秋のマルチピッチ

img_6746

 

瑞牆の名作マルチピッチ「ベルジュエール 5.11b 10p」に行ってきた。

「行ってきた」という言葉から察せられる通り、オンサイトやレッドポイントではなくあくまでもトップアウトである。瑞牆の厳しさを全身で味わってきたんだぜ。

 

最低気温零度

img_6704

 

当初は10月頭を予定していたがずれ込んで10月も3週目。すると天気予報では最低気温0度、午前8時でも4度とかいきなりの冬模様。厳しい登攀になることを予想しながら備えた。

蓋を開けてみるとさすがに0度ってことはなく、5-6度だったが依然として寒いことに変わりはない。アプローチで暖まった体も登攀準備を整えているとすぐに冷えてくる。1ピッチ目の出だしを往復してとりあえずのアップとする。

そして1ピッチ目5.11bに取りつく。果敢にもオンサイト狙いである。気合い十分だったが中間部でしょうもないスリップをやらかしてフォール。寒さでフットホールドを捉えきれなかった。そのままフリーで抜けるが核心部と思われる部分でさらにフォール。結局2テンションでトップアウト。

 

img_6705

 

トラッドスタート

img_6706

 

2ピッチ目5.10aからトラッドが始まる。とはいえショボくれたピトンを頼りにスラブを進む痺れるピッチ。気温はまだ低く肝を冷やしながらS兄貴が抜ける。続いて3ピッチ目は潅木の生えた歩き混じりの5.7。

 

img_6717

 

そして4ピッチ目5.9は最後にスッパリと綺麗なクラック。一見簡単そうに見えるが若干斜めに進むクラックと最後のシンハンドに苦戦。落ちるかと思ったがなんとかオンサイトに成功。

 

img_6730

 

白クマのコルを挟んで5ピッチ目5.10a、大フレークをS兄貴が大胆なランナウトで抜けていく。フォローは回収が厄介。

そして悪名高い5.8チムニー。この数ヶ月、このピッチが放つ圧迫感を常に感じながら過ごした。「やばいと思ったら早めに諦めます」と告げ#6を持ってチムニーへ向かう。下から見上げるがチョックストーンでよく分からず、中間部にあるというリングボルトも見えない。

意を決してチョックストーンへ上がると意外にも快適、リングボルトも見つけることができた。だがもちろん錆びている。黒ずんだリングボルトにクリップしずり上がる。

チムニーは少しづつ狭くなり身動きが取れなくなっていく。ロープの流れが悪くなるがチムニー奥に#6を決めてT字スタックやらチキンウィングやら、本で読んだだけのジャミングを試す。もちろん全く効いてこない。

すでに疲労困憊、荒い呼吸をなんとか整え分速数センチで這いずりあがる。メットが引っかかって首を回すのも一苦労。脱水で足が攣りそうになるのを必死で誤魔化す。もっとチムニーの練習をしておくんだったと心の底から反省した頃にようやく上部チョックストーンに到達。ガバだが激しい疲労感から必死でマントル。いやー奮闘した。

 

img_6745

 

完全に出し切ったがまだ終わらない。ブッシュ帯を経て8ピッチ目5.10bは先行きが見えない左上クラック。脱水気味の体にザックが重くのしかかるが見上げると青空がどこまでも高い。最後は岩稜歩きを経て5.8をバテバテで超える。

 

img_6748

 

終了点から眺める大ヤスリ岩がなんつーかH.R.ギーガーのクリーチャーみたいだった。

 

img_6750

 

簡単には登らせてくれないとわかってはいたが予想を上回るハードワークで、植樹祭を6時に出発して帰着は17時。クライミングで11時間行動なんて記憶にない。

さて、次はもちろんレッドポイントを狙いに行くのだが色々と改善点も見えた。装備に関してはもう少しギアを減らそう。クイックドローとマイクロカムは減らせるはず。反対に水は一人750mあったほうがいい。終了点は把握できたので以外と時間のかかったピッチ間の連携は短縮出来るだろう。今回は花崗岩からやや離れていた(最後に瑞牆に来たのが一ヶ月以上前)ので、次回はもう少しこまめに花崗岩を登ってから挑みたい。とはいえその辺は冷え込み同様、お天気次第なんだよな。

いつかサラリとレッドポイントできるように励みたいと思います。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です