海金剛

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上部城塞基部で残りの2ピッチを見上げながらカサE氏が言った。

「まあ上まで抜けれないんならここで降りてもいいかな」
「あとちょっとなのに…”メルー”とおなじ展開や…」M坂氏が続ける。
「え…僕まだ観てないんですが…」まさかのネタバレに絶句する俺氏。

すこし強まった風の中、我々は撤退を決断した。

 

小春日和

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というわけで「海金剛 スーパーレイン 7ピッチ 5.10a」に行ってきました。メンバーは上記三名に加えてスズメちゃん。

とにかく風がハンパないとの噂だったがこの日はほぼ無風。青空もひろがりポカポカ陽気、駿河湾を挟んで富士山を望みつつ雲見キャンプ場入り。なんだよ春じゃねーか。

はやる気持ちを抑えつつアプローチを行くが早くもM坂氏がドーパミン全開。よくわかんないけど解放されちゃったようです。何からだよ。

海岸線へ懸垂で降り少し岩稜を登るとドカーンと大岩壁。周囲には巨大なボルダーがゴロゴロ。興奮を抑えきれずうっかりルートファインディングミス。ちょっとだけ彷徨った後、明瞭な踏み跡を発見。

 

First Pitch 5.7

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カサE氏 撮影

 
すでに10時を回ろうという時間帯、てっきり先行パーティは遥か上部と思いきや最後の一組がリード中。この時点で後の展開が予想されたが装備を整えてスズメ&僕ペアが先行。

久しぶりのカムセットを確かめながら凹角を抜ける。グラつくチョックストーンとか灌木へのランナーセットが懐かしい感じだ。先行パーティに追いついてしまったので一段下の灌木でピッチを切る。

 

2nd Pitch 5.8

緊張を強いられるトラバースをスズメちゃんが安定の突破。凹角にナッツとやらをセットしていたがナッツ童貞の俺氏、一瞬戸惑う。冷静を装いつつ回収するが今度はトラバースが怖い。スズメちゃんはダイレクトに突破していたが上部のガバから巻いて抜ける。

 

3rd Pitch 5.10a

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前座が終わっていよいよ本番。暑くなってきたので半袖で登攀開始。

左上気味に上がると露出感のあるアンダークラック。#0.3と#0.4を決めて足を上げていく。クラックが終わるとガバがお出迎え。ワンポイントかもしんないけど痺れた。だが楽しい。

先行パーティからビレイポイントを一本拝借して灌木と組み合わせて支点構築。間隔を空けるためフォローはしばし待ってもらう。半袖に風がちょっと寒い。先行パーティのお姉さんと雑談しながら待機。初めてのマルチだと仰ってたが中々チャレンジングである。(リスキーと言い換えるべきか迷う)

 

4th Pitch 5.10a

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続いて見た目最高のワイドクラック。スズメちゃんの目が完全にワイドに見入っている。ワイド直下のアンダーフレークがやや悪そうだがここでも安定したムーブ選択で突破。

カサE氏が上がってきたので一緒にワイドに突入するスズメちゃんを観察。ビレイポイントからだとプロテクション状況がよくわからずランナウトしてるようにも見えたがしっかりとカムは取られていた。

フォローでもアンダーフレークはちょっと悪い。またしてもナッツが出現したが経験者たる余裕をみせて(回収だけ)、慌てることなく回収。ワイドも簡単ではなく改めてスズメちゃんの実力を思い知った。

 

5th Pitch 5.10a

多段ハングとでも言うべきラインは3-5ピッチの中で最もフェイス的に感じた。乗っこす前にカムを多めに決め、乗っこした後にバッククリーンという戦術をとる。カムの節約になるしロープの流れも良くなる。もちろん乗っこし後に信頼出来るプロテクションを取れた場合に限る。

ついでにナッツでも決めてやるぜってことでいざパッシブプロテクション。バチ効きであります。もうナッツなんて怖くないぜ。

上部城塞基部に出ると下降パーティと先行パーティがいて大にぎわい。ビレイポイントは堆積している岩にメインロープで構築。風が強まる中フォローを迎える。

 

6th Pitch 5.7

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そして冒頭のやり取りに至る。トップアウトは諦めていたが、1ピッチだけロープを伸ばし最終ピッチを写真に納め下降開始。カサE&M坂ペアは城塞基部から先行して下降。

エーデルリッドのダブルロープはしなやかすぎるので何度も絡まったが、スズメちゃんおすすめの左右振り分けスリング固定方式にすると一気に解決。やっぱロープワークの基礎は面倒でも丁寧にやるのが肝要ですね。

キャンプ場への帰着時間が迫っていたのでカサE&M坂ペアに先に戻ってもらい後に続く。夕焼けで赤く染まる太平洋を背に海金剛を後にした。

 

所感

脆くて怖くて風が強い、とばかり思ってた海金剛ですが結果的には程よくスパイシーって印象でした。

天気に関しては非常に運が良かったし、年明けに行われた開拓者による整備の恩恵抜きには語れないが、しっかりと気持ちの準備が出来たことが充実の登攀を支えたと思っています。

登攀のイメージやアイデア、状況のシュミレーションや選択肢の整理など、「自分で判断して登るための準備」を実践できたと思ってます。(登山や沢では当たり前に意識していた筈なんだけど)

これからも自分の判断とかアイデアを大切にして登っていきたいな、と。つーわけで今回最大の判断ポイントとなった「敗退」に関しては「戦略的撤退」と呼ばせていただきます。んで、次こそはピークを踏んでやるぜ。


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