月別アーカイブ: 2013年12月

今年の宿題は今年のうちに♪ 〜Twall 5.12a RP〜

凍てつく関東を離れ、さらば東京、こんにちは北山公園。年末は温暖な関西でエンジョイクライミング。それが一億年と二千年前からの習わしと言ふもの。と言う訳でこのエントリーは本邦が世界に誇る超特急、新幹線の中でしたためております。

年の瀬がせまり、私は焦っていた。当初の予定では二段を登り、5.12aをこなし、こたつでうたた寝をしているはずであった。しかし運命とは酷なものである。股関節の不調から膝靭帯の損傷と度重なる故障により、もはや実現性のない目標に思われた。

怪我明け(完治ってわけじゃないけど)の御岳では「忍者クライマー返し」を撃ちこむが、一日一手という、高度な訓練を受けた牛歩戦術が展開。「忍者クライマー返し」は二段にしてはムーブ強度が低いと言われるが、ご存知の通り、パーツ練習が難しい課題。初めてトライする二段としてはそういう意味で相性は良くない(気づくの遅せーよ)。結局そのまま年内忍クラは果たせなかった。

しかし意外な事にジムリードの調子は悪くなかった。いや、むしろ上昇の気配すら漂っていた。前回、怪我明けにRPグレードを一気に2段階更新したのはお伝えした通り。一般的に3,4級のボルダー力があれば5.12aは登れると言われる(ロープを着ければ凡人以下な段クライマーも少なくないが)。この基準に従えば、幾多の初段を手中に収めてきた私が、5.12aに苦戦するなど本来あってはいけないことである。私の脳内平山ユージ先生も「そうだよ!ボルダー力にリード力が追いついてきたんだよ!絶対5.12a登れるよ!」と爽やかに仰っていた。

隠して、忘年会シーズンまっただ中の帝都は穢土川橋Twallを最終決戦の場所として挑んだのであった。狙うは前回触れたランジ&デッド特盛の赤ホールド!まずは核心ランジを入念にオブザベーションするべくフロアーへ降り立った。

ん?あれ??赤、は??

運命とは何故にかくも酷なのか。まさかの壁替え。驚愕である。我が愛しきの赤ホールドはピンク色に衣替えし、よそよそしい眼差しをこちらに向けている。狼狽する私は何処からとも無く、「あ、ほら!中学のときに(二週間だけ)付き合ってた、ほら俺だよ俺!」と虚しく取り繕う声を聞いた気がした。

とにかく気持ちを落ち着かせるべく、135度に居る細E氏に状況を説明しに行く。すると氏は「じゃあこの長モノやろうよ。ちょうど5.12aだよ」と私の前腕をENDさせるのが目的としか思えない提案をしてくる。いかん、ここに居てはやばい。

気を取り直してオブザベーションを開始する。右端からスタートし、左へトラバース。再度右にトラバースしてゴール。蛇行したルートである。観た所悪そうなホールドは少ない。前回の様なランジもない。一方で明らかに核心部は上部に集中している。そして中間部に顕著なレストポイント。間違いない、ヨレ核心である

ヨレ核心、クリップ核心、恐怖核心はボルダリストがリードに挑む際の核心の三原色である。つくづく運命は酷だ。

だが、運命は残酷なばかりではなかった。この日唯一にして最強の幸運が訪れる。ビレイヤー、I上氏の登場である。I上氏は覚えてないっぽいが私が初めてリードを教わったときにI上氏にはお世話になっている。登ってよし、ビレイよし、のナイスガイである。こうして最強のバックアップを得て、1try目に入った。

予想通りホールドは良く、第一トラバースに入る。強引に突破できそうだが、ここはムーブを固めてパワーを温存しなければならない。テンションしてムーブを固める。正解ムーブではないと思われるが、消耗しないムーブを見つける。左パートに入ると予想通り完全なレストポイントが待つ。そして左パート上部から右へのトラバースが核心である。ここもテンションでムーブを探る。クロスからガストン、マッチへと繋げるのが正解ムーブのようだ。

そして最終クリップ。だが次のホールドが地味に遠い。しかも見るからに甘そう。核心をこなした後にこれを保持出来るのだろうか。やはりヨレ核心である。可能な限りスタティックに出すべくフラッギングやロックオフを試みるが最終的にデッドで正対。またしても卓越した正対クライマーセンスを露呈してしまった。

とりあえずバラしたので決戦に備えて長レスト。細E氏がやって来たのでムーブの解説。BCAAをキメて万を時して挑む。

そして時が満ちる。決戦の時だ。

ギャラリーに細E氏とワイフ。ビレイヤーにI上氏。普段より背後が温かい。特にI上氏のビレイは本当に心強い。

そしてスタート。順調にクリップを進めていくが、どうやら細E氏に解説したムーブと異なるらしい。事件(クライミング)は現場で起こっている。これでいいのだ。そして第一トラバースへと突入。ここでも細E氏と練ったお洒落ムーブを華麗にスルー。カウンターバランス?なにそれおいしいの??

左パート最下部でレスト。遮二無二シェイクをするより、ゆっくりリリースした方がレスト効率がいい。最近気付いたテクニックである。

そして再開。この後に休める場所はない。左パート上部へ至りここから核心部が始まる。最上部のカチをクロスで取るはずがムーブが起こせず飛ばしで取る。そしてマッチ。次がハイライトとなるトラバース。右手でガストンを取るデッドムーブ、の予定がまさかの左手クロス取り。

ギャラリーからどよめきが起こる。「オブザベーションとは何だったのか」「あのムーブ解説全部嘘じゃん」「終わった」

だがギャラリーの落胆とは裏腹に私には切り札があった。左足を上げればマッチへいける(はず)。厳しい体勢から狭い足を上げ、間髪入れずマッチする。バチ効きの感触が指先から伝わる。

だがまだ気は抜けない。最後の難関、地味なあいつを保持しなくてはならない。ここで弱気になっては負ける。最後は気持ちの勝負だ。しかし、うーん、いけるのか?と思いそうになった瞬間、「イケるよー」とI上氏の声援が。細E氏の「ガンバガンバ」が後に続く。その声に押されるように渾身のデッド。完全に決まる。

こうしてギリギリのタイミングで5.12aを達成。しかも1day2tryRPのおまけ付き。

今回の勝因は何と言っても皆様の熱い声援でございます。クライミングは素敵な仲間たちが居てこそだと強く感じた次第であります。2014年もこの気持ちを忘れず皆様と一緒にナイスでガンバなクライミングライフを過ごせるように祈りつつ、皆様よいお年を

敗退のバラッド

午前9時、我々は稜線に達した。そこは予想通り暴風が吹き荒れる過酷な環境であった。隊員達の表情はゴーグルに隠され読み取れないが、頂上へのアタックに燃えていただろう。だが私は決断せねばならなかった。そう、敗退を。
涸沢カールはカレー味』より抜粋

つーわけで命からがら赤岳文三郎尾根から敗退してきた次第であります。

当初のプランは地蔵尾根-横岳-硫黄岳-赤岳鉱泉だったが、強風が予想されるので前日に行者-赤岳のピストンに変更。しかしテントを叩く風の音を聞くほどにそれすらも無理っぽい気配に。当日の行動開始時には「稜線までが限界だろう」という諦めにも似た確信を得る。

とりあえず行者までアプローチするが眠い。前日3時間睡眠だもんね、至極当然だ。睡眠スキルが足りないのだ。のび太に見習わねば。

S0011129南沢をすぎたあたりの小沢が完全にFreeze。アイゼン装着してプチアイスクライミングしようかと考えるが眠いのでパス。

行者に到着すると阿弥陀、赤岳は当然ガスの彼方。とりあえず写真でもとカメラを取り出すが、「カードがエラーです」と理解に苦しむ返答。結局カメラは美濃戸に戻るまで復活しなかった。何しに来たんだコイツは。

文三郎尾根を進み森林限界を超える前にアイゼン装着。森林限界を出ると風が強まる。こんな天気でも他にも登山者はいてちょっと安心。高度を上げて行くほど風が強まり、視界も100m弱と行ったところ。


本日は愛機「sum’tec」のシェイクダウン。登攀要素は無いが、石突きブッ刺しまくりで快調。

そして遂に稜線に。尋常ではない爆風が吹き付ける。厳冬期の赤城湖以来の風速。MJの『スムースクリミナル」が再現可能なレベルである。地図上では後40分で赤岳山頂だが、多分行けば片道切符間違い無し。とりあえず耐風姿勢の真似などをしてみてそそくさと下山を開始。こうして我々の敗退劇は幕を閉じた。

登頂できなかった事は残念なんだけど、的確な判断を下せたと思う(過酷過ぎて迷う要素皆無)。プランの変更、敗退地点の予測なども妥当だったんじゃないかな。敗退という結果ではあるが、経験値の上げることが出来たのでそれなりに充実。次は何処行くかなー。

ブランク、それは苦かった

40余日ぶりの御岳へ。
膝の案配は九割五分。キョンを封じれば特に大きな問題とはならない。

前週の瑞牆では予想以上に登れたので、忍クラの進展にも期待がかかる。前回はトラーバースのマッチから右手送りまで。感触も良かった。その後のムーブもyoutubeで見る限りは非常に可能性を感じる構成。ひょっとして本日完登しちゃうかも。そしたら暇になるじゃん、ぐふふ。とか妄想してたけど全く甘かった。激甘の極みであった。

nic

1try目、忍者の飛ばしがとれない。ちょっと目が覚める。
トラバースパートに入ってもマッチが全く安定しない。完全に目が覚める。
マッチから右手送りもなかなか出ない。逆にふて寝したくなってきた。
前回の最高到達点になかなか達っしないままトライ数ばかりかさむ。

やっぱ40日も立ってるとムーブが体から離れるもんなのね。当然の帰結とは言え意気消沈せずにはいられない。日も陰ってきてトホホな気分。大して寒くもないのに焼き石を作って指を暖める。暖かいってイイネ。

結局、この日は大きな成果は無し。とは言え微妙な足位置の修正によりムーブが少し洗練されてきたようだ。地味だが確かな成果である。とりあえず次回はなるべくインターバルを明けずに御岳にいかねばならない。年の瀬、如何にして時間を捻出するか、それが問題だ。

花畑 初段

日曜は瑞牆山ボルダーへ。恐らくは今シーズン最後の瑞牆山。

都内を5時過ぎに出発してエリアには8時頃到着。もちろん気温は低い。とは言え、これくらいならヨユーで登れるよね!と大口を叩きながら皇帝岩へ赴きアップを開始。

ところがいざ岩を前にすると、シューズを履き替える気になれない。ダウンジャケットを脱ぐのも億劫。もそもそと準備をしてとりあえず7級をトライするが、寒い!というか痛い!もちろん足もだ。やっぱ寒いね。厳しいね(謎)

その後4級、5級をやっつけ、「ヴォック 初段」のスタートを触るが、「こんなムーブ強度じゃアップにならねーよ」と言い訳をキメて「花畑 初段」へと移動。

当初は宿題になっていた「泉の家」と「倶利伽藍」の回収を目標にしていたので「花畑 初段」は種まき予定だった。ところがムーブを見せてもらうと非常にジムナスティック。ダイナミックなムーブから足技をグイグイ決めて行く魅力的な課題だった。

しかしいざトライを開始すると初手が意外にキツい。ジムでどっかぶりを打ちまくっているタイプには抜群の相性かもしれないが、今の自分には簡単ではない。初手後の足送りもムーブのリズムが途切れると届かない。そしてトゥフックからの右手寄せもバランスと体幹不足で振られ落ちを抑えられない。更には寄せた右手で上部ガバを取りに行くがヨレてて出ない。

部分打ちで精度を高めればひょっとして、とトライを重ねているとsenkatz先生があっさり2tryRP。マジかよ。

負けじと「これラストにしようかな」と気合い(?)をいれてトライをすると、今度は右手小指の皮ズル剥け。もちろん流血。どういうことだよ。

気持ちが切れる条件が整う一方だったが、そもそもモチベーションが高くないのが幸いしたかもう一回打ってみる気分に。

そして最終トライ。初手、足送り、トゥフック、右手解除と比較的スムースにムーブを繋げて行く。しかし右手解除後、右手を左側ガバへ送るとまさかのトゥフック脱落。完全に足ブラ状態。皆が「ガンバ!ガンバ!!」と応援してくれるがあまりに絶体絶命すぎて吹き出してしまう。いやもう笑うしかないだろ。多分ギャラリー達も「おしかったねー」と思ってたはず。

しかしここで起死回生の神ムーブが炸裂!
トゥフック脱落→足ブラ→左手解除→180度回転→マッチと 変態ムーブでなんと打破。後はガバをつないでトップアウトするだけ。しかし変態ムーブのダメージでかなりパンプ。レストしてから無事に抜けました。

恐らくこれから先もあんな変態ムーブで起死回生という展開は無いと思われる。非常に内容の濃いクライミングができた。ちなみに「泉」と「倶利」に関しては…察してくれるな。

フッキとRP

IMG_1645

2週間前に痛めた膝(MCL損傷)が9割がた回復してきたのでちょっと本気出してみました。一応主治医には少しずつ復帰していいと言われていたので、”すこしずつ”ってことはリードって事だろうと解釈してTwallへ。

実際、ボルダーはムーブ強度や着地を考えると流す程度になってしまうのでリードにしたのは正解なのね。それなりに打ち込めて、かつセーフティー。しかも十分な成果までゲット。なんとRPグレードを2段階更新。

5.11c

前回触ったのが丁度膝を痛めたとき。感触は良かったので、サクっといくんじゃないかと期待していると本当にあっさりRP。本日1try目のムーブ確認でそのまま登れてしまった。通算2tryでした。

 

5.11d

ムーブ自体は今年の3月頃にバラし完了。随分時間が経ってしまった割には、「バラせたけどこれを繋げるのは非常にキツい」「わりとボルダー」「乗り込みからのワンフットレスト」「終了点目前のピンチへのデッドがヨレてて保持できない」など部分的に覚えている。とりあえず1tryだして、記憶が正しい事を確認する。既に5.11cを登り終えてパンプ気味の為、最後のピンチデッドをやり過ごす方法が無いか模索。体幹を締めて少しでもデッドの距離と反動を押さえる事で若干余裕が生まれる事が判明。

そしてレストを挟んで2try目。今日のノルマは達成してるから気楽に行くかと思いつつも「これ登れたかなり嬉しいに違いない」とか考えつつムーブをこなして行く。乗り込みでロープを上手く跨げ無かった為、あまりよろしくないクリップになるが、立て直して最終局面へ。軽くシェイクしてデッドへ。五分五分だったが止まる。終了点のクリップがガクブルだったけどなんとかこなしてRP。多分通算4-5try。

 

と言う訳で意外にも年内5.12aが現実味を帯びてきた。膝をやったときは絶望的と思っていたのに、ありがたい事です。ちなみに種まきということで5.12aも触ってみるが、何ですかこれは。ランジからの足ブラ〜マントル。その後も遠いホールドへのデッドが連続。とは言え2,3日打ち込めば多分登れる感じ。けど理想的には外岩で5.12a登りたいんだよな。聖人岩のウェーブ、奴に会いに行きたい。