月別アーカイブ: 2016年11月

眼力

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珍しいメンバーで瑞牆ボルダー。

シーズンも佳境を迎えるところだが季節外れの春陽気。エリアによっては上裸トライになるくらいのポカポカ具合。寒くなったり暑くなったり読めない秋だよホント。

 

阿修羅

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植樹祭でSAT6師匠とKnさんとジョインしてハイキングコースから山形県エリアへ。

アップは阿修羅だ。何を言ってるのかわかんねーと思うが、M坂氏は到着するなりトライ開始。ザキ氏もミケちゃんもイソイソとシューズを履く中、ひとり周辺のボルダーで体をほぐす。

いい感じにほぐれてきた頃に阿修羅に合流。久しぶりにスタートをやってみると右薬指の皮がズル剥。幸い出血はなかったが「ちょっとまだクラックの状態が…」と呟いて即離脱。

SAT6師匠のレアトライを激写してから移動。

 

ヒドラ

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前回スラビスタとムーブを解決しているのでサクッと完登して大面岩下へ上がる構え。とりあえずミケちゃんをけしかける。ひとしきりムーブ迷子になった彼を見届けてからトライ開始。

件のフットホールドにバッチリ乗り込んで上部のポッケを捉える。やはり私の見立ては正しかったようだ。更に上部の良さげなポッケに手を伸ばす。が、やや遠い。「なんか違うなー」と言って降りる。その後同様の展開を二・三度ループしたところで「ちょっとまだポッケの状態が…」つーことで移動。

 

B岩 無名 初段 RP

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それから単身大面岩下。

なんやかんやで1年以上の付き合いだが初手が止まらないB岩をちょっとだけトライ。サンサンと照りつける日光のおかげで明らかにホールドが温まっている。今日も予定調和に終わるのかと思いきや…おや、止まった。

二手目のランジもこなし手を進めるが繋げてくると悪い。足が切れるが耐えてさらに繋ぐ。リップ直下のカチを捉えて勝利を確信したとこで滑ってフォール。安定のしょっぱさ。

気をとりなおして再トライ。初手は安定して止まるがまたもや滑ってフォール。強烈な猫パンチを見舞って流血。あまりの暑さに日が陰るのを待つか、いっそ移動しようかと迷い始めるが粘ってRP。心理戦を制したのはスーパー嬉しかった。

ちなみに初手止めの要は下半身だと思う。一見するとカチの保持力と思いがちだが、足位置、はさみ込み、腰の入れ方、重心位置など、下半身の安定感を高めることが重要だった。また、それらを十分に意識するため、スタートして下半身が安定するまでは次のホールドを見ないで視線を足元に残すと上手く行った。

意識と視線のコントロールは竜王のスタートと同じロジックだなーと思う。保持力、バランス力、ムーブ解決力など、クライミングスキルの一角に「眼力」を付け加えるべきだと申し上げたい。

 

限られた時間

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で、ようやくの本命課題。スタートから数手をリピートするが思った以上に辛い。B岩で結構消耗したのが原因だろう。非常に良くあることです。指皮の残弾も残りわずかなのでカンテ以降のムーブを解析。

強々クライマーが落ちまくってる最終局面のカチ取りが納得の悪さ。ブラインドでエッジの効いたカチにデッドを放つムーブ。迂闊に手を出すとザックリと掌を裂きそう。正対デッドやらフラッギングやら諸々を試した結果、トウフック的な何かに落ち着く。そこらで疲労と湿度上昇となり5時前に撤収。

今日も一日がっつり課題と向かい合えて幸せでした。繋がるかなー…

 

超最高露府

15007539_2147749785450311_1183085046_o[photo by satoshi hirayama]

 

SAT6師匠と昨年春以来のチョーサイコールーフへ行った。花崗岩らしからぬルーフは相変わらず立派でまさに天井。といっても僕の狙いはあくまでも下部の5.11cなんだけどね。匠はもちろんフルバージョンの5.12c狙いである。

 

錦秋トラベルチャンス 5.10d RP

見るからに花崗岩エッセンスを濃縮還元したかのようなルートでアップ。「これは是非マスターで行くべきだよ」とSAT6師匠が猛烈プッシュするので気合いを入れてスタート。予想どおり出だしからペタシなマントル。そしてステミングなハイステップ、向きの悪いフレーク、遠いフットホールドとアップにしては要求度が高い。寒さを理由にモカシム&靴下で取りついたことを後悔するが後の祭り。下部でスリップしてフォール。しょっぱい。

そのまま上部へ抜けてハング越え。ここの「試されてる感」は秀逸の一言。終了点までのランナウトも初登者の心意気を感じさせる。ロワーダウンして2回目で完登。技術的にも精神的にも花崗岩っつーか瑞牆らしさが抜群だった。次はマスターでRPしたい。

 

チョーサイコールーフ

そして今日の本命ルートにマスターで取りつく。下部は以前にトライしているのでシビアな足使いとリーチフルな核心部が印象に残っている。しかし細かな足位置は記憶になく、案の定下部でテンション。そのままルーフ直下まで抜けて本題の上部に入る。と、思ったよりもガバで快適。ヒールフックやらトウフックやら盛大にジムナスティックムーブを連発してテンション交えつつリップまで。

そして核心の抜け。瑞牆本では左から抜けるとあるが直上部に良さげな凹凸があるじゃないか。ものは試しとはたいてみるが…激甘。何度かムーブを探ってみるが慣れないルーフハングドックはぶら下がってるだけで疲れる。前傾壁とはひと味違う疲労感は腹筋やハムストリングに顕著。ポンピングによる指皮消耗も激しい。そして背後の空間が広いというのもジワジワくる。ランナウトなスラブやフェイスとはまた違った緊張感。一旦ロワーダウンしてレスト。

匠は絶妙なフットワークで下部をスルスルと抜けルーフ直下へ。ノーハンドレストを入れてルーフに突入。下から見ていると「あんなところに足あったかしら」だが安定して繋げていく。クリップがムーブと連携していていかにも疲れなさそう。スムースに抜け口をこなし残り1,2手というところで滑ってフォール。めっちゃ悔しがりながら降りてきてレスト。

大レストを挟んで2トライ目、右上パートを色々試しながら結局初期ムーブで突破。ひとまず5.11cは登れたーと思ってたら核心部で手の位置を間違えてフォール。ほんとしょっぱい。そのまま上部まで進んでルーフ抜けを探る。カンテとフレークを挟み込んでデッドするのが比較的良さげ。しかしその後に控える匠直伝の鬼ピンチや甘々ガストンとは真っ向勝負しかなさそう。今一度ダイレクトラインも探ってみるがやっぱねーなと諦める。既にヨレヨレだが気合いで抜け口を突破しマントルへ。ロープがクソ重いので堪らずボルトを踏む。そこから先も最終クリップが実に合理的(つまり遠い)。出し切ってトップアウト。

 

サイコールーフ下部 5.11c RP

もうヨレヨレだがせめて下部は完登しておこうと最終トライ。色々悩んだが右上パートは初期ムーブを採用。すると小さな発見があり劇的に負荷軽減。もっと早く気付けよって話だがそのまま核心もこなして無事完登。そしてルーフ直下でレスト。ノーハンドであるがやや股関節が疲れる。ゆっくりと呼吸を整えルーフに突入。比較的スムースに繋ぐが抜け口のクリップにまごつき盛大に消耗。強引に突っ込みピンチを掴んで乗り込む。右手を寄せてきてリップに手を伸ばしてフォール。まあ今の実力じゃここまでかな。くたくたになってロワー。

匠はなんとスタティックに抜け口をこなして見事RP。回収作業も高所作業者かしらってくらいこなれていた。いやー勉強になりますねぇ。

 

所感

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今シーズンの瑞牆ルートはこれが最後になりそうだけど、いいトライができたし色々と勉強にもなりました。

帰りは渋滞回避で下道。尚、MT車なので運転は完全にSAT6師匠にお任せ(猛省)。しかし運転が上手いのなんの。ワイディングをいいペースで抜けていくのに横Gが少ない。「え、その侵入速度で突っ込むんですか」と思うがまったくロールしない。コーナーの侵入角度がいいのかクリッピングポイントを抜群に捉えて抜けていく。クライミングのスムースさと関連付けるのはこじつけだろうか…

ホールディングスキル

imgp6948[写真と本文は関係ありません]

 

ルートやクラックなど最大強度が比較的低いクライミングから、ハードボルダーのような最大強度が強いクライミングに戻ってくると色々と(再)発見があって面白い。

最近強く実感したのはホールディングに関して。

先日登った「ジュゴン 初段」や「穴会長 V8」はいずれもホールディングによって解決、完登へ繋ぐことができた。

前者は左手親指のオープンピンチを発射ボタンピンチ(なんだこりゃ)に修正することでシットスタートからの一手目が飛躍的に安定した。後者は左手オープンポッケから俵ポッケへ修正し、それに伴い一・二手目の手順を入れ替えデッドの成功率を高めた。

両者とも初見では最適な持ち方がわからず、試行錯誤の末にたどり着いたホールディングだった。最近トライを開始した「消費者 二段(ホントかよ!)」「限られた時間 三段」も感触を確かめるようにホールドを馴染ませながら少しずつ高度を伸ばしている。

「感触を確かめるようにホールドを馴染ませながら」というのはルートではあまりやらない。限界グレードをトライしてないからって話もあるが、ルートではムーブの連続性やクリップポイント、レストポイントの試行錯誤が多い。たったひとつのホールドを穴があくまで凝視したり、あらゆる角度から撫で回したりは非常に稀だ。だからこそボルダーに戻ってきたとき、それまで日常的に行っていたあらゆる行為が新鮮に感じられ、そこに新たな解釈と知見が生じるんだと思う。

やっぱ色んなクライミングをするのがスキルアップには最適なんじゃないかな。

 

手首

具体的にはまず、手首。

以前からスローパなどは指だけではなく掌全体を使うことを意識していたが、最近では手首まで拡大解釈している。「指、掌だけでなく手首を使って効かせる」「手首の内旋、外旋モーメントの有効活用」などを意識している。

尚、個人的には右手外旋時では、2時~4時方向で保持力が最大となる。一方、12時~6時方向への内旋は故障しそうなのであまりやらない。

手首の重要性は花崗岩クラックやカンテのクライミングで再認識し、ボルダーで検証と言語化が進んだ。

 

力の効率化

次に、力の効率化。

単純にホールドに加える力を最大化させるのではなく、ホールドを起点とする力の流れを体幹の安定性やムーブにつなげたいと考えている。

「限られた時間」ではアンダー保持による右肘引き込みと右体側部のテンションがフットホールドの荷重に一役買っている。「ジュゴン」では左手親指の修正により左脇の絞り込みがスムースになり、背筋群を有効に使うことができた。

両者ともに「持ち感」に大きな変化は感じなかったが、ムーブの完成度は高まっている。あくまでも体感値だが「ホールドへの荷重量」に変化はほぼなかったと考えている。もし「ホールドへの荷重量が小さいままムーブが出せる」ようになったとすれば、一つの理想形じゃないだろうか。

保持力という言葉が示すように「単純にホールドに加えられる力」は重要な要素だ。だが「効果的にホールドに力を伝えられる能力」や「少ないエネルギーで保持できる能力」とかを開発できないかなーとぼんやり考えている。

かつてニーチェは言った「ホールドに力を込めるとき、ホールドもまたこちらを押し返すのだ」(うそですごめんなさい)