月別アーカイブ: 2017年2月

Wild Wide Wall

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原始的かつ野性味あふれるクラックを登りたい、という極めて個人的欲求にお付合いいただきましてカサE氏、スズメちゃん、SAT6師匠と花崗岩クラック。

前夜は路面凍結と未知のルートへの不安と期待が交錯してなかなか寝付けなったが、当日はスーパー快晴につきアプローチもルートファイディングも問題無かった。(ごくわずかですが日陰のコーナーに路面凍結あり)

 

アップ

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ナナメクラックまで上がってアップ開始。併せてSAT6師匠にカムの使い方とか注意事項をざっくり説明、低い岩でカムセットと回収の練習を行う。なかなか珍しい光景だ。

その後、以前ボルダーで登ったハイボールをスズメちゃんとトップ&フォローで登る。カムが効くと期待したクラックはビミョーな塩梅でスズメちゃんが痺れつつ突破、後に続く。危険度はボルダーと大差ないかも。

 

IMG_7344[テーピング大会]

 

IMG_7350[プロテクション練習にうってつけ]

 

白鳥正宗 5.10a

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で本日お目当ての一本。じゃんけん大会でカサE氏からスタート。正面からだとわからないが真横から水準器を使って撮影すると立派な前傾壁。本当に5.10aなのかよと思ってると荒い息を吐きながらカサEが見事にOS。一応OS狙いのためトライは見ないつもりだったが写真撮ったりガンバ送ったりでチラチラ見てしまった。

代わって取り付いてみるとなるほど前傾壁である。凹角にスメアを張れば傾斜は逃がせるがアームバーを深く決めたりするとモロに傾斜を食らう。この辺のサジ加減が面白い。岩肌がかつてないほど荒々しくさっそく前腕から流血。肩とメットを凹角にスメアして高度を上げる。フットジャムはバチ効き。快適にマントルをこなして無事OS。ムーブ的にも長さ的にもボルダーのようなルートだった。いつかハイボルダーとして登ってみたい。スズメちゃんも抜群の安定感で一撃。師匠も初クラックなのに危なげないハンドジャムでトップアウト。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[photo by スズメちゃん]

 

一同気分よく移動する。だがこの後、苦渋のワイドが待ち受けていようとは知る由もなかった。

 

イエローゲート 5.10?

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100mほど上がってこれまた立派なワイドクラック。

個人的にはトライすべきか否か大いに悩んでいたが「このワイドをみて触りもしないなんて、ずいぶん奥手なのね」ってオーラを感じたので謹んでオンサイト権を謙譲。歓喜に打ち震えるスズメちゃんのOSトライ開始。スタート付近は浮き石が堆積しててのっけから厳しい予感。そしてワイド入り口はハング。てっきりワイドに入るまでは容易と思いきやハング越えが難題。レイバックかジャミングか思い切るのが難しい。

こいつは厳しそうだなーと眺めつつ周辺の岩場探索。セクシーなフィンガークラックを見つける。たぶん「晩秋の交差点」だろう。

 

IMG_7360[美しいフィンガークラック]

 

待ってる間にSAT6師匠と東面のラインを見いだして登る。こちらもスタートはワイルド系、ぼろぼろと粒子が欠ける。一段上がって太い灌木の間を縫って進む。イワタケのこびり付いた岩に#4を決めてレイバックからマントル。先程のフィンガークラックまでとした。体感5.7くらい。

戻ってくるとスズメちゃん、カサE氏ともにワイド突入ならず「レイバックで入るのが正解と思うけど落ちたらテラスががが…」とのこと。

出来るだけ穏便に済ませようと「さ、移動ですかね」的な発言をするが「がみけんムーブを見せて」とか「クラックというよりフェイスムーブだから」とか押し切られて気がつけばハング下。

プロテクションをチェックしてホールドを確かめる。ふむ、レイバックはありそうだ。意を決してガストンからレイバックに移行して高度を稼ぐ。すると一気に身体が入る位置まで。ムーブは大正解だったようだ。しかしレイバックからクラックに入るムーブが悪い。強引に腕をスタックさせて身体をねじ込む。プロテクションは既に足下。あな恐ろしや。

入ってみるとスクイーズチムニー。開き気味の#6を腰の辺りに決める。次のプロテクションは数メートル先までない。この手のワイドを確実に登れるようになりたいもんだ、と思いつつ回収もまた壮絶だった。

 

16990502_2228322354059720_717309303_o[photo by hirayama satoshi]

 

末端壁

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ワイドを堪能したあとは末端壁へ。途中で目の覚めるような美しいフィンガークラックを発見。官能的なレベルで端正。これをボルダーとして登ったら最高だろうな。

ワークアウトは5.7のワイド。快適。カンテを挟んで右側のフィンガークラックも登る。こちらも面白い。上部は土が堆積してるので灌木を掴んでマントル。5.9くらいかな?

 

IMG_7380[ワイド 5.7]

 

IMG_7387[フィンガー 5.9]

 

最後にスクイーズチムニー5.8。終了点から「情熱の薔薇」を眺めて本日の締めくくりとした。トラッド楽しすぎる。

 

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石灰岩トラッドソロ

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週末は何をトチ狂ったかカムを持って河又。それもコウモリ岩ではなく雷エリア。ちなみにソロ。ボルダーも登るつもりだが下地良さげなのでノーマット。一体どこに向かってるのか自分でもよくわからないが、身軽なのは快適。

 

卍岩

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アプローチはコウモリ岩左端から尾根を登って回りこむ。思っていた通りそれなりに急登。ピンクテープが続くが途中で尾根筋を外れ急斜面を右に下っていく。後から思えば蛇岩上部へのトレースだろう。とりあえず初見なので踏み跡の濃い稜線を行き、コルに降りると卍岩。

名前は見たまんま。昔のマンガでこういう岩に妖怪が封じられてる、みたいな展開を読んだことがあるな。テキトーに遊んで最後に水平ガバからリップへランジするラインにトライ。簡単なランジだけどリップがギザギザなので確実に止めないと指皮が持っていかれます。

 

 

小泉エリア

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気持ちよくランジを決めたところで、トラッドソロ。小泉エリア最上部の簡単そうなルンゼを登る。アルパイングレードで3−4級くらいじゃないかな。終了点がかなり怪しい。

左となりには魅力的なコーナークラック。5.9とされてるので今日は眺めるだけ。

 

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さらに左にはダブルコルネ。これも魅力的。

 

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雷岩

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続いて明るく開けた雷岩。わりと立派なルーフボルダーがある。左下からルーフ下部をトラバースして右ガバまで、そこから直上。

最近トラバース系には食指が向かなかったけどやってみると面白い。ヒールフックやらピンチフックが出てきてジムナスティック全開。直上部のムーブも楽しい。奥多摩、奥武蔵でも有数の面白さじゃないだろうか。ハング部のダイレクトラインは一本指ランジかな?可能性あるんだろうか…

 

蛇岩

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最後に蛇岩。日当たりが悪いという話だったが、あまり気にならず、むしろ明るいとさえ感じた、水平方向に広がっている感じがなんとなく甲府幕岩に似てる。ラインも最も豊富に感じた。強傾斜、前傾カンテ、クラックなどなど。ただし全体的に粉っぽい。

 

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とりあえず右端の95度くらいのフィンガークラックに取り付く。出だしに#0.5を決め離陸、次のプロテクションを探るが見当たらない。一旦クライムダウンして練り直す。左のボルト付近のホールドを探るがこちらも甘い。もう一度クライムダウン。結局二手目から右カンテに逃げて#0.4を決める。あとはルンゼをたどってまたしても怪しい終了点まで。

カンテに逃げたとはいえ2本目のカムを決めるまでは面白いムーブもあって楽しい。ナッツの方が相性いいかも。

 

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最後にワンポイントなハンドサイズを登る。クラックにカムを決めてると目にゴミが入る始末。今日イチで粉っぽいラインだった。

 

IMG_7319[強傾斜]

 

IMG_7316[ワイドクラック]

 

下山は往路とは違って直下降ぎみに降りてみた。コウモリ岩経由より楽かと期待したけどあんまり変わんないかも。

湯河原トラッド

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当初のプランでは「子持山 獅子岩マルチ」を「残置無視トラッド」でメイクするっつー鼻息荒い妄想を繰り広げておりましたがよく考えりゃ2月。加えて寒波到来で伊香保方面はバッチリ降雪。

転戦先は城ヶ崎か湯河原が挙がったわけですが梅が見たいよねってことで湯河原正面壁をセレクト。キャメロットを携えて五分咲きの梅とクラックを愛でてきました。

 

ベビーピナクル 5.9

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梅林を抜けて正面壁基部に着くと、ひときわ目を引くハンドクラックを発見。トポと照らし合わせながら「エミリー(5.9)っぽいね」「まちがいねーな」「サイコーに綺麗だぜエミリー…」とか言ってたが実際は「ベビーピナクル 5.9」だった。(R&S 2015 069参照)

「No7ルート 5.10b」でアップして意気揚々と「エミリー」に取りつく。M坂氏がOS権を熱望するので快諾。近くで見てみると思ったより短いクラックだったが快適なハンドサイズ。カンテを乗っこしたところに終了点があり「ベビーピナクル 5.9」としてのラインはここまで。ルートは続いているが「樵ハング 5.12b」のラインである。

だがそうとは知らない(百岩あるある)M坂氏はとりあえず前進。しばし探ったあげく「どう考えてもありえない」って感じで戻ってきた。

 

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交代して僕ターン。快適クラックを抜けスラブ面に出る。のっぺりしたスラブはどうみても5.9に収まりそうにない。予想通りテクニカル。スラブと甘いカンテを駆使してバランシーに高度を上げていく。非常に面白い。なんとか落ちずにスラブを抜けると張り出したハングに到達。

しかしこれまたマスターでは痺れるボルト位置。クリップできなかった場合はスラブの最終ボルトを支点に頭から転がり落ちる予感。ハング下部の角ばったホールドを効かせてクリップ。突破を試みるが手が甘くテンション。じっくり探ってみたいところだが今日はトラッドの日。次回の楽しみのためA0で抜け、Y下氏と交代。

しかしこのルート、クラックに始まりスラブ、カンテ、ハングと設定盛りすぎな「隠れた名ルート」なんじゃないかな。

 

ダブルクラック

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一巡したところで今一度エミリーを探すためトポを開く…全くわからん。

何となくそれっぽいヤツを自由な発想で登ることにしてコーナークラックに取りつく。実はこれが「エミリー 5.9」だったのだがクラックから雑草。一本目のカムを凹角部に決めるや左のクラックにトランスファー。「小ハング右凹角ルート 5.10a」の上部にあたると思ぼしき、これまた快適なハンドサイズを登る。

それにしても百岩の乖離が酷かったが、正面壁解禁の際に近接しすぎているルートや不自然な蛇行ルート、クラック直近に打たれたボルトは撤去したからだろう。その辺は前述R&Sに詳しいが、現在の状態が適切だと感じた。幅4,5mの間に3本もルートあったらなにがなんだか解らんよな。

 

No.1 ルート 5.10a

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軽くお昼を挟んで「No.1 ルート」にトライ。「幕岩を代表するクラック」だそうだが取りつきからだと簡単なスラブしか見えない。

ジャンケンで先攻を勝ち取ったM坂氏が意気揚々とスタート。中間部のテラスでラインを読むのに苦労して右往左往。右に大きく回り込んでしまった結果、灌木でロワーダウンという結果に。きっとビレイヤーからのOS権強奪オーラに負けたんだと思う。

 

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つーわけで強奪者ターン。ソーリューションに履き替えて気合い十分。中間テラスまで上がってクラックを見上げると、思ったより快適そう。テラスの下降点にドローをセットして右側のフィンガークラックから取りつく。

トラバースを丁寧にこなしメインのクラックに入る。絵に描いたようにスッパリ切れたクラックにカムをセット。ジャミングとステミングで快適に高度を上げる。だがテラスのドローが原因でロープが重い。そして次第にクラックは細くなってくる。気がつくと最後にセットした#1は足下50cmくらい。緊張感と同時にパンプが襲ってくるが冷静にカムをセット…できない。

サイズ選択にまごつきながらも何とか冷静を保って一本決める。だが一本では心もとない。更にもう一本突っ込む。今度は座りが悪い。カムよりむしろナッツの方が相性が良さそうだが無い物はしょうがない。落ちたところで#1が効いてるんだから止まるはず…と思うことにして懸命にレスト、粘りに粘って突破に成功。雄叫びを上げたいところだったが梅祭り期間なのでグッと堪え、充実感に浸りながら回収した。

その後M坂氏も無事完登。最後は三人でマルチのロープワークを練習して本日のワークアウトは完了。

 

所感

トラッドルートの楽しさを過去最高に感じた一日だった気がする。湯河原はトラッドの岩場として評価が高いわけではないが、今の自分の実力にはちょうどいいんだろう。自分よりキャリアのあるクライマーと登って得られる経験値は貴重だが、身の丈にあった場所で自分で考えて登るのが基本的な成長プロセスだと思う。正解は教わるより試行錯誤から導きだした方が圧倒的に楽しい。ムーブの解析と一緒だ。(安全性に関わる部分は一概に言えないけど)

つーわけで5.10aでこんなに楽しかったのってあまり記憶にないので、「トラッドはグレードじゃない」がすこし解った気がします。成長させてくれる5.10台のルートって大量にあると思うのでこれからが楽しみでしょうがない。グレードを追求するんじゃあなくて一本一本を大切に登って行きたいですね。

あ、でも「樵ハング」はハングさえ越したら5.12bなんですよね…
5.12bか…
…ふ〜ん…。