない。とりあえず3ピン目をクリップして更にムーブを探る。試行錯誤の結果3ピン目付近へ突入、核心へ向かう。

しかし既に長時間のムーブ探りでヨレが見え始める。更にその先は微妙なホールディングが続く。流石に初見では突破出来ずフォール。その後、あーだこーだとホールディングやらムーブを試行錯誤。下からもそれとなく「俺の時はその足を〜」とかアドバイスを送るが帰宅後に動画を確認すると全く別のムーブ。とんだ妨害工作であった。

とは言え3トライ目で核心は解決。しかし体力的に繋げるのは厳しく、次回へ持ち越しとなった。ちょっとスラブからの愛が重かったんじゃないかな。

 

ラーコンナ 5.10b MOS

キメイラの右隣に位置するスラブラインだが、ルンゼ状クラックにプロテクションを取りながら登った。出だしはチムニーからハンドサイズになり、最後は適当に抜ける。終了点は絶景。

 

サルバドール 5.13a 初トライ

そして本日の高難度強傾斜課題。そういえば真面目にアッパーグレードをトライするのは久しぶりな気がする。とりあえず「5.13aってどんなのもんなの?」を確かめるためスタート。

威圧的な強傾斜カンテで1ピン目までは緊張感が高い。必要以上に力が入るがとにかくクリップ、ほっと一息してテンション。しかし地上からは持てそうに見えていたホールドはことごとく極悪。カンテ側のホールドも遠かったり甘かったり。探りながら2ピン目まで進む。

高度が上がるにつれ傾斜は緩くなってくるがホールドは悪くなる一方。ヒールを駆使し3ピン目まで進む。地上からでは2ピン目までが核心と踏んでいたが一向に強度は下がらない。

強傾斜のハングドックでヨレるのを感じながら試行錯誤してムーブを探って行く。遂に3ピン目を付近を突破し、後はリップを取れば終わりだっと思っているとまたしても「地上からは持てそうに見えたんですけど」なホールド。これが13aってやつなんですかね。

フルリーチで直接リップをたたけば一瞬だけ保持できたが突破する体力は残っていなかった。時間のことも考えて今日はここまでとした。

 

大スラブ中央クラック 5.9 2P

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〆は2ピッチのマルチ。既に5時をまわっていたが夏至の恩恵を最大限に生かすべく登攀開始。事前情報がなくカムの必要数も不明だったが隣接ルートから回収も可能と踏む。

1ピッチ目はボルトルートを快適に辿る。2ピッチ目は#1,#3,#.5あたりをセットし、最後はグサグサに錆びたRCCボルトにクリップ。終了点が目前に見えているが最後のワンムーブを見つけるのに苦労して抜ける。部分的に痺れたが充実のクライミングだった。

 

所感

というわけで今日もスポートルートに始まり、トラッド、マルチピッチ、限界グレードトライと多彩なクライミングを楽しめました。

最近は一日で5本以上初見のルートを登るっていうのが楽しくてしょうがないけど、一方で限界グレードより高難度をトライする機会を伺ってもいました。そんなわけで梅雨入り前にその機会を得れたことは非常にうれしい。

「サルバドール」はずっと気になっていたルートだが、触ってみた印象は基本的にポジティブ。全てのムーブを解決したわけではなく、むしろ今回詰めなかった部分こそが最大核心な気もするけどそれでも期待と希望は大きい。

しっかり夏の間に準備して秋にがんばりましょう。

調和の幻想

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声にだして読みたいルート名十選の常連である「調和の幻想 5P 5.10a」を登った。

ハンドからOWに至る各種サイズのクラック、カンテにディエードル、フェイスにスラブ、そして木登りまで。長いジャムセクションこそないが変化に富んだ濃厚なクライミングを味わえました。

濃厚すぎて翌日は食傷気味(つまり筋肉痛ってこと)。

 

1P 5.9+ 6:45

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5時に植樹祭広場を出発して6時ごろ到着。じゃんけん大会でS兄貴が奇数ピッチ、私が偶数ピッチと相成る。装備をチェックして6時45分にクライムオン。

7時前から荷物を背負ってのクライミグは想像よりきつい。岩も冷たく体がうまく動かない。こんなんで大丈夫かとちょっと不安を感じながらのスタート。

 

2P 5.8 7:10

2p目、リードの出番がやってきた。不安をかき消すようにスタートするが出だしがワイド気味で大変。なんとか乗っ越してプロテクションをとる。朝露の影響かフリクションが悪く手も足も座りが悪い。

ビビりながらも枯れ木のテラスに抜ける。

 

3P 5.9 7:40

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すこしづつ気温が上昇してきた3p目。ルートファインディングが必要なピッチを着実な読みで抜けていく。フリクションもよくなってきたようだ。

 

4P 5.10a 8:20

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数字上の核心ピッチ。出だしの木登りをみた瞬間「あ、これやったことありますよ」と得意ムーブ発言。意気揚々とチムニー登りでクラック下部へ。

蛇行したラインをたどりクラック中間部でプロテクションセット。そこからが悪くゼーハーと喘ぎながら上がっていく。カムに交えて心もとない灌木にもランナーをとる。なんとかOS。

 

5P 5.9 9:10

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そして本当の意味での核心ピッチ。フレアしたクラックが口を開けて待っている。兄貴がカムをずらしながらジワジワと上がっていくが非常にキツそう。上部のOWもこれまた。

フォローはゴボウ確定と思っているとプロテクションの必要がないのでレイバックで快適。しかしOWだけはA0となった。

 

IMG_5313[フレアしたクラックで#6をセット]

 

完登 10:30

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岩頭に抜けると日差しが眩しく、いつの間にか太陽が高い。懸垂下降3回で地上に降りると11:20、大休止を入れる。

 

継続登攀

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本日の大一番は無事に登ることができたが、目標とする「ベルジュエール」は2倍の10ピッチを擁する。ここからが本番とばかりに継続登攀を開始。疲労感を無視して「錦秋カナトコルート 5.10a」へ向かう。ついでにベルジュエールの取りつきと燕返しのハングを確認してカナトコへ。

カナトコ取りつき付近は炎天下。本チャンっぽい1p目を兄貴。上部の風化が著しく「調和の幻想」とのギャップに戸惑う。

2p目は私。小さめのカムで奮闘しながら上部のクラックに到達するがスローピー。ガクブルの足を踏ん張るがエッジングできずフォール。くやしー。

合計7ピッチを登ったところで行動終了。10ピッチには満たないが途中の下降や継続へのアプローチなど諸々の行程を勘案すると「ベルジュエール」は射程圏内じゃないだろうか。

大面岩方面のピークに立つクライマーを望みながら一服する。

 

IMG_5353[おれもあそこに立ちたい]

 

懸垂下降一回で地上まで。その後撤収してガチャ分けするが疲労感が半端なく、あらゆる動作が平時の80%くらい。のろのろと余韻に浸りながら下山した。

 

IMG_5362[振り返ればモアイフェイス]

 

高嶺の湯で疲れた足をほぐしながら、なんか懐かしい疲労感だなーとおもったら縦走山行のそれに似ていることに気がついた。城山のスポートマルチでは感じることはなかったが、トラッドマルチは「登山」をした感覚が色濃い。

スポートマルチもトラッドマルチも基本的にフリークライミング主体のアクティビティだが、後者の持つ圧倒的な「山を登った感」はどう説明すればいいんだろう。瑞牆山というロケーションがそうさせるのだろうか。

うまく言語化ができないが、子どもの頃に憧れた「ロッククライミング」という行為に最も近いのは多分、これだ。

 

太刀岡山三種競技

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連休初日は指皮温存のために安山岩の岩場をセレクト。行き先は太刀岡山。ほんとうは榛名黒岩で「キメイラ 5.12a」を登りたかったんだけどお天気には勝てない。

パーティーはソーメイとワイフとUEchangとワタシの4名構成。チョーナンは部活だ。

 

ヴァレンタイン・イヴ 5.10b/c RP

小山ロックに上がると一番乗り。やや気温が低い。でもって壁も濡れている。とりあえずアップで簡単そうなやつに取り付くがフリクションが悪くスメアが効かない。岩も冷たくてホールドが持てない。でもって濡れてる(二度目)。

結局テンション入れてトップアウト。アップにならないのでリピートしてRPしておく。

 

おさわがせしました 5.11d/12a RP

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UEchangとワイフのビレイを挟んで「おさわがせしました 5.11d/12a」の思い出し便。前回トライしたのはちょうど一年前。初手と核心の強度が高かったのをよく覚えている。

あいかわらず初手が悪いがまあなんとか。そして核心へ。錆び付いたアンカーを見て一年前の記憶が蘇ってくる。ここではあまり落ちたくない。しかしムーブの強度が…と思ってると前回気がつかなかったフットホールドを発見。劇的にムーブが楽になる。

その後は記憶通りのクリップ姿勢からトラバース。上部のマントルも危なげなくこなしてトップアウト。

次のトライで完登できちゃうなーと思ってると核心後のトラバースでまさかのスリップ。ダッセー。次々トライでRP。

一年前はあんなに難しく感じたルートがサクッと登れたことは嬉しかった。フィジカルよりムーブの解析やリードクライミングへの慣れなどテクニック面が向上したように思う。少しはクライミングがうまくなったに違いない。(スリップしたけどな)

 

 

太刀岡山右岩稜 4p目

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大一番が終わったので付近を探索。鋏岩下部のスカイラインに露出感サイコーのボルトラインを発見。大興奮してUEchangとトップ&フォローで登る。調べた感じでは「太刀岡山右岩稜 4p目」かと思う。今度は取り付きからマルチピッチで登りたい。

 

ボルダー開拓

IMG_5017[キッズ課題]

 

右岩稜4P目の裏はルンゼ状となり手頃なボルダーがある。下地は落ち葉で天然のクラッシュパッド。ソーメイ、UEchangと初登大会。7級くらいのスラブ課題を登った。

 
IMG_5031[木漏れ日が美しい]

 

一通り遊んでUEchangの「ハッピーバースデー 5.11a」をビレイ。さすがの強さでスイスイと高度を上げていく。あまりのスムースさに完登を確信したが最後の2,3手で無念のフォール。テラスでもう少し休めば間違いなく登っただろう。実に惜しかったが、こういう戦略性がルートクライミングの面白さだよな。

 

義理チョコ 5.9 MOS

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UEchangがレストしてる間に、NP課題の「義理チョコ 5.9」にトライ。短いがハンドサイズのクラックだ。仕入れたばかりのキャメロットを嬉々としてセットする。

ジャミングで抜けようと足掻くが上部がハンドとフィストの中間くらいでうまく決まらない。結局スラブ面のポッケを使いつつトップアウト。充実したのでもう一回登る。

 

ハッピーバースデー 5.11a 再登

UEchangが2トライ目をきっちりRPしたので、ワークアウトがてらに再登。改めて登ってみていいルートだと再確認。

前回登ったのはなんと3年ぶり。初めてここを訪れた時だ。時間の流れは早い。あの頃はワンデイの中でスポートルートとトラッドルートとボルダー開拓を同時開催しようなんて発想はなかった。そりゃあ、チョーナンも大きくなるわけだ。

意識高い系クラック

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日本が世界に誇るグローバルなシークリフ、城ヶ崎にてクラックリードデビューしてきました。

フェイスに逃げることなく、ジャミングとプロテクションスキルのキャッチアップに勤しみ、NPフォールのイニシエーションも済ませ、遂にトップロープとリードのギャズムを越えることに成功、感無量であります。

これでクラッククライマーを名乗っても許されるでしょうか…あ、とはいえギア類はS兄貴とH氏の全面的バックアップによるものなので経済的依存度は100%。両氏には全力でリスペクトであります。

 

カラス 5.9+ FL

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前回は爆風吹き荒れる「あかね浜」だったが、今回はポカポカ陽気の「オーシャン」。前回同様トップロープでアップと思いきやS兄貴が「リードでいいんじゃね?」とフランクにサジェッションするのでアップもなしに人生初クラックリードトライ。

ジャミングでクラックとがっぷり四つ…と思ったがそもそもクラックムーブは一部分だけ。ドキドキしたが無事フラッシュ達成。

 

ボクサー 5.10a FL

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お次は隣りのフィストサイズにトライ。フレアしたクラックに乏しいフットホールド。予想通りクラックに到達すると足が決まらない。フィストの効きが甘く、動きが制限される。次のジャムを極めたいが手順が悪いのか体勢が悪いのか、どうにも体が上がらない。

結局、クラックのエッジをガストンで耐えてガバ取り。そして完登。

フェイスのホールドには頼らなかったが、果たしてクラックムーブと呼べるのか…。5.10aのクラックを5.10aのクラックとして登れなければ瑞牆のクラックマルチは登れないだろう。

完登はうれしいが、更なる高みを目指すため今一度ロードマップを確認するのであった。

 
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ミストレル 5.9+

先ほどの反省を活かすべく、がっつりジャミング指向を肝に銘じてトライ。

下部パートを抜けテラスから核心部の凹角クラックへ。予想より傾斜があり悪い。足も決まらず左フェイスの魅力的なカチホールドがこれでもかと誘惑してくる。何度もカチに手が伸びそうになるが、その度に「いや待て待て、そうじゃないんだっ」と自制をかける。

いったいなんのプレイだろうか。

だが結局どうにもならずカチへ。ところが煮え切らない意識高い系が災いしてか、あっさりフォール。キャメロット#1だけが優しく私を包容してくれた。

その後、あーでもないこーでもないとムーブを探るが一向に解決せず。クラックムーブのボキャブラリー不足が露呈することとなった。しかし、ブレイクスルーは唐突にやってくるもの。期待値最底辺のフットホールドに足をあげると、あら不思議。

手も足もバチ効きであります。

ムーブ探りの影響でヨレヨレだったが、なんとか粘ってトップアウト。充実の登攀であった。

 

恐竜クラック 5.9

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最後に「しりいだし」に移動して恐竜クラック。

ここでもS兄貴は「OSやってみたいなら止めないよ?一生に一度のOS権だからね。俺は何にも言えね〜」とアグレッシブな姿勢を崩さない。入念にオブザベーションした結果、番手の大きいカムが使えると判断し、望むところとOSトライ。

下部に#5をキメて、左上パート出だしに#2をセット。徐々に広がるクラックをたどり#5をキメる。フットジャムとのコンビネーションで抜けようとするが、ここでクラックの洗礼、「カムが邪魔でジャミングスペースがない」に陥る。

何とか体をくねらせ核心に到達、#4をキメる。更にもうひとつ#4をねじ込むがそこからのムーブが謎。クラックムーブに拘らず強引に抜けようかと思いもしたが既に疲労はピーク。足掻くだけ足掻いてフォール。

#4は涼しい顔で墜落を止めてくれた。

その後、粘ってはみたがNPでハンドドッグは気持ちがフワついて集中出来ず。一旦トップアウトし、トップロープで解決。流石に体力が限界のためRPは諦めて回収に入った。だがここでロープスタック。頭上に月が輝きだす頃になんとかA0で登り返して回収に成功。ヒヤヒヤだった。

というわけで非常に充実感の高いクラッククライミングを堪能しましたが、とにかくクラックリードは楽しい。もうトップロープには戻れないと実感したのであります。

 

Crack Storm

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南岸低気圧の影響で10mの爆風が吹き荒れる城ヶ崎へ。ミッシェルガンエレファントを聞きながら夜明け前の東名高速をゆく。昨日降った雪は跡形もなく、小田原で日の出を睨む。抜けるような青空の下で木の枝が大きく揺れる。閑散とした駐車場からあかね浜へ、胸元でカムがカチカチと音をたてた。

 

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高波が岩に砕けるこの世の果てのシークリフは貸し切り。強烈な日差しと爆風が吹きすさぶ中、トップロープでアップを開始。かじかむ指をクラックにねじ込み「イソギク 5.7」、ほぐれない体をきしませ「ツワブキ 5.10a」。ときおり爆風がやわらぐが、すぐまた吹き荒れる。体は一向に暖まらない。

 

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レストを挟むと体がこわばるので連登。「ラッキー・ストーン 5.10a」の前傾クラックに苦戦するもトップロープで抜ける。同じくトップロープで「カーム・フライデー 5.10b」のレイバックを強引に突破、上部は快適。

 

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凪の瞬間を捉え、わずかばかりのレストを入れる。カムのレクチャーを受け、体が冷える前に再び壁に戻る。ついさっき登った「ラッキー・ストーン 5.10a」はカムを極めようとした途端、表情を変える。カムは決まっているが、ハンドジャムをねじ込むスペースがない。そしてテンション。数回テンションを繰り返しトップアウト。予想していたが、やはりプロテクションは難しい。良いイメージがまだ持てない。

 

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こういうときは同ルートをリピート。前傾クラックの傾斜を殺しカムを極める。ハンドジャムのスペースもある。さらにもう一本カムを極め、ハングを越える。なかなか良いイメージでトップアウト。日が傾き始める中、「カーム・フライデー 5.10b」も悪くないイメージで抜け本日は終了。

 

Stats

  • イソギク 5.7 (Tr)
  • ツワブキ 5.10a (Tr)
  • ラッキー・ストーン 5.10a (Tr)
  • カーム・フライデー 5.10b (Tr)
  • ラッキー・ストーン 5.10a (疑似リード)
  • ラッキー・ストーン 5.10a (疑似リード)
  • カーム・フライデー 5.10b (疑似リード)

S木兄貴、トップロープ並びにカム、ギアなど本当にありがとうございました。しっかし寒かったー。