梅雨にはいっちまった。毎年のことだが実にアンニュイ。
当初の予定では「ベルジュエール 5.11b」のトライを目論んでいたが、天気予報を何度もチェックした結果「大面岩 左稜線 5.10c」へと変更することとなった。
とは言え、内心ほっとしたんですが…
ベルジュをガッツリ楽しむにはもうちょっと場数を踏みたいって思いもありまして。
謎のボルトラダー
午前5時、植樹祭から瑞牆山を見上げると上部は完全にガスの中。この期に及んで燻っていたベルジュへの未練は完全に鎮火し、粛々とアプローチを開始。通い慣れたパノラマコースを辿る。
「ベシミ」を打ち込んだ昨シーズン、カンマンボロンの大ハングを見上げなが「いつか必ずあの大岩壁を登ろう」と強く思った。
もちろん今日の目的は大面岩である。だが、意外な展開からカンマンボロン登攀のチャンスは巡ってきた。ま、俗にいうアプローチミスってヤツですがね。
大面岩基部に到着してもガスは晴れず、視界は一時50m以下。岩壁の全体像は把握しづらく、カンマンボロンと大面岩は予想よりも隣接していた。そして接続部にはチョックストーンが挟まり、これをトポに記載されているチョックストーンと誤認。結果、カンマンボロン右稜線を大面岩左稜線と誤認することとなる。
勘違いしたままカンマンボロン右稜線に乗り上げると古びたボルトが上部へ続いている。相変わらずガスが濃く位置関係を把握出来ない。とりあえず登攀を開始するが、人気ルートにしては風化が激しい。何よりもプロテクションがクッソ錆びていてフリーで抜けるにはリスクが高すぎる。A0で抜け灌木でピッチを切り作戦会議。
取りつきに失敗したのは間違いないってことで、ガスの切れ間から本来のラインっぽいのを探す。そして下降を決断。
スラブ 5.8
仕切りなおして目星を付けたラインを探しに行く。フィックスロープやトレースをトポと照らし合わせながら程なく2P目5.8の取りつきを発見。一同胸を撫で下ろす。
9:40頃にS兄貴リードで「大面岩 左稜線 5.10c」の登攀が始まる。スラブを抜けるとルンゼ状3級、ここでリード交代。いつの間にやらガスは晴れていた。
スラブ 5.10a
出だしが分かりにくかったがトポと照らし合わせて木登りからテラスへ這い上がる。基本的にほぼ歩き。ズルズルとロープを引きずりながら前進。とにかく流れが悪い。最後に5mほどの個性的なトラバースをこなしてピッチを切る。残置ハーケンにプロテクションを取ったら一段と流れが悪化。ロープの引き上げが過去最大級に大変になる。
カンテ 5.10c
そして数字上の核心パート。S兄貴が「バランス悪いけど面白いなー」といいつつ抜けて行く。カンテから入ってスラブへ左上する面白いピッチ。岩も硬く純粋にフリークライミングが楽しめる。そのまま次も繋げられそうだが「独り占めするわけにはいかないからね」と交代。あざーす!
カンテ 5.10b
んで本日のハイライト。出だしにボルダーを乗っ越して露出感抜群のカンテを登る。難しくはないが丁寧にホールドを探して高度を上げていく。前ピッチ同様、岩が硬く快適なフリークライミング。
スラブ 5.10a
つづいてトラバースから直上。トポ通り出だしのトラバースが恐ろしい。上部はデリケートなスラブ。灌木帯でピッチを切り、最終ピッチとなるチムニー〜OWへと歩く。
OW 5.10a
順当に考えてS兄貴パートなのだが「やってみてもいいんじゃね?」と仰るので何を血迷ったか俺氏突撃。
チムニー内はジットリと湿っぽい。頭上には小さな空。まるで幽閉されたかのよう。
遥か頭上の空を目指してズリズリと這い上がる。バック&フットで高度を上げていくと次第に幅が狭くなりチムニーからOWへ。ヒール&トウ、チキンウイングなど聞きかじったムーブでは太刀打ちできない。全身全霊を込めて次のリングボルト(もちろん錆びてる)まで前進してドローをセット、力尽きてテンション。
その後、心折れそうになるも兄貴のアドバイスでヨレヨレになりつつ何とかフリーで突破。水分不足と疲労困憊で終了点作業中に何度も右手が攣った。
完登
OW以降は簡単な岩稜歩きで頂上台座まで。ピーク左手のボルダーから乗っ越して下降地点へ。この日は空いていたのか他のパーティは二組だけ。先行パーティの下降をのんびり待ちながら絶景を堪能した。
コルから取りつきへ戻る道中にもカッコいい岩壁やらボルダーが無数にあって大興奮。瑞牆山のポテンシャルは底知れないなーと再確認した。