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チャートの傾向と対策。

noryjoy

 

Chert

 
チャート、いわゆる堆積岩の一種に分類され、二酸化ケイ素を主成分とする。海の底深く、悠久の時を経て造られた後、地表に隆起したものを我々は目にし、そして登る。そのエッジは鋭く、硬い。岩肌にざらつきは認められず、凹凸が少ない面は艶やかに光る。

チャートの岩場は、もやは説明不要である御岳をはじめとし、多数のエリアが東京近郊に存在する。東京在住であれば非常に身近な存在なのだが、実はあまり良い印象を持っていない。より正確にはフリークライミングの対象として魅力を感じないのだ。その理由は、先に述べた刃物の様なエッジと、貧弱なフリクションしか生まない岩肌だが、御岳の過密具合も多分に加味されている。一方で沢の対象としては魅力的だが、それについては別の機会に譲ろう。

前置きが長くなったが、久しぶりにチャートの岩場へ赴いた。週末の時間的都合が故だが、このところ花崗岩での成果に伸び悩み、プラトーに陥りつつあるのを感じていたからだ。好みではないとはいえ、花崗岩以外の岩に触れることに何かしら意味を期待していた。と同時にチャートへの印象を少しでもポジティブにするためでもあった。

ま、結論から述べるとどちらもビミョーな結果になったんだけどね。

 

天王岩

というわけで、自宅からドアtoドアで2.5時間な天王岩へ初上陸。電車、バスの乗り継ぎもスムーズかつ停留所から岩場までは3分。かつてこれほどアプローチに恵まれた岩場があっただろうか。これで花崗岩だったら、いや言うまい。

まずは「下の岩場」でアップ。

フタリシズカ 5.8 MOS
スタートのホールドを握ると痛い。件のエッジが手のひらに食い込む。チャートの洗礼を受け、強烈なアウェイムードに(勝手に)晒される。すると、川からの湿気で滑ったホールドが沢っぽく見えてきて、「そうか沢だと思えばいいんだ」と謎の開き直り。エッジで刺激されるのが原因なのか手の平が異常にあったまる。ワイフにトップロープをセットして交代。

つゆしらず 5.9 MOS
百岩では星二つとなっているが、それほど面白いとは感じなかった。

サンコウチョウ 5.10a MOS
隣のラインが近くてどこまでがokなのかわかりにくい。こういうところがっ…いや何でもない。

 

ノーリージョイ 5.11b RP

 
天王岩の中では比較的長いライン。部分的に被っているがほぼ垂壁のフェイスをガバとカチでグイグイ登り、核心部はトラバース。ホールドが尖っていなければジムにありそうな課題である。マスターオンサイトで決めてやるぜと息巻いていたところ、トラバースでフォール。いや、痛かったんですよ、指が。とりあえずそのまま上まで抜ける。ムーブも面白い。ホールドがわかっていればアップでも使えそうな印象。

そしてトラバースのムーブを再確認。トポによると「クラックを使うと5.10d」とのことなので可能な限り離れようと苦心する。ついでに正体クライマー卒業に向けて、ここぞとばかりにドロップニーを採用。後は繋げるだけとなった。

そして2トライ目。順調に核心へ至る。もちろんドロップニーもばっちり決まった。しかし、ここでお約束の手順ミス。左手を飛ばす予定が先に足を上げてしまったため飛ばせない。窮地に立たされるが、クラックから左へ30cm、いや20cm、、ひょっとすると15cmほどずれたカチを使って抜ける。その後は慎重に上まで抜けて完登。ヒジョーにもやっとするクライミングだったが、「そもそも限定とかナンセンスですよ」と居合わせた強々クライマーの兄貴が仰っていたので、ヨシとしておく。
 

 
エスパー 5.12a/b
どっかぶりのラインにドローがかかっていたので、遊ばせていただく。ばらせなかったが、割とあり得る感じ。背後の木に衝突しそうで、怖い。

鬼太郎音頭 5.10b/c MOS
締めに天王岩最長ライン。核心部の強度がよれた体には丁度良かった。内容、長さ共にクオリティの高い名課題だった。

コーナークラック 5.7 MOS
本当は「冥土の土産 5.10d」を登ろうとしたんだけど、時間がないのとチャートのスラブが怖すぎたのでシレっと転戦。

 

傾向と対策

著名なクライマーが言っていた「岩と仲良くなることが大切なのだ」と。
もちろんそうだとも。朝、家を出るとき「今回の逢瀬でチャートとのすれ違いはきれいさっぱり解消してるはずさ」と淡い期待を抱いていた。「家路に着く頃には、次回のチャートトライを計画してるに違いない」と。しかし、その結果は…いや、まだ結論を急ぐ必要はない。少し時間を置けばいいのだ、えーと、来年の夏くらいまで。