カテゴリー別アーカイブ: マルチピッチ

一刀

 

フリークライミングをしてきた。

瑞牆山は小面岩のマルチピッチ、それは「一刀」。

壁中に一切の残置物を残さず、取り付きから岩頭まで花崗岩のクラックに導かれトップアウトする、最高にかっこいいライン。

このラインを初めてトライしたのは5年ほど前。その時から「安易にトップアウトはしたくない」と考え、各ピッチ完登して次に進むことにした。おあつらえむきに最終ピッチはランナウトするという。A0でトップアウトするネタバレクライミングは相応しくない。最後まで未知の領域を残して登ろうと思った。

妥協した点があるとするとハングドックとヨーヨースタイルを許容したあたり。それも当時のパートナーとよく話し合って決めた。

そんなわけで5年まえは3Pを抜けることも叶わず敗退。なにもかも足りてなかったが心意気は買っていただきたい。

そして今年の春、パートナーは山ちゃん。我々が組むと晴天率が著しく悪い。びしょびしょの1Pを沢登りのように抜ける。2Pのクラックもシケシケ、ここは前回ピンクポイントしてるので3Pのハンドクラックに注力する。2日間のトライの末、2PのRPに成功、山ちゃんは3Pも成功していた。

 


 

満を持して秋、岩はパリパリ。1Pに至っては快適すぎて#5,6の出番なし。2Pを山ちゃん。クラックに枯葉が詰まっていたが堅実に登り切る。フォローも落ちることなく続き、3Pに取り掛かる。

 

1P
1P 5.9

 

岩の状態は控えめに言って最高。やや風が冷たい。ハングのムーブを忘れていて少し消耗する。数手進み足が切れるが耐えてレイバックで切り抜ける。前回悪く感じたワイドハンドは抜群のフリクション、気がつけばフィンガークラックが目の前。チョックストーン下で十分にレスト、集中してマントルを返した。

2Pと合わせて一刀でRPグレードを更新できたことになる。地味に嬉しい。

 

3P
3P 5.11b

 

ここからが念願の初見のピッチとなる。歩きを交えチムニーピッチを抜ける。

 


5p 5.7

 

そして最終ピッチは噂のランナウト。出だしは左上したクラックでグリーンスピリットのように見えなくもない。快適に左上クラックをぬけマントルを返す。なるほどプロテクションは取れない。だが本日のフリクションにおきましては何の心配もございませんとばかりに、サラリとOS。あれ、もしかしてトラッドのOSグレード更新では…

冷たい秋風が吹き抜ける岩頭に抜け、小ヤスリのクライマーと談笑した。

取り付きを発ったのが9時半、岩頭に12時半。終わってみれば3時間程度のフリークライミング。壁には思い出だけを残してきました。

 

 


岩頭

ベルジュエール 10pitch 5.11b


パラパラと小雨が降り出した。レインウェアはいらないレベルだが、敗退すべきか否かを意識しつつ4年ぶりのチムニーに挟まった。

#6はスッカスカでまったく効かない。もちろんそれは4年前に経験済み。しかし今回はそれに加えてところどころ結露している。

ズリズリ上がって黒ずんだリングボルトにクリップする。一息ついて上部に目をやると、記憶より近い気がした。甘い考えが浮かぶがすぐさま打ち消し、ただひたすら無心で前進しようと覚悟を決めた。


天気予報

今秋の予報はいつもに増して難しい。当初は土日を使ってベルジュエールからビバーグを交えて蒼天攀路をプランニングしていた。だが七転八倒する天気予報に愛想を尽かして日帰りにシュリンク。それでも午後は崩れる予報。一方、土曜日は登れたっぽい。我々の土曜を返してくれ。


植樹祭発 (5:15)

そんなわけで前夜泊で瑞牆入り。オープンビバーグで霧に包まれながら時折訪れる晴れ間からオリオン座を見てまどろむ。3時間程度の仮眠時間。明日は午前中にカタを付けなければ雷雨に巻かれるかもな…とか考えると…朝になってた。

まだ暗いうちに植樹祭を発つ。


First Pitch (6:40)

ゆっくり登って準備してClimb On。4年ぶりのベルジュは寒くは無いけどシットリ。

ハング抜け口まで登ってロワーダウン、これをアップとする想定で登攀開始。

ハング抜けはちょっと悪い。前回はここでスリップフォールした記憶。慎重に手を進める。無事に抜けると、そのままイケそうな気がする。可能ならマスターで登りたい。次の手を出す。

上部核心に入る。前回は初見でムーブがわからず、そこそこ時間を使って抜けた気がする。ただ4年も経つとほぼ何も覚えていない。慎重にムーブを探る。ホールディングを調整して手を伸ばす。なんとしても登りたいと思った。核心を抜け、歓声をあげた。


2-3nd pitch (8:00)

続いてスラブトラバース。このルートの二大恐怖核心。だが、サクサクとスズメちゃんが突破。流水でヌルヌルのスラブもなんのその。ただでさえ重いシングルロープを引きずって3pitch目まで。小面岩が綺麗にみえた。



4th Pitch (9:00)

一番フレンドリーなピッチ。今回も美味しくいただきました。ちなみに今回はアナサジピンクですが、アッパーの厚み不足でフットジャムが痛い。


5th Pitch

ハイライトとなる大フレーク。ガスに巻かれて辺り一面まっしろ。予報どおり天気は下り坂で気持ちが焦る。ススズちゃんが高度を上げていくがクラック内部は流水でびちゃびちゃ。大胆にレイバックでグイグイ上がっていく。メンタルどうなってるんですかね。


6th Pitch

そして冒頭のチムニー。前回はここで30-40分は格闘したような気がする。だが今回の天候でそんな時間はかけられない。少しはチムニーも上手くなってると信じて挑む。

リングボルトにクリップして、#6をセットしようとギアラックから#6を外す。と、なぜか#4が脱落して遥か彼方に落ちていってしまった。こんなことが起こるんだろうか。呆然とするが、なかったことにして目の前のタスクに手中する。

#6を開き気味に決めた後は一切上を見上げず無心でプッシュで前進する。壮絶な耐久系クライミングの幕が開けた。と、思っていた。

すると…
.
..

………
あれ?めっちゃ快適なんだが…

クラックが少しずつ狭まってきて進みづらくなる。両手を逆手でPushしながら膝と足裏と背中でずりあがる。

落ちる気が全くしない…なんということでしょう。

不意にメットに何かが当たった。チョックストーンだった。前回はバテバテで必死の思いで返したマントルをこともなげに返して、チムニーの抜け口に立った。

できすぎた展開で我ながら嘘っぽいのでこの画像を貼っておこうと思った。


8th Pitch (11:00)

一時強まった雨脚も小康状態となり、これを抜ければ完登は目前というクラック。屈曲したラインで先の展開が読みにくいルートだが、抜群の読みで手堅くOS。

「ガバっぽかったのでしっかり片手固めて出したら登れた」みたいなコメントだったけどつくづくスゲー。


Last Pitch (12:20)


ついに最終ピッチ。またしてもパラパラと雨が降り始める。出だしの被ったクラックがやや悪い。雲が流れていくのを視界の隅に捉えながら最後のスラブを抜け、岩頭へ。

4年ぶりに十一面から眺める瑞牆はいたるところで霧が沸き立ち、雲の切れ間から富士山がのぞいていた。


鷹見岩南山稜

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カサEさんと鷹見岩南山稜を登った。当初は鷹見岩ー大日岩ー五丈岩をオープンビバーグを交えて継続する、という野心的なプランだったが天気やらなんやらで日帰りにダウンサイジング。とは言え山っぽいクライミングができてめっちゃよかった。

 

アプローチ

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瑞牆山荘から富士見平小屋を経て鷹見岩分岐まで。およそ1時間。カンマンボロン、大面岩、小面岩を真南から望む。新鮮なアングル。

鷹見岩のコルから右斜面に下る想定だが、不明瞭なので偵察。鷹見岩岩頭までハイクアップして他に選択肢がなさそうなので、コルから右斜面に降る。100m-200m下った辺りでケルンを確認。確信を得て進む。一般登山者の道迷いを防ぐため、あえて分岐付近は不明瞭にしてるのかな?

 

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取り付きの洞窟まで予想より下りが長い。およそ40分。トレースが薄くなるとケルンが現れるので迷うことはなさそう。

 

1ピッチ 5.10

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11:20から登攀開始。カサEリードでスタート。洞窟内は湿っぽいが濡れてはいない。おそらくコンディションは良さげ。1ピッチ目としては辛そうなムーブを抜けていく。

フォローはこれまた大変。バックパックが挟まって身動きがとれない。心拍数急上昇。終了点への胎内くぐりを土下座ムーブで抜ける個性的なピッチだった。

 

2ピッチ 5.10

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空へと続くような凹角ハンドクラックをパワフルに登っていく。めちゃくちゃ快適…と思っていると、おや?カム少なくないスか?振り返ると遥か足元にちょっと多めにカムが決まっている。残り4-5m。クライムダウンできなくもないが危うい。余った#3を真横にゴリ押しで決め、なけなしの#0.4を慎重にセット。ガバとはいえ緊張感のあるランナウトをこなす。

小テラスに這い上がりほっとするのも束の間、その先のスラブも手強い。むしろグレードはスラブにつけられている気がする。体感5.10bから5.10cかな。もっといいムーブがあるのかもしれない。なんとか押し切ってOSを達成。

このピッチだけでも十分な価値がある三つ星ピッチだった。控えめに言って最高。

 

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photo by kasai

 

3ピッチ 5.8

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脆い出だしから張り出したアンダークラックをたどる。簡単だけどこれまたバックパックがつっかえる。

 

4ピッチ 5.7

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簡単なチムニーを超えて岩綾歩き。このピッチはコンテで通過。右手に大日岩を望む。

 

5ピッチ 5.10-

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ハイライトとなるピッチ。序盤のトラバースでまごつくがとりあえず抜ける。チムニーを渡ってからは快適。最後のワンポイントがバランシーで面白い。壁が寝ているので高度感はあまり感じなかった。

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5,6ピッチ全景

 

6ピッチ 5.10-

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photo by kasai

 

最終ピッチ。雨雲に焦りつつスタート。絶妙な感覚でホールドがつながっていく。ボルトがなかったら相当頭を使っただろう。ルートファインディングが楽しいピッチだった。雨に降られることもなく一坪テラスへ。

[追記] インシデントレポート

このピッチで1ピン目のドローが脱落した(上記写真でドローのかかっていないハンガーが確認できる)。
原因は以下と考えられる。

  • ドローを上下逆に設置したため、ハンガー側のビナが回転防止ラバー付きだった
  • トラーバースによるロープの流れでドローが回転
  • 2ピン目クリップ時のたぐりよせでゲートがハンガーに接触して脱落

2ピン目でたぐり落ちた場合、スラブとはいえ墜落係数は1を超える。重大事故となったかもしれない。
改善策は以下。

  • ドローをギアラックにセットする際、上下確認を行う
  • ドローをハンガーにセットする際、上下確認を行う

特にギアラックにセットするときはあまり意識していない気もする。ダブルチェックが好ましいが現実的にどこまでできるか…

badclipドローが上下逆にセットされている

 

7ピッチ 5.10(?)

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photo by kasai

 

おまけその1。岩綾歩きを経て10mほどの垂壁に出る。トポに書かれているラインを雑に探して取り付く。脆い凹角から薄被りへ…薄被りとか書いてたっけ?

剥離しそうなホールドをテストしながら抜けていく。思ったより傾斜を食らう。被りを抜けると多少安定するが表面の粒子は相変わらずボロボロ。抜けが読めないが#2を決めて突っ込む。登れてよかった。

 

8ピッチ 5.8

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おまけその2。更に岩綾歩きを経てヘッドウォール(と呼んでみたい)直下の左上クラック。抜けると正に岩頭。気持ちよいフィナーレを迎える。

 

Stats

  • 瑞牆 山荘 8:40
  • 鷹見岩分岐 9:45
  • 下降 開始 10:20
  • 取り 付き 11:00
  • 登攀 開始 11:20
  • 一坪テラス 15:10
  • 鷹見岩岩頭 16:30

 

一刀両断

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最近、ハングドッグやエイドに頼らないマルチピッチがやりたいなーと考えていたところ、M坂マンが「これからはグラウンドアップにこだわりたいと思います!」と高らかに宣言していたのでそれならっつうことで瑞牆の「一刀」に行ってきた。

ちなみに「一刀」はオンサイト・グラウンドアップによって初登され、終了点を含めてボルトや残置物は一切ない。フリークライミングの理念を体現したかのようなルートである。ルート上には25mの5.11aとか5.11bを含み、5.11aのクラックをまともにトライしたことのない僕には高嶺の花つーか、現実を見ろよ感抜群である。

 

アプローチ

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ゲート開放前なのでゲートから歩く。チップの駐車場まで10分前後。なんだ、近いじゃねえか。これまでゲートが開くまで指をくわえて待っていたことに激しく後悔する。

大面岩下ボルダーは誰もいない。ベシミを抜けて一気に大面岩基部まで。パノラマコースを少し歩き大面・小面間のルンゼに到着。念のため周辺を偵察、ルートミスの可能性は低そうなのでルンゼを進む。ルンゼ内でもう一度偵察を行いFIXロープを発見。チップから1時間10分前後で取り付き。

 

1P 5.9 OW

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9時45分くらいにM坂氏のリードでスタート。快適に下部を抜けてOWに突入。悶絶しつつも見事にOS。フォローは一旦空身で登り終了点から#5,6を持って下降、取り付きにデポ。すぐに登り返して2P目に備える。

 

2P 5.11a hand

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リードを交代して一本目のイレブンをOSトライ。クラックの中は少し湿っぽく、久しぶりの高度感からか動きがやや硬い。出だしのコーナーを超えてハンドサイズに突入し、カムを決めたところであっさりテンション。当たり前だけど簡単ではない。ムーブは探らずカムの効きを確認してロワーダウン。M坂氏に交代。一旦ロープを引き抜きリードでトライ開始。力強い登りでハンドクラックを前進しプロテクションをセットする、登れそうな雰囲気を放ちまくっていたが惜しくもフォール。

すぐさまロワーダウンして今度はロープを残したまま交代。ヨーヨースタイルのチームトライとでも言えばいいのか、適切な呼称がわからないがチームで高度を上げていく感じがこれまでになく楽しい。M坂氏の決めたエイリアンまで上がってムーブを起こす。しかしどうにもバランスが悪い。モカシムで来たことを後悔しつつ、せめて前進してカムを決めようと肚をくくったところでスリップしてフォール。じつにショッパイ。

ロワーダウンしてすぐさまワントライするがパンプが抜けずにフォール。交代したM坂氏は力強い登りでクラックの向こう側へ消えていった。つええ。

ちなみにトポにはナッツの記載があったが、二人揃ってどこで使えばいいのかわからずプロテクションはカムのみだった。

 

4P 5.11b

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この時点ですでにいい時間になってるので急いでハイライトピッチへ。目が覚めるような美しいクラックが威圧感のあるチョックストーンへと続いている。

チョックストーンに0ピン目をかけてM坂マンのリードトライでスタート。チョックにタイオフとか地味に楽しい。しかし出だしの凹角が思いのほか悪い。ヨレも相まってフォール。交代してトライするが確かに悪い。なんとなくそれっぽいムーブを起こそうとしたところでフォール。すでにヨレヨレ。ムーブは正解だったようでなんとか凹角は突破したが続かず。

ムーブ強度的にはボルトルートであれば問題なく登れそう、とか考えてしまったがコレが実力ってやつだ。

時間的、体力的にはもう少し前進することも可能だったが、敗退が難しくなると考えここで敗退を決断。カム回収はエイドでこなして懸垂下降を開始。後続パーティは著名なプロクラマーでサクサクと4P目を抜けていった(上の写真)。

 

グラウンドアップ

というわけで見事に一刀両断されてきました。冒頭でも触れたけどこれでもかってくらい現実を突きつけられた感じである。

しかしスタイルにこだわったクライミングは非常に充実感のあるものだった。

これまでマルチピッチでフォールした場合、レッドポイントより突破を優先してきた。まずはハングドッグでフリー解決を試み、無理ならエイドで突破する。そして次ピッチの登攀を開始する。

できることならフォールしたピッチをレッドポイントするまで次ピッチへ進みたくないという思いもあったが、後続パーティが来てるのにロワーダウンしてリトライするわけにも行かないし、ルートの屈曲次第では取り付きに戻れない場合もある。くわえてレッドポイントできたとしても、時間切れによって次ピッチへ前進できない可能性もあり、そう簡単な話ではなかった。

しかし、未解決のピッチをエイドで抜け、その先の冒険性を失ってまでトップアウトするのはあまりにも勿体無い気がしてきたとき、「やっぱ降りるのが妥当だよな」と思えるようになった。

とは言え理想とするスタイルはヨーヨースタイルでもピンクポイントでもなく、あくまでもレッドポイントなので精進したいと思います。

錫杖岳前衛壁

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錫杖岳デビューしてきました。パートナーはおなじみS兄貴。ルートは「黄道光」。北アルプスってことで森林限界を超えた場所でのクライミングを妄想していたのは内緒だ。(行ってみると樹林帯)

 

1P目

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左方カンテのルンゼからアプローチ。アップを意識して大きな動きでルンゼを上がる。荷物がやや重い。

黄道光は薄かぶりのボルトルートで始まる。グレードは5.11a、簡単ではないがオンサイト圏内である。しっかりオブザベーションしてから取り付く。ムーブがピシャリとはまってハング部を突破、ひゃっはーと雄叫びをあげる。てっきり核心部を超えたと思ったらそこからのムーブも一癖あって楽しかった。

なお、後述するが荷物は「やや」ではなく「わりと」重かった。

 

2P目 サンシャインクラック

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続いくハイライトピッチはフォローで上がる。クラックの表面はエッジが鋭い。スッパリ切れた安山岩クラックをイメージしていたが意外と荒々しい。日差しも強まってホールドが滑り、ロープはキンクして上がっていかない。こいつは辛えーと悶えてるとクラックから剥がされしまった。

木登りを交えてなんとか突破。松ヤニで手がべたつく。ワイルドな展開にアドレナリンがマシマシ。

小テラスで交代してリード。ボルトとカムを交えて抜ける。疲労からしょっぱいテンションが入ってしまった。

 

3P目

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最終ピッチ。壁が広い。上部にそびえるハング帯が遠く感じる。下部はボルトが多いので間引きつつ進む。面白いフェイスムーブが続き、快適に高度を上げたところでボルトが途絶える。しばし悩むが直上にハンガーのないボルトが見えた。

#0.5をアンダーに決め数手進む。砕けそうなホールドをスタティックに捉えて祈るようにムーブを起こすと、パキっと剥がれた。スラブフェイスを蹴るようにしてフォール、右臀部をぶつける。

その後、横にクラックがあったことを知る。クラック部のムーブもジャミング一辺倒ではなく変化があって面白い。しかし岩の形状ではなくボルトを追いかけてしまったことが悔しい。テンションを交えながら抜けるが消耗が激しく、終了点についたときは汗だくだった。

ハングを抜けたところで「黄道光」のラインは終わり、その先は北沢デラックスの最終ピッチが続く。正直この場所で終わるのは中途半端な感が否めない。釈然としないも下降を開始。壮絶なロープドラッグと格闘する。

 

軽量化

といわけで荷物が「ほんのちょっと」重かった。どれくらかっつーと5-6kgは確実にあったと思う。ひょっとすると8kgあったかもしれない。さすがに10kgはなかった…と思いたい。

「それ、登る前に気付けるでしょ」って話なんですが、左方カンテルンゼはアルパイン的なので荷物が重くても許容できちゃうんですよね。もちろん「重いな〜」と思ったが特に危機感はなく、「なんとなく違和感がある」くらいの感覚。 でも考えるべきは5.11aから先の行程で、そうすると明らかに重すぎた。

違和感があったということはアラートがあがっていたということ。なのに「気にしすぎ」と無視してしまった。ささいな違和感でも言葉にすれば問題意識が生まれて対応できたかもしれない。今後は積極的に言葉にしていきたい。

ギア周りは毎度難しい。今回はモカシムオンサイトとジーニアスという二足体制だったが、クライミングの内容的にはモカシム一足で対応可能だった。結果論に過ぎないと言われるとその通りだが、グレード、岩質、傾斜を含めて考えれば「ありえる選択肢」だったんじゃないかな。

カムに関しては#4を追加したが結局使わなかった。「どっかで使いたくなるかも」で持っていくことが多いが、そういうシチュエーションって実はあまりない。むしろレアケースな気がする。

もちろん安全性とのせめぎ合いなので簡単に答えは出ない。しかしPASをやめてメインロープでのセルフビレイに切り替えたように、シンプルなほどクライミングは楽しい。

 

ロープドラッグ

三回の懸垂の内、二回でロープドラッグ。ドラッグここに極まれリ。しかも最後は空中懸垂からユマーリングで脱出という壮絶な展開。とはいえ個人的にはいい経験になった。時間はかかったが安全にリカバリーできたんじゃないかと。久しぶりに作ったヌンチャクアブミも悪くなかった。いちばん成長を感じられたのはこの瞬間だったかもしれない。

だが、このトラブルも荷物の件同様に2P目をフォローした段階で予期できたはずだ。扇テラスでロープを整理すれば回避出来た可能性は高い。後続が来ていたこともあって先を急ごうとする心理が働いてしまった。

ちなみに後続は激強ソロクライマーだった。惚れる。

 

何を登るのか

色々と反省点やトラブルがあったが、残念極まりないのが3P目で直上してしまったことだ。

こういう岩場に来てボルトを追ってしまったのが実にショボイ。もっとよく観察すればクラックの存在に気づけたはずだ。できる限りトポや他者の情報に頼らず、自分の目と判断で登りたいと思っていた。しかし結局のところ、誰かが埋めたボルトを頼りに登ってしまった。これをダサいと言わずして何と言えよう。

ホールドが欠けたのは「もっと岩をよく見ろ」という黄道光からのメッセージだったかもしれない。

ぶつけた尻は当分癒えそうにないぜ。

十一面継続登攀

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調和の幻想とJoyful Momentを継続登攀してきた。天気予報がハッキリしないため不動沢のショートルートで溜飲を下げようとするも未練タラタラっぷりを見かねたSAT6師匠から「マルチ行った方がいいYO!」と言っていただき突撃。快く送り出してくれてた皆様にはこの場を借りて多謝であります。

 

8:00 調和の幻想

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前回は偶数ピッチだったので今回は奇数ピッチ。Mサカ氏とギアチェックして登攀開始。相変わらず1ピッチ目はキツイ。2ピッチ目は前回も湿ってたが今回も湿りがち。3ピッチ目は一瞬ルートファインディングに戸惑ったが無事解決。

 

IMG_8000

4ピッチ目の木登りと変化に富んだフレークスラブをMサカ氏が抜け、最終5ピッチ目のフレアワイド。前回フォローだったのでリードが楽しみで仕方ない。すると期待を裏切らない極上ピッチ。適度なランナウトと快適なムーブ、最後はピリッとOWで〆。改めて素晴らしいルートだと思う。

 

IMG_8015[適度なランナウト]

 

11:30から懸垂開始、12:00ごろ取り付き。大休止を入れて十一面奥壁へとハイクアップ。

 

IMG_7996[ガスに覆われる末端壁]

 

13:30 Joyful Moment

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アプローチで少々迷ったが大きなロスはなく登攀開始。1−2ピッチを繋げて抜ける。本チャンっぽいが岩は硬く快適。

 

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3ピッチ目はMサカ氏が軽快に高度を稼ぐ。時間的に敗退も覚悟していたが杞憂だった。4ピッチ目はリービテーションがバチ効き。なんだけど慣れてないので結局奮闘系となってしまった。5ピッチ目は歩きから少しだけ登攀。

 

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15:10に岩頭へ抜ける。下降路へのクライムダウンも侮れなかった。

 

装備

crackboulder

今回、装備に幾つかの工夫を凝らした。

まずハイドレーション。この時期は水不足になることが予想されたのでビレイ中の水分補給を確実にこなしたかった。結果、ビレイ中に荷物落下を気にせず適量づつ水分補給が可能になった。水分補給だけではなく心理的負担軽減にも効果的。

次にPASを省いてメインロープでのセルフビレイに切り替えた。以前からカムがPASに引っかかるのを煩わしいと思っていたので、今回思い切って取り除いた。結果、ビレイループ周りがスッキリし、登攀中にカムが引っかかることもなくなった。懸垂下降の時はスリングでカウテールを作って対応。PASは沢やアルパインでは有効だが、岩主体の場合は必要ない気がする。

 

所感

ルート選択が功を奏したようで無理なくマルチピッチ継続を楽しめた。数字的には「2ルート/9ピッチ/最大グレード5.10a」となるだろうか。もう少しアクセントになる要素が欲しい気もするが初回ということを考えれば十分なクライミングだったと思える。

ちなみにアクセントを入れるとなると、ピッチ数15以上とか、5.11aを含めるなど。或は情報の無いピッチを含めるとか、トラッドボルダーを交えるってのも楽しそう。更には沢遡行からの継続とかも良さそう。欲望は尽きない。

海金剛

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上部城塞基部で残りの2ピッチを見上げながらカサE氏が言った。

「まあ上まで抜けれないんならここで降りてもいいかな」
「あとちょっとなのに…”メルー”とおなじ展開や…」M坂氏が続ける。
「え…僕まだ観てないんですが…」まさかのネタバレに絶句する俺氏。

すこし強まった風の中、我々は撤退を決断した。

 

小春日和

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というわけで「海金剛 スーパーレイン 7ピッチ 5.10a」に行ってきました。メンバーは上記三名に加えてスズメちゃん。

とにかく風がハンパないとの噂だったがこの日はほぼ無風。青空もひろがりポカポカ陽気、駿河湾を挟んで富士山を望みつつ雲見キャンプ場入り。なんだよ春じゃねーか。

はやる気持ちを抑えつつアプローチを行くが早くもM坂氏がドーパミン全開。よくわかんないけど解放されちゃったようです。何からだよ。

海岸線へ懸垂で降り少し岩稜を登るとドカーンと大岩壁。周囲には巨大なボルダーがゴロゴロ。興奮を抑えきれずうっかりルートファインディングミス。ちょっとだけ彷徨った後、明瞭な踏み跡を発見。

 

First Pitch 5.7

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カサE氏 撮影

 
すでに10時を回ろうという時間帯、てっきり先行パーティは遥か上部と思いきや最後の一組がリード中。この時点で後の展開が予想されたが装備を整えてスズメ&僕ペアが先行。

久しぶりのカムセットを確かめながら凹角を抜ける。グラつくチョックストーンとか灌木へのランナーセットが懐かしい感じだ。先行パーティに追いついてしまったので一段下の灌木でピッチを切る。

 

2nd Pitch 5.8

緊張を強いられるトラバースをスズメちゃんが安定の突破。凹角にナッツとやらをセットしていたがナッツ童貞の俺氏、一瞬戸惑う。冷静を装いつつ回収するが今度はトラバースが怖い。スズメちゃんはダイレクトに突破していたが上部のガバから巻いて抜ける。

 

3rd Pitch 5.10a

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前座が終わっていよいよ本番。暑くなってきたので半袖で登攀開始。

左上気味に上がると露出感のあるアンダークラック。#0.3と#0.4を決めて足を上げていく。クラックが終わるとガバがお出迎え。ワンポイントかもしんないけど痺れた。だが楽しい。

先行パーティからビレイポイントを一本拝借して灌木と組み合わせて支点構築。間隔を空けるためフォローはしばし待ってもらう。半袖に風がちょっと寒い。先行パーティのお姉さんと雑談しながら待機。初めてのマルチだと仰ってたが中々チャレンジングである。(リスキーと言い換えるべきか迷う)

 

4th Pitch 5.10a

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続いて見た目最高のワイドクラック。スズメちゃんの目が完全にワイドに見入っている。ワイド直下のアンダーフレークがやや悪そうだがここでも安定したムーブ選択で突破。

カサE氏が上がってきたので一緒にワイドに突入するスズメちゃんを観察。ビレイポイントからだとプロテクション状況がよくわからずランナウトしてるようにも見えたがしっかりとカムは取られていた。

フォローでもアンダーフレークはちょっと悪い。またしてもナッツが出現したが経験者たる余裕をみせて(回収だけ)、慌てることなく回収。ワイドも簡単ではなく改めてスズメちゃんの実力を思い知った。

 

5th Pitch 5.10a

多段ハングとでも言うべきラインは3-5ピッチの中で最もフェイス的に感じた。乗っこす前にカムを多めに決め、乗っこした後にバッククリーンという戦術をとる。カムの節約になるしロープの流れも良くなる。もちろん乗っこし後に信頼出来るプロテクションを取れた場合に限る。

ついでにナッツでも決めてやるぜってことでいざパッシブプロテクション。バチ効きであります。もうナッツなんて怖くないぜ。

上部城塞基部に出ると下降パーティと先行パーティがいて大にぎわい。ビレイポイントは堆積している岩にメインロープで構築。風が強まる中フォローを迎える。

 

6th Pitch 5.7

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そして冒頭のやり取りに至る。トップアウトは諦めていたが、1ピッチだけロープを伸ばし最終ピッチを写真に納め下降開始。カサE&M坂ペアは城塞基部から先行して下降。

エーデルリッドのダブルロープはしなやかすぎるので何度も絡まったが、スズメちゃんおすすめの左右振り分けスリング固定方式にすると一気に解決。やっぱロープワークの基礎は面倒でも丁寧にやるのが肝要ですね。

キャンプ場への帰着時間が迫っていたのでカサE&M坂ペアに先に戻ってもらい後に続く。夕焼けで赤く染まる太平洋を背に海金剛を後にした。

 

所感

脆くて怖くて風が強い、とばかり思ってた海金剛ですが結果的には程よくスパイシーって印象でした。

天気に関しては非常に運が良かったし、年明けに行われた開拓者による整備の恩恵抜きには語れないが、しっかりと気持ちの準備が出来たことが充実の登攀を支えたと思っています。

登攀のイメージやアイデア、状況のシュミレーションや選択肢の整理など、「自分で判断して登るための準備」を実践できたと思ってます。(登山や沢では当たり前に意識していた筈なんだけど)

これからも自分の判断とかアイデアを大切にして登っていきたいな、と。つーわけで今回最大の判断ポイントとなった「敗退」に関しては「戦略的撤退」と呼ばせていただきます。んで、次こそはピークを踏んでやるぜ。

太刀岡山 右岩稜

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ほどよくワイルドなロッククライミングがしたいっつーことで「太刀岡山 右岩稜 6pith 5.10d/11a」に行った。

「ほどよく」ってところが微妙にヌルい感じだが、「基本NPで登りたいけど、ブランクセクションのボルトは許容しつつ(内心ウェルカム)、あまり踏まれてないのでルートファインディングがそれなりに必要」みたいなニュアンス。わかっていただけるだろうか?

 

First Pitch 5.10a

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というわけで季節外れの太刀岡山。メンバーはM坂、カサE、Y下(敬称略)である。駐車場に着いた時点でマイナス2−3度くらい。落葉樹の葉が落ちきっているので下部岩壁までのアプローチは明確。だが寒い。当然かもしれないが他にクライマーの姿は見えない。

岩壁下を右へと移動して取り付きを発見。しかしボルトが多く1ピッチ目の終了点が判然としない。装備を整えつつボルト位置とトポを見比べながら終了点を定める。

システムとコールの確認などをおさらいして、M坂氏からスタート。岩が冷たく足裏感覚も鈍いので2クリップ目からクライムダウン。何度か行きつ戻りつを繰り返しアップの替わりとする。凹角に入るまでが意外に悪そうだが無事に終了点に到達。フォローで続く。

 

img_7072[かっこいいシャーク岩]

 

2nd Pitch 5.9

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2ピッチ目からは少し日が差し込む。スタート直後から痺れるムーブをこなすと、ノープロテクションな浮石地帯が出現。クライミング難易度は低いが本ちゃん的な雰囲気。

落石に気をつけながら灌木にランナーを取ってほっと一息。樹林帯に入るがこれまた終了点の位置が判然としない。上部にハングと蜂の巣、右手にワイドハンドクラックという位置関係から大きなズレはないと判断してピッチを切る。

グレードはスタート後のワンポイントについてるんだろうが、体感は5.9Rって印象。さすがワイルド系だけあって「Rなんて飾りです」という意志を感じる(個人の感想です)。

 

3rd Pitch 5.10a

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そして苦戦必至と噂のNP&ボルトのミックスピッチをM坂氏がトライ。屈曲を避けるためスリングを大きく伸ばす。ハング下でカムセットを行い、カンテへとトラバースに入る。カンテの乗っ越しが悪いようで凹角を探ったりじっくりとラインを探るがテンション。初見では抜け口へのラインが見出すのが難しそう。ちなみにカサE氏はバッチリ突破。さすがである。

終了点はカム構築を想定していたので固め取りが命取りになるかとヒヤヒヤしたが、アンカーが設置されていた。ロープの流れがやや重くなったが概ね想定内。さらにスムースにするには最左側の#2を回収すれば良さそう。

ちなみにカンテ手前のボルトを目視した瞬間、我々は歓声をあげていた。ワイルドとはなんぞや。

 

img_7088[3ピッチ目終了点]

 

4th Pitch

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4ピッチ目は以前登っているので快適に抜ける。とはいえ5.7にしては少々ホールドが悪いんじゃないかと。1クリップ目から左にトラバースして直上するがラインが違うかもしれない。しかし高度感のあるクライミングは楽しい。体感は5.8。

 

5th Pitch

ここは懸垂だけ。枯葉のクッションに降り立つ。

 

6th Pitch

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そして最終ピッチへ。グレードではこのピッチが最難だが、ボルトもあるしフツーに考えて登りやすい5.10d/11aだろうと予想。オブザベーションでも予想を覆すものはなかった。だがここで再び、ワイルドはなんたるかを突きつけられる。

不要な装備を預け、軽くレストを入れたあと身心共に軽やかなクライムオン。すると、1クリップ目から2クリップ目へのトラバースでオブザベーションの甘さが露呈。ホールドは極端に悪いものではないが進行方向に対して向きが悪く、加えて足もタルい。取り付きに置いてきたソリューションがあればその名の通り一発解決なのだが後の祭り。

フォールすればグラウンドの可能性が高いが、ある程度はテンションで落下速度が抑えられるだろう。ランディングも斜面に枯葉マットなので衝撃はバックサイド吸収が期待出来る。普段のノーマットボルダーと大差はない。何よりも登山道が目前なのでエスケープも容易。

つーことで肚をくくって乗り込みトラバース。無事にホールドを捉える。ひょっとするとトラバースではなくダイレクトに上がれたのかもしれないが、充実感のあるムーブだった。あとはリップを乗っ越してビクトリーロードを行くだけ。そう思って勝利のマントルを返した。

だがそこは枯葉の堆積したワイルドスラブだった。埋もれたガバポッケを掘り起こし、枯葉を払いのけ足場を確保して前進する。既にRの範疇を超えてXに手が届きそうな雰囲気。だが「森の生活」にRやXがつくだろうか。いや、つかない。いわんや「先住者」「生命力」においておや。後者2課題は触ってもいないがそういうことにして灌木帯まで一気に抜ける。探せばプロテクションを取れたかもしれないが、体感は5.10d R。

鋏岩の終了点は強い風が吹き付けていたが日当たり最高。これでもかってくらい写真撮影会をしてラッペル。無事に登攀を終了した。

 

img_7103[おれの胸に飛び込んでこいよ(とは言ってない)]

 

ワークアウト

当初の予定では左岩稜に継続する予定だったが、時間の都合上ショートピッチとボルダーに切り替え。小山ロックの「義理チョコ」「チェリーブロッサム」を登り、小山ロック下のボルダーで適当に設定して登る。最後に左岩稜の取り付きを確認して1ピッチ目だけ登って終わった。次は左岩稜かな。

 

秋のマルチピッチ

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瑞牆の名作マルチピッチ「ベルジュエール 5.11b 10p」に行ってきた。

「行ってきた」という言葉から察せられる通り、オンサイトやレッドポイントではなくあくまでもトップアウトである。瑞牆の厳しさを全身で味わってきたんだぜ。

 

最低気温零度

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当初は10月頭を予定していたがずれ込んで10月も3週目。すると天気予報では最低気温0度、午前8時でも4度とかいきなりの冬模様。厳しい登攀になることを予想しながら備えた。

蓋を開けてみるとさすがに0度ってことはなく、5-6度だったが依然として寒いことに変わりはない。アプローチで暖まった体も登攀準備を整えているとすぐに冷えてくる。1ピッチ目の出だしを往復してとりあえずのアップとする。

そして1ピッチ目5.11bに取りつく。果敢にもオンサイト狙いである。気合い十分だったが中間部でしょうもないスリップをやらかしてフォール。寒さでフットホールドを捉えきれなかった。そのままフリーで抜けるが核心部と思われる部分でさらにフォール。結局2テンションでトップアウト。

 

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トラッドスタート

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2ピッチ目5.10aからトラッドが始まる。とはいえショボくれたピトンを頼りにスラブを進む痺れるピッチ。気温はまだ低く肝を冷やしながらS兄貴が抜ける。続いて3ピッチ目は潅木の生えた歩き混じりの5.7。

 

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そして4ピッチ目5.9は最後にスッパリと綺麗なクラック。一見簡単そうに見えるが若干斜めに進むクラックと最後のシンハンドに苦戦。落ちるかと思ったがなんとかオンサイトに成功。

 

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白クマのコルを挟んで5ピッチ目5.10a、大フレークをS兄貴が大胆なランナウトで抜けていく。フォローは回収が厄介。

そして悪名高い5.8チムニー。この数ヶ月、このピッチが放つ圧迫感を常に感じながら過ごした。「やばいと思ったら早めに諦めます」と告げ#6を持ってチムニーへ向かう。下から見上げるがチョックストーンでよく分からず、中間部にあるというリングボルトも見えない。

意を決してチョックストーンへ上がると意外にも快適、リングボルトも見つけることができた。だがもちろん錆びている。黒ずんだリングボルトにクリップしずり上がる。

チムニーは少しづつ狭くなり身動きが取れなくなっていく。ロープの流れが悪くなるがチムニー奥に#6を決めてT字スタックやらチキンウィングやら、本で読んだだけのジャミングを試す。もちろん全く効いてこない。

すでに疲労困憊、荒い呼吸をなんとか整え分速数センチで這いずりあがる。メットが引っかかって首を回すのも一苦労。脱水で足が攣りそうになるのを必死で誤魔化す。もっとチムニーの練習をしておくんだったと心の底から反省した頃にようやく上部チョックストーンに到達。ガバだが激しい疲労感から必死でマントル。いやー奮闘した。

 

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完全に出し切ったがまだ終わらない。ブッシュ帯を経て8ピッチ目5.10bは先行きが見えない左上クラック。脱水気味の体にザックが重くのしかかるが見上げると青空がどこまでも高い。最後は岩稜歩きを経て5.8をバテバテで超える。

 

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終了点から眺める大ヤスリ岩がなんつーかH.R.ギーガーのクリーチャーみたいだった。

 

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簡単には登らせてくれないとわかってはいたが予想を上回るハードワークで、植樹祭を6時に出発して帰着は17時。クライミングで11時間行動なんて記憶にない。

さて、次はもちろんレッドポイントを狙いに行くのだが色々と改善点も見えた。装備に関してはもう少しギアを減らそう。クイックドローとマイクロカムは減らせるはず。反対に水は一人750mあったほうがいい。終了点は把握できたので以外と時間のかかったピッチ間の連携は短縮出来るだろう。今回は花崗岩からやや離れていた(最後に瑞牆に来たのが一ヶ月以上前)ので、次回はもう少しこまめに花崗岩を登ってから挑みたい。とはいえその辺は冷え込み同様、お天気次第なんだよな。

いつかサラリとレッドポイントできるように励みたいと思います。

獅子岩マルチピッチ

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グンマには獅子岩というイカした名前の岩場があるー。

ということを知ったのはいつのことだったか。たぶん子持山のバリエーションルートを調べていた時だろう。スポートマルチの存在を知ったのは更に後になってから。完全にクライミングに傾倒してからだった。

いつか登りたい。けど技術も装備もない。ま、そのうち機会がやってくるだろう。そう思っていた。たぶん2,3年くらい。

するとフトした拍子でその時はやってきた。よりにもよって真夏に。

 

アプローチ

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前夜発で現地入り。落石による通行止めのため3号橋付近に車を留める。当日は薄曇り。真夏にしては条件は良さそう。林道を歩いて屏風岩まで30分前後、獅子岩までは更に50分前後。

登山道を詰めていくと道標にたどり着く。「この先危険」の方向に進むと岩壁基部が少しずつ姿を現す。

 

IMG_5920[左に進む]

 

1,2,3pitch

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出だしのピッチは繋げて登るのが一般的だが敢えてピッチを切ってワイフにリードをまかす。ちなみにトップは空身なのでフォローはダブルザックという苦行。なかなかハードなアップである。

3p目は巨大なフレーク。#6があれば決めてみたい。特に意味は無いが。

 

4,5,6pitch

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核心(5.8)となる4p目はグレードの割に難しいという話だったが、体が暖まったか荷物に慣れてきたのか、ここまでで最も快適にロープを延ばす。とは言え日が照ってきて暑い。

IMG_5936[核心ピッチ終了点から]

そこから頂上直下のテラスへはピッチを繋げて抜ける。スラブなのでロープが重いことこの上なし。

テラスでしっかり休んで最後の”おまけ”ピッチを登り岩頭へ。景観はいいんだけどとにかく暑い。

 

IMG_5949[獅子岩ピーク]

 

下山

下山路は屏風岩へ続く痩せ尾根ルート。妙義山と何となく似ている。道中でタマゴ茸やらスズメバチの巣など変化に富んだ下山だった。

長い間登りたいと思っていたルートが登れたのは嬉しいことだが、充実したかと問われると首をかしげる。瑞牆山のトラッドマルチを登る前に来ればもっと緊張感や充実感、感動を味わえたかも知れない。課題とは常に一期一会なのかもしんない。

 

IMG_5959[たまご茸]