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全天球アルパイン

中山尾根終了点から #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA

 
全天球カメラ「RICOH THETA S」を携えて八ヶ岳へ。
城山以来の世紀末トリオ(タロー/S兄貴/ワタシ)でアルパイン&アイスクライミング。
機材協力はもちろんヤマーン!であります。

 

大同心大滝

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初日は赤岳鉱泉でベースを設営したのち、昼過ぎに大同心大滝へアイスクライミング。他のパーティはなく、完全な貸し切りである。

タロー君にリードしてもらった後、カメラをセッティングしてトップロープで登攀開始。

ちなみに気温が低いためバッテリーは長くは持たない。悠長に登っていてはトップアウトする前に撮影が終わると予想された。とはいえ、トップロープである。一気に高度を稼いでハイクオリティな動画をゲットしてやるぜ、と意気込む。

だが、早々に超絶パンプ。乱れまくった呼吸を必死で整え、短いシェイクを繰り返し、可能な限りペースを落とさず登攀を続ける。撮影のことなどどうでも良くなってきたころ、なんとかトップアウト。幸運にもバッテリーは持ち堪えてくれた。

 

[youtubeアプリで見るとVR再生が楽しめるよ!]

 
その後、空身で一巡して回収。夕日に向かって下山。ベースに戻ってS兄貴の絶品ツマミにビールで乾杯するのであった。

 
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中山尾根

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迎えた二日目、中山尾根。八ヶ岳では中級の部類に入る岩稜系アルパインとのこと。

下部岩壁はタローリード。右凹角が一般的らしいが正面から取りつく。案の定、悪い。1ピン目のボルトから右凹角へトラバースし、左上気味に岩場をこなす。テラスを抜け、草付きを左から巻いてピッチを切る。

雪稜をコンテで辿り、上部岩壁基部へ到達。

先行パーティの待ちながら、リードで行くべきか逡巡する。下部岩壁スタート部分は予想外に悪かった。やや及び腰になっていることを受け止め、気持ちを落ち着ける。A0も視野に入れ右凹角から取りつく。冷静にガバを探りながら、ほどよい緊張感の中で高度稼ぐ。ほどなくして抜け口直下のテラスに。ピッチを切りタロー君と交代。

 
[上部岩壁]

 
IMG_4292[上部岩壁抜け口]

 

[高度感がイイ]

 

ピナクルまで上がってくると風が強まる。予報では昼過ぎまで晴れとなっていたが蓋を開けてみると晴れたのは取りつきまで。寒風に煽られながら全天球撮影をこなして一般登山道へ。

 
OLYMPUS DIGITAL CAMERA[最後のトラバース]

 
行者小屋への下降路は華麗なシュプールを描きながらシリセード大会。ベースを撤収し、なぜか行きよりも肥大化したバックパックを担ぎ美濃戸へと下山するのであった。

 
 [久々の90Lは重かった]

 

シーズン総括

というわけで今シーズンはたぶんこれでお終い。

山行回数3回、エリアは八ヶ岳と群馬。そこだけを見ると地味な印象ですが、アルパインアイス、スポートアイス、マルチピッチアイス、岩稜系アルパイン、およびそれぞれでリードデビューとそれなりに経験値を積ませていただきました。

これもひとえにご同行いただきました皆様のお力添えによるものでございます。つーわけで来シーズンもよろしくね!

裏同心ルンゼ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[photo by Taro Inomata]

 

超絶快晴の八ヶ岳で、裏同心ルンゼ〜硫黄岳周回ルートを登ってきたよ!

パートナーはクライミングギアの新たな地平を“ブッチギリ”で切り拓く、マイスター・タロー。クラック登攀はないので名器タローカムの出番がないのが残念。

足慣らしには最適の定番ルートで快適なアルパインアイスを堪能しました。

 

シーズンイン

img[冬支度]

 
秋のリード・ボルダーシーズンでは「アイス?そういやそんなアクティビティもあったね」的な態度を示しておりましたが、岩が冷たくなってくるとアイゼンを履きたくなるのが人情というもの。

早速タローくんに連絡して予定を詰める。登攀要素のない雪陵ハイクあたりでお茶を濁すつもりだったが、アルパインアイスを提案されるや秒速で鞍替え。

ちなみに某氏から「今シーズンはアイス消極的とか言ってなかったっけ」と突っ込まれたが、もちろん「そんな昔のことは忘れたよ」と即答しておきました。

 

積雪は少なめ

IMG_3796[大同心が奥にそびえる]

当日朝はこの冬一番の冷え込み。とはいえ雪は少ない。美濃戸ー赤岳山荘までのダートも凍結箇所なし。

赤岳鉱泉までは凍結箇所多数だが夏時間と同程度で鉱泉に到着。荷物をデポして裏同心へ向かう。

 

裏同心ルンゼ

IMG_3804[F1 しっかり氷結している]

F1に着くと既に2-3パーティ。大混雑を予想していたが、それほどではなかった。順番を待って登攀開始、タローくんのリードでスタートする。氷柱はしっかりしているが硬すぎず、アックスは打ち込みやすい。

 

IMG_3805[F2 並んでます]

F2はやや渋滞気味。気長に待ってリード交代。1段目は低いのでノープロテクション。2段目のナメ滝に今季初のスクリューを打ち込む。

3段目も一気に抜けたかったが渋滞。ビレイポイント作ってピッチを切る。

流水のしたたるラインは「濡れてるの、大好きなんで(キリッ」と前置きしてタローくんが水線突破。そういえば「アイスクライミングは沢登りの延長線にある」と誰かが言ってたのを思い出す。

 

IMG_3812[F5直下 視界が開けてくる]

F3−F4は同時登攀でF5直下まで一気に抜ける。F3−F4は小振りだったりナメだったりでよくわからんうちに通過。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[F5 photo by Taro Inomata]

F5でリード交代。スクリュー二本で抜ける。BDとグリベルのスクリューを交互に打ったが、個人的にはBDが刺さりやすくて好きかな。

 

IMG_3816[大同心直下]

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[草付きを直登 photo by Taro Inomata]

F5上部から左岸草付きをダイレクトに大同心基部まで詰める。ここでロープを収納。

 

IMG_3828[雪が少ないので浮き石が厄介]

大同心稜へのトレースは積雪量が少なく浮き石が厄介。アイゼンの摩耗が気になる…

 

大同心ルンゼ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[高度感がいい photo by Taro Inomata]

当初の予定では大同心稜から下降だったが、僕の無言の圧力を感じたか「想定より早いんで、稜線まで抜けましょうか」とタローくん。待ってましたとばかりに大同心ルンゼへ突入。

 

IMG_3842[左手に大同心]

OLYMPUS DIGITAL CAMERA[FIXロープもある photo by Taro Inomata]

岩場主体のルンゼ内はFIXロープもあり快適に高度を稼ぐ。徐々に風が強まるが日差しが強くて熱い。

 

IMG_3853[大同心のピーク]

IMG_3855[上部を詰める]

大きく視界が開けてくるが、もうひと踏ん張りで稜線へ抜ける。風がますます強まる。

 
IMG_3864[遠くに北アルプス]

IMG_3861[富士山タロー]

稜線上は最高の展望、北アルプスがきれいに見渡せる。富士山も安定のクオリティ。ところでサムズアップをバッチリ決めているタローくんだが、彼の親指がガムテープで補修されているのは内緒だ。

 

硫黄岳

IMG_3868[無心で登る]

IMG_3869[横岳-赤岳-阿弥陀岳]

黙々と登り返して硫黄岳へ上がり振り向くと、横岳-赤岳-阿弥陀岳。爆風吹き荒れるイメージの硫黄岳頂上だがこの日は比較的穏やかだった。小休止を入れて長〜い赤岳山荘までの下山へ備えるのであった。

 

Stats

IMG_3875[火口タロー]

というわけでシーズン一発目から会心の山行となりました。久しぶりにアックスを振ったせいか右手が腱鞘炎になってしまったけどすぐに治るでしょう!タローくん、本当にありがとう。

今年はフリーも沢もアルパインも、やりたいクライミングはほぼやり切れた感があります。お世話になった皆様、心からお礼申し上げます。

 
コースタイム

  • 赤岳山荘 06:30
  • 赤岳鉱泉 08:00
  • – 大休止(30分)
  • 裏同心ルンゼF1 08:50
  • 大同心稜合流 11:55
  • – 中休止(20分)
  • 横岳稜線 12:40
  • – 小休止(5分)
  • 硫黄岳 13:30
  • – 小休止(5分)
  • 赤岩の頭 13:50
  • 赤岳山荘 15:50

 

 

阿弥陀岳 北稜

今シーズンの締めくくりは「阿弥陀岳 北稜」
ようやく雪と岩がフツーに出てくる、所謂「アルパインルート」を登った事になります。

 

南沢大滝

 

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今回の行程は一泊二日。初日は南沢大滝でアイスクライミングを行う。メンバーは「剣岳源次郎」と同じZK夫妻。源次郎の時から「冬は北稜ですな」って話をしていたので割と構想は長い。ちなみに今回の山行終了時で「来シーズンは北西稜ですな」ってことになっている。

さて、大滝は既に10名ほどのクライマーが取り付いており、空いてるラインは右端のみ。おそらく最も難しいラインだ。しかしZK氏はアップもなしであっさりリード。抜群に安定したクライミングを魅せる。その後、奥様と続き私。もちろんTRである。ちなみに1try目でアックスがすっぽ抜けてフォールしたのは秘密だ。

 

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三人で5本ほど登って撤収。行者小屋へ向かう。

 

阿弥陀岳 北稜

 
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翌日、6時に起床して外を見るとなんと雪。そして阿弥陀も赤岳もガスの彼方。某天気予報によればA判定の登山日和だったはずだが、やはり山の天気。転戦すべきか検討しつつ出発を一時間延ばす。

一時間後、若干回復の兆しが見えてきた事もあり突っ込まない前提で出発。既に10組近いパーティーが先行しているため、トレースは明瞭かつラッセルいらず。1時間程でサクっとジャンクションピークに到達。岩稜取り付きに到着すると順番待ち10人強。幸いにも無風なので気長に順番を待つ。

 

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そしてようやく登攀開始。出だしのチムニーにアックスを掛けてみるが、ドライツーリングのセンスの無さを痛感して早々に手で登る。その後、2ピン目を経て短いトラバースをやや緊張しながら通過、草付きと雪面にダガーポジションを効かせてテラスへ抜ける。

2ピッチ目は初めからアックスをクリッパーに掛けたまま登攀。ピナクルにランナーを取ることも考えたが、特に問題なさそうなのでフリーソロのまま抜ける。乗っこすと小さな痩せ尾根。もしやこれがナイフリッジなのか?いや、岩稜短すぎない?と思いながらZK氏の元へ。

 

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「ひょっとしてこれで終わり?」「いや、いくらなんでも…」とか話していると先行パーティの方から「ここで第二岩稜は終わりですよ」と教えていただく。ZK奥様も上がってきて三人であっけにとられたまま阿弥陀頂上までハイクアップ。

頂上から中岳のコルを経由して中岳沢から行者へ約1時間。無事、行程を終える。
早朝の降雪時は敗退・転戦も考えたが、終わってみると快適かつ余裕のある山行だった。技術的にも体力的にも十分なマージンを取って行動する事ができたのでアルパイン初級としては理想的な展開だったかと。

 

 

阿弥陀岳 中央稜

日曜は積雪シーズンの締めに阿弥陀岳中央稜。詳しいレポートは「お気楽山岳ポータル YAMAAN!(ヤマーン)」に寄稿したので是非一読くださいな。

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一応バリエーションルートの範疇に入る「阿弥陀岳中央稜」なんだけど、非常に登りやすいルートでした。登攀要素がないのは承知の上での山行だったが、下山後の一言は「うーん、やっぱ登攀したかったなあ」である。今更だけど第一岩峰の左上ダイレクトが心残り。雪が残っているうちに北稜でも行こうかと真剣に悩んでいる。タイミング的に北稜が間に合わなかった場合、GWに谷川岳というのも良さそう。

 

滑落停止

阿弥陀下山時にグリセードから転倒、滑落に陥り、人生初となる渾身のピッケル制動を炸裂。森林限界でのアクシデントではなく、樹林帯だったので難を逃れたが色々と学ぶ事が出来た。以下備忘録。

      • グリセードからのアクシデントだが、斜面と雪質の評価が甘かった。加えてヨレた膝が対応できなかった。慎重な行動が大切。
  • サミテック52cmだとグリセードにはちょっと短い。分かってた事だけどトレッキングポールの方がコントロールしやすい。しかしポールでは滑落停止できない。
  • 滑落開始直後に頭上でピックを雪面に刺したが止まらず、滑落停止姿勢で漸くストップ。本に書いてある通りで止まった。
  • 雪訓のおかで体勢を作れたが、練習無しでは止まらなかっただろう。何事も練習ですね。

と言う訳で安全に楽しんで行きます。

赤岳鉱泉アイスキャンデー

やってきたぜ、アイスクライミング。ブルーアイスにアックスを打ち込み、アイゼンを蹴り込む、嗚呼、氷瀑の季節。

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というわけで世間では既に2,3回、訓練されたアイスクライマーなら5,6回は登りに行ってるであろう一月中旬、周回遅れでアイスに行ってきました。

今回はYAMAAN!チームの歩荷にジョイントして赤岳鉱泉アイスキャンディー。チームカーとして就任したJeepでイザ出陣。美濃戸口からのダートに於ける四駆のパワーと安心感がハンパない。かつてこれほどにリラックスした美濃戸越えがあっただろうか。四駆ってマジですごいですね。

鉱泉に到着すると、予想通りデジカメのバッテリー切れ。特にこの日は気温が低かったのでどうしようもない。幸い風は穏やかで時折太陽も姿を見せるので、なんとか登れた。もちろん寒かったけど。

とりあえず一本目を登る。一年ぶりなのでムーブが全く出ない。その上氷が固いのでアクスもはじかれる。二、三本登った所でランチ。小屋の中はスーパー快適。

ice_akadake

その後第二部を開始。腰を入れて立ちこむ感覚が戻ってきたので漸くアイスクライミングっぽくなってきた。残念ながら時間に余裕が無かったので、ラスト一本登って下山。

今シーズンはバリエーション行きたい。

*写真は全てYAMAAN!撮影。多謝!

敗退のバラッド

午前9時、我々は稜線に達した。そこは予想通り暴風が吹き荒れる過酷な環境であった。隊員達の表情はゴーグルに隠され読み取れないが、頂上へのアタックに燃えていただろう。だが私は決断せねばならなかった。そう、敗退を。
涸沢カールはカレー味』より抜粋

つーわけで命からがら赤岳文三郎尾根から敗退してきた次第であります。

当初のプランは地蔵尾根-横岳-硫黄岳-赤岳鉱泉だったが、強風が予想されるので前日に行者-赤岳のピストンに変更。しかしテントを叩く風の音を聞くほどにそれすらも無理っぽい気配に。当日の行動開始時には「稜線までが限界だろう」という諦めにも似た確信を得る。

とりあえず行者までアプローチするが眠い。前日3時間睡眠だもんね、至極当然だ。睡眠スキルが足りないのだ。のび太に見習わねば。

S0011129南沢をすぎたあたりの小沢が完全にFreeze。アイゼン装着してプチアイスクライミングしようかと考えるが眠いのでパス。

行者に到着すると阿弥陀、赤岳は当然ガスの彼方。とりあえず写真でもとカメラを取り出すが、「カードがエラーです」と理解に苦しむ返答。結局カメラは美濃戸に戻るまで復活しなかった。何しに来たんだコイツは。

文三郎尾根を進み森林限界を超える前にアイゼン装着。森林限界を出ると風が強まる。こんな天気でも他にも登山者はいてちょっと安心。高度を上げて行くほど風が強まり、視界も100m弱と行ったところ。


本日は愛機「sum’tec」のシェイクダウン。登攀要素は無いが、石突きブッ刺しまくりで快調。

そして遂に稜線に。尋常ではない爆風が吹き付ける。厳冬期の赤城湖以来の風速。MJの『スムースクリミナル」が再現可能なレベルである。地図上では後40分で赤岳山頂だが、多分行けば片道切符間違い無し。とりあえず耐風姿勢の真似などをしてみてそそくさと下山を開始。こうして我々の敗退劇は幕を閉じた。

登頂できなかった事は残念なんだけど、的確な判断を下せたと思う(過酷過ぎて迷う要素皆無)。プランの変更、敗退地点の予測なども妥当だったんじゃないかな。敗退という結果ではあるが、経験値の上げることが出来たのでそれなりに充実。次は何処行くかなー。